表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

お隣の山田さん。

作者: 紀流茜

久々に書いた読み切り小説。

変な部分があるかもですが、楽しんでいただけたら光栄です。

俺のお隣の山田さんという人は、一言でまとめるならいい女。

…のはずなのだが、近所ではこんな噂が広まっていた。

「…ねぇ、聞いた?山田さんって、見えるらしいわよ?」

「えぇ?何がぁ…?」

「…決まってるでしょ?アレよ、アレ」

「えっ、まさか…”幽霊”?」

何故か、こんな馬鹿馬鹿しい噂ばかり広まっている山田さん。

俺からしたら、見えるなんて要素山田さんには無いと思っている。

でも、何故かこのマンション中ではもう、話題の中心となってしまっていた。


「チッ、今日も俺がゴミ捨てかよ…」

朝、登校のついでに、いつも通りゴミ捨てを任された日の事…。

お約束かのようにこのゴミ捨て場で山田さんに会った。

「あら、おはよう」

「お、おはようございます」

山田さんは、上品に俺を見て微笑んだ。

丁寧に巻かれたカールは、ゴミを置く時、少し俺の体に当たる。

「…今から学校?」

「えっ、ああ、はい」

「そう…、いってらっしゃい」

「は、はい…」

それだけ言い残して、山田さんは帰った。

初めて挨拶以外に会話を交わした…。少しだけだけど、嬉しかった。

まあ、男は皆そうだろう、あんな美人に話しかけられたら誰だって嬉しい。

…いくら幽霊が見える女でも…な。

まあ、俺は信じてねーけど。

「って、いっけねー!遅刻する!」

俺は駆け足で学校に向かった。


…そして、帰宅時。

いつものようにエレベーターに乗ろうとすると…階段に座る山田さんが見えた。

「あれっ、あんな所に座って何してるんだろう?」

どこか一点を見つめ、悲しそうにしている。

そして、その姿を見た近所の噂好き達がボソボソと言っている。

…まさか、アレが噂される原因なのか?なんだ、普通じゃねーか。

ちょっと話しかけてみるか。

俺は山田さんに近づき、声をかけた。

「すみませ~ん、何してるんですか?」

「…?」

「えっ…。」

振り向いた山田さんの顔を見たとき…、俺は驚いた。

山田さんの真っ白な頬が、涙で濡れていたから。

「や…まだ…さん?」

「ああ、君かぁ…」

そう呟き、うつむきながら、寂しそうに微笑んだ。

「あ、あの…、どこ見てたんですか?」

「ずーっと向こうを見てたの」

「え?向こう?」

…まさか、本当に幽霊を見ていたのか?(汗)

「ええ、向こうよ…。ずーっと向こうで、届かない場所にいる人」

「…ま、まさか」

「あなたは信じるの?私の噂」

「え、いや、俺は信じてません。馬鹿馬鹿しくて」

それを聞いた山田さんは、目を丸くした。

まあ、当たり前だろう。このマンションでこの噂に興味ない人はいないからな…。

そのこと、山田さんもよく知ってるみたいだ。

だが、俺の言葉を聞いた山田さんはしばらくしてから、笑って…

「あなたになら…、わかってくれるかもしれないわね…」

と、小さく呟いた。

「私が見ている遠くの人…、恋人だった人…。亡くなっちゃったんだけどね」

「え゛…」

亡くなった…だと?…まさか本当にっ…!

「その人が亡くなっちゃってから、私ずっと空を見上げて祈るの。

”天国で幸せに過ごしていますように”って…。でも自然と涙が出ちゃってねぇ…」

そういって山田さんはまた涙をこぼした。

この瞬間、俺は思った…

「…だ、大丈夫ですよ。」

「え?」

「きっと、幸せにしてますって。」

「…ありがとう」

そう優しく微笑んだ山田さんの隣にいたいって。


夕焼けに染まった俺ら二人…

山田さんの隣で、俺は誓った…。

”この人の傷を癒す。”と。

どうでしたでしょうか?

楽しんでいただけたでしょうか?

では、また次の小説で出会える事を祈って…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