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フェニックス始めました。  作者: シオアジ
〜第1章〜 出会いからの保食神 編
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第4話(旧2話) 語り始めました。

 


 彼女にとっては珍しくないんだろうけど、実は空を移動するのはオレにとってこれが初めて。空の旅初体験のオレとしては、実はちと興奮気味だ。何分か前には空の移動なんてちっとも考えてなかったし。

 アヤメの微妙な苛立ち顔を尻目に窓から地上がどんどん小さくなっていく駅前の様子を珍し顔で眺めていたオレ。揺れる度に「おおう!」と言ってしまったりしていた。

 そんな感じでおそらくアホ顔で窓の外ばかり眺めている彦一にアヤメが無愛想な声で話しかけてきた。


「あんまりあなたが待たせるから、私はご機嫌ナナメよ」


 自分で言っちゃった!


 ご機嫌ナナメなのは、顔を見ればすぐ解るがそれをわざわざ言葉にして、しかも自分から堂々と宣言するかね?

 つか、そんなに待ってないだろ実際?どういう教育受けてんだ。オレが一から調教……いや、教育してやりたいぜ。何様なんだ全く。

 ここはガッツリ、キッパリ言っておかないといくらオレでもここはオレのプライドが許せないぜ!


「はっ。申し訳ございませんアヤメ様!なんでもします!させて下さい!それでアヤメ様のご機嫌が良くなるのであれば!」


 ――アヤメ『様』に従順なオレだった。下僕以外何者でもない。


「そうね。じゃ、とりあえずドラゴンボールでも全て集めてきなさい」


神龍シェンロン呼び出す気か!叶えたい願い事でもあるのか?」


「世界征服」


「悪が言いそうなセリフキター!確かにドラゴンボール初期の悪役であるところのピラフもそう言ってたけども!そりゃ誰もが一度は軽く思ったことあるけど、現実的に有り得ねぇとすぐその考えが馬鹿だった事だと悟り、諦めるようなことをこのお方はこんな歳にもなって平然と人の目の前で言い放ったよ!」


「私のモットーは、天上天下唯我独尊よ」


「そんなこと言うの生まれたての釈尊かヤンキーマンガの中だけだよ!」


 しかしこの女なら、世界征服できそうな気がしないでもない。よくわからんが変な自信に満ち溢れているオーラが輝き放っている。生まれながらにしてエリートというか、唯一絶対のなにかを持っていそうというか。こうやって面と向かうと屈せずにはいられない。屈服してさっさと足先にキスをしなければならない威圧感がある。


 あー、足の指舐めまわしてー……

 って、あれ?これオレの願望?


 いやいや、違う違うぞ。こんな変態じみた願望はオレの願望じゃない!絶対違うぞ!

 断固として認めないぞ。きっと彼女のこのオーラにあてられてオレの中の屈折した思考が働いただけだ。そうだ、そうに違いない!

 オレはオレ自身に必死に言い訳をした。


「世界を我が手中に納められるなら、私は仏でも神でも悪魔でも構わないわ。できれば神で。そういうことでドラゴンボール集めてきて。よろしく頼んだわよ」


「その前にそんなどんな願い事でも一つだけ叶えてくれる七つの球体達は存在しないわっ!」


「私、四星球スーシンチュウしかまだ持ってないの」


「存在するの!?」


「ま、そんな世界征服の話は後でもいいわ。そろそろ本題に入りたいんだけどいいかしら?」


「でた!なにその自分からふっといてからの投げっぱなし。オレはそのどんな願い事でも一つだけ叶えてくれる七つの球体達が存在するのか知りたいぞ!オレの中の常識が今書き換えられてしまうかどうかの瀬戸際なんだぞ!オレは真実が知りたいぞー!」


「じゃあ、教えてあげるわ。あなたの真実」


 彼女はまじめ顔でそう言った。


  オレはてっきり願いごとが叶う球体のことをアヤメ『様』は語り始めるのかと思ったけど、全然違った。この後の彼女の教えてくれた真実とやらでオレの中の常識は書き換えられた。別な意味で。



 アヤメは相変わらずちょっとどうでもよさそうな顔で淡々と話し始めた。


「やきとりくんは、知らないようだからこれから言うことは心して聞きなさい」


 その割には、真剣さがないというか、無表情で話を続ける。


「実は、あなたのお父さんから貰ったあの紙ペラ一枚の取説には、microSDが付いてたの。それに気づいた私はすかさずスマートフォンに取り込んでみたの。中に入ってたファイルには、結構な量のあなたの説明が入ってあったわ。読むの面倒で途中で止めちゃったけど」


「止めたんかい!」


 オレの取説もっとちゃんと良く読んで!読みすぎてスマートフォンに穴が開くぐらい読んで!そしてオレに誠意を示して大事に扱って!

