過去編第14話 ~天国と地獄の男の娘~
この話はAbstain Companyさんから「高校生の丸恵さんと、<父親>としての征美さんの掛け合いをひとつやってみるのはどうでしょう。」とけしかけられて、自分の中でおぼろげにあったイメージが固まったことにより出来上がった話です。
ちなみにこの時蠣崎家で観ていたのは「江戸川乱歩の美女シリーズ」の一作である「天国と地獄の美女」(実際の放映日は1982年1月2日)です。で、これを書いているのは2018年の正月なのですが何たる偶然か文中の「コメディアン出身の俳優」が2018年現在の正月の名物番組「芸能人格付けチェック」の進行役である伊東四朗氏だったりするのでした。
なお丸恵の弟の真琴はとっくに疲れて寝てます。
1980年代前半のある年の蠣乃神社の正月の夜。こたつを囲んでテレビを見ているのは宮司の蠣崎征美、征美の子で女の子として育てられている男の子の丸恵、そして神社の祭神のイヨである。
「あけましておめでとうございます。今夜は私の手掛けた事件の中でも一番スケールの大きい、そして一番恐ろしい物語をお送りしましょう…。」
テレビで挨拶をしているのはこれから放送されるサスペンスドラマで探偵役を演じるダンディーな俳優である。そして本編が始まった。
「よおくご覧下さい。神によって与えられた大自然をそのまま受け入れる時代は去りました…。」
コメディアン出身の俳優が演じるいかにも風采の上がらぬ中年男性が自らの夢見る理想の楽園を実現すべく会社重役にプレゼンするシーンなのだが、その中で理想の楽園の住人である女性たちがおっぱい丸出し、お尻丸出しで舞い躍るイメージが惜しげもなく披露されるのである。さすが正月、大盤振る舞いである。
「おっぱい丸出しですねぇ。」
「凄いものじゃのう…。」
呑気に感心する丸恵とイヨに対し、ニヤニヤしながら征美が丸恵に語り掛ける。
「ふふふ、丸恵ちゃんもこんな風に男の子を誘惑してだね…。」
「誘惑、ですかぁ?」
「そうだよ、女の子は色っぽさが大事なんだ。」
「色っぽさ…。」
丸恵はきょとんとしながら征美の話を聞いていたのだが、そこに響き渡る怒鳴り声。
「ちょっと、何てこと丸恵に教えてるの!」
征美の妻で丸恵の母である朝陽である。
「親子でバカなこと言ってないで早く寝なさい!」
「えーいいじゃないか。こういうのを覚えるのも丸恵ちゃんの勉強だよ。」
「丸恵がまーちゃんみたいになったら困るじゃない!そういう下品なことは止めて!」
「え、えーと…。」
「修羅場じゃのう…。」
おわり




