お隣の山田さん。
久々に書いた読み切り小説。
変な部分があるかもですが、楽しんでいただけたら光栄です。
俺のお隣の山田さんという人は、一言でまとめるならいい女。
…のはずなのだが、近所ではこんな噂が広まっていた。
「…ねぇ、聞いた?山田さんって、見えるらしいわよ?」
「えぇ?何がぁ…?」
「…決まってるでしょ?アレよ、アレ」
「えっ、まさか…”幽霊”?」
何故か、こんな馬鹿馬鹿しい噂ばかり広まっている山田さん。
俺からしたら、見えるなんて要素山田さんには無いと思っている。
でも、何故かこのマンション中ではもう、話題の中心となってしまっていた。
「チッ、今日も俺がゴミ捨てかよ…」
朝、登校のついでに、いつも通りゴミ捨てを任された日の事…。
お約束かのようにこのゴミ捨て場で山田さんに会った。
「あら、おはよう」
「お、おはようございます」
山田さんは、上品に俺を見て微笑んだ。
丁寧に巻かれたカールは、ゴミを置く時、少し俺の体に当たる。
「…今から学校?」
「えっ、ああ、はい」
「そう…、いってらっしゃい」
「は、はい…」
それだけ言い残して、山田さんは帰った。
初めて挨拶以外に会話を交わした…。少しだけだけど、嬉しかった。
まあ、男は皆そうだろう、あんな美人に話しかけられたら誰だって嬉しい。
…いくら幽霊が見える女でも…な。
まあ、俺は信じてねーけど。
「って、いっけねー!遅刻する!」
俺は駆け足で学校に向かった。
…そして、帰宅時。
いつものようにエレベーターに乗ろうとすると…階段に座る山田さんが見えた。
「あれっ、あんな所に座って何してるんだろう?」
どこか一点を見つめ、悲しそうにしている。
そして、その姿を見た近所の噂好き達がボソボソと言っている。
…まさか、アレが噂される原因なのか?なんだ、普通じゃねーか。
ちょっと話しかけてみるか。
俺は山田さんに近づき、声をかけた。
「すみませ~ん、何してるんですか?」
「…?」
「えっ…。」
振り向いた山田さんの顔を見たとき…、俺は驚いた。
山田さんの真っ白な頬が、涙で濡れていたから。
「や…まだ…さん?」
「ああ、君かぁ…」
そう呟き、うつむきながら、寂しそうに微笑んだ。
「あ、あの…、どこ見てたんですか?」
「ずーっと向こうを見てたの」
「え?向こう?」
…まさか、本当に幽霊を見ていたのか?(汗)
「ええ、向こうよ…。ずーっと向こうで、届かない場所にいる人」
「…ま、まさか」
「あなたは信じるの?私の噂」
「え、いや、俺は信じてません。馬鹿馬鹿しくて」
それを聞いた山田さんは、目を丸くした。
まあ、当たり前だろう。このマンションでこの噂に興味ない人はいないからな…。
そのこと、山田さんもよく知ってるみたいだ。
だが、俺の言葉を聞いた山田さんはしばらくしてから、笑って…
「あなたになら…、わかってくれるかもしれないわね…」
と、小さく呟いた。
「私が見ている遠くの人…、恋人だった人…。亡くなっちゃったんだけどね」
「え゛…」
亡くなった…だと?…まさか本当にっ…!
「その人が亡くなっちゃってから、私ずっと空を見上げて祈るの。
”天国で幸せに過ごしていますように”って…。でも自然と涙が出ちゃってねぇ…」
そういって山田さんはまた涙をこぼした。
この瞬間、俺は思った…
「…だ、大丈夫ですよ。」
「え?」
「きっと、幸せにしてますって。」
「…ありがとう」
そう優しく微笑んだ山田さんの隣にいたいって。
夕焼けに染まった俺ら二人…
山田さんの隣で、俺は誓った…。
”この人の傷を癒す。”と。
どうでしたでしょうか?
楽しんでいただけたでしょうか?
では、また次の小説で出会える事を祈って…