 つか、どんなことがそのmicroSD綴ってあったんだろ。


 まさか!オレのあんなことやこんなことなど恥ずかしい部分まで詳細に書かれたらどうしよう!


「そんなこと書かれてたら、読み飛ばすわ」


「心読まれた!」


「そのデータの説明は、大概どーでもいい事だったけど、中には興味深いことが綴ってあったわ」


 大概はどーでも良かったんだ…。


「ま、溜めてからもったいぶって言っても時間の無駄だから、サラッと言うけど、あなたフェニックスだったの。私はそこに興味を持ったから、お荷物ではあるけどあなたを今回の仕事に連れてくのを仕方なく承諾したのよ。いい研究材料にはなりそうだし」


 研究材料って!どんな人体実験されるんだよ!こえー!マジこえー!

 最初はせめて優しくして。だって初めてだから。


 ……って、ツッコむとこそこじゃないような?


「えーーっ!つか、ええーーっ!」


 二度ビックリだ。意味わかんねーし。


 そんな急に「あなたはフェニックスです」と言われて「あ、そうなんだオレ、フェニックスだったんだ。了解、了解。実は、薄々オレも自分フェニックスなんじゃないかと思ってたんだよねー」って素直に理解できるかっ!

 それで理解出来るって、どんだけファンタスティックな不思議少年なんだよそれ。


 何回もそのフェニックスという言葉を頭の中で反芻しても理解不能だった。逆に混乱してきた。訳わからん。そもそも、フェニックスって頑張っても人じゃないよ?鳥っぽいよね?空想上の生き物だっけ?全然意味解らん。

 オレ、人ですよ!



 混乱しすぎてついに頭の中に入っているであろう彦一の脳みそは急激に幼児退行してしまった。


「ねーねー、アヤメお姉ちゃん。フェニックスっておいしいの?」


 幼児退行した彦一はアヤメに聞く。


「んー。意外とタンパクな味だったから、そのままだとそんなにたいした味ではなかったわ。私的には、薄くスライスして湯がいて、ポン酢醤油で頂くのがオススメかしら」


「食したことあるのかよ!」


 おかげで即まともに戻った。


 その辺でフェニックス獲れるのかよ!それともどこかの名産品で食肉用として養殖して定期的に出荷してるのかよ!


 いやいや、それよりもオレがフェニックス?オレちゃんと人間の形してるよ?どゆこと?

 さっぱり意味わからん。何言ってんだこの女。ちょっと二次元的な考えをしている子なのかしら?厨二病?そしたら心が広いオレとしては、彼女の考えや、意見を頭から否定せずに一通り聞いてあげてやんわりと少しづつ、時間をかけて常識を教えて世間に溶け込めるようにしてやらないと。とりあえず話しだけでも聞いてあげようじゃないか。


「まーなんだ、フェニックスが食べ物なのかもだいぶ気になるけど。それよりも、それよりもだ。オレがフェニックスってどゆこと?オレ、フェニックス自体空想の産物だし。そりゃ、いるんだったら見てみたいけど、実際のところオレ的にはいないと認識してるんだけど。しかもその空想動物であるところのフェニックスが実はオレっていうのが全く理解ができないんだけど。オレ人間だし」


「え!人間だったの!」


 驚くポイントそこ!?

 アヤメ『様』の驚いた顔を見たのはそれが初めてだった。つか、そこに驚くのってどうなの?


「たしか下僕は、人間とは認めず、家畜やペットと同類のカテゴリーなはずだけど。国も認めてるわ」


「なにそのカースト制度!」


 彦一の全力ツッコミには反応せず、アヤメは話を再開し始める。


「やきとりくん。あなた本当に何も聞かされてないのね。確かにあなたの取説には、このことを教えてないことも綴ってあったから多少の心の準備はしてたけど。よくあなたのお父さんも今まであなたに隠し続けたわね、大したものだわ」


 よく分からないが、オレの父親に感心しているようだ。


「いい?やきとりくん。別に私は、二次元の電波的な考えの少女でも電影少女でもないわ。ましてや夢を追いかけてそうな厨二病不思議ちゃんでもボーイズラブネタに恋する腐女子でもないわ。いきなりあなたは、フェニックスですと言われてそんなことありえない、馬鹿げてると思われるのはもっともだけど、真実なのよ」


 自分は非現実的な考えを持ってないと言ってるアヤメ。


「もうちょっと細かく言うとあなたは生まれながらにして、フェニックス有する能力の持ち主なのよ。まだあんまり覚醒はしてなさそうだけど。どんな能力なのかというと、他人を回復させる能力、炎を操る能力、そして自己回復能力……ま、ほぼ不死身ってことかしら?今、解明されてる能力はこのくらいらしいけど、他にもあるかもしれないわね。そんなことがあなたのお父さんがくれたデータには載っていたわ」


 非現実な考えではないという割には、非現実的なことを告げるアヤメにポカーンとして聞く彦一。


「私はあなたのその能力に興味惹かれたってわけ。本当にそうなら色々と使えるしね。ま、違ったら、さっさとあなたのお父さんに突き返すからそのつもりで」


 フェニックス。火の鳥。

 …あ。だからやきとり扱いなのか?ちとひねりが効いてるじゃん。


 いやいや、感心してる場合じゃないぞ。オレにそんな能力あるわけないじゃないか。たしかに若干、人より怪我や病気は治りが早い気は薄々していたが。


 いや、それは毎度毎度、その度に親父がくれた怪しくて胡散臭い薬のせいだよな?しいて人と違うというなら、まだオレが幼い子供の頃、気を失うぐらいの高熱は何度か出したことあるけど、別に他の人と比べてそこまで特別何かあるってことはないような、多分。高熱の時は気を失ったりしたから記憶は曖昧だけど。


「逆よ逆」


「え?ギャグ?」


 つか、また心読まれたよーな。


「ギャグは、あなたの人生だけにしてくれない?」


「顔どころか人生そのものをギャグにされたーっ!」


 どんだけ非人道的な性格してんだこの女……。


「それは、多分、あなたのお父さんのお陰よ。仕業と言ってもいいわ」


「どゆこと?」


 いまいち分からない彦一にアヤメの説明をする。


「あなたが病気やケガをしたときに飲まされた薬は、あなたを治す薬ではなく、あなたの異常な回復力の促進を遅らせるための薬だったのよ。そうやって他の人となんらかわらない回復症状を作りあげてたってわけ。あなたには、なるべく他の人達と同じように育ててあなたが皆と違和感を感じさせないよう、あなたが異常な回復を見せる身体能力の持ち主だと周りの皆にバレないようにあなたの親なりに気を使い、配慮したってとこね」


「あの親父がそんな周りに気を使うタイプの人間か?アヤメも解るだろ?人のよさそうな雰囲気醸し出して、小悪党なんだよ、あの親父は」


「……あなた、やきとりはやきとりでもタレか塩かでいったらタレね」


「なんで?」


「甘っタレだからよ」


「上手いこといったーっ!」


 オレは心なしか、アヤメ『様』が、うっすらキメ顔のように見えた。


「しっかしさぁ、そんなこと言われても簡単に鵜呑みにできないでしょ?フツー。オレ、今まで一つもそんな能力の自覚症状一個もないし。フェニックス的な?」


「ま、そのうちわかるでしょ。かと行って特に仕事に対しては、あなたに特に期待してないわ。余興ついでに付いてきてもらってるだけだし」


 ま、そりゃそうかもしんねーけど。うっすら解ってはいたけど、面と向かって言われるとイラッとするなあ。第一、なんの仕事か知らねーし。そーいやこれからどんな仕事で、なんの手伝いするんだ?

 気になった彦一は、アヤメに聞いてみる。


「仕事、仕事ってそーいや、なんの仕事してるの?」


「そうね…。ひらたくいうと、国を護り、この国の調和を保つ仕事よ」


「軽く壮大なこと言ってるんですけど。スケールでかすぎて果てしねーっ!つか何様なんだよ!」


「神様よ」


「キターーッ!とうとう自分で自分のことを神と呼んじゃったよ。オマエは、イケイケ時代の天皇かよ!」


「ま、古事記や日本書紀が本当なら、似たようなものね」


「へ、へぇー。否定しないところがエクセレント」



 そんなこんなで彦一とアヤメがやりとりをしていたら、どうやら目的地に近づいたらしく、彦一達を乗せたヘリは、降下し始めていた。

 その後、ヘリは目的地らしい所に着地し、プロペラの羽根は完全に回転を停止した。


 




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