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現代編第23話 ~装神少年香澄~

ある深夜、蠣乃神社の巫女(?)の蠣崎香澄は勉強が一段落し、居間で温めた牛乳を啜っていた。隣では祭神のイヨがノートパソコンでアニメを食い入るように見つめている。どうやら神様を衣服として身に纏った少女がその力で魔物と戦う、という筋立てらしい。


「香澄!良いことを思いついたぞ!」


不意にイヨが嬉しそうに香澄に声をかける。


「…何ですか?」


それに対し香澄は声も表情も冷ややか。大体においてイヨの思い付きはロクでもないものが多いと経験上知っているからだ。


「このアニメを観て思いついたんじゃがの、イヨさまが香澄と合体してその力で外見上の身体を女の子に変化させるのじゃ!そうすれば…」


しかしイヨが言い終わる前に香澄は黙って自分の部屋に帰ろうとしている。


「待て!まだ話は終わっておらぬ!」

「最後まで聞くまでもありませんよ!下らない!」


香澄の口調はやや怒気を帯びている。


「ま、まあ、最後まで聞くのじゃ。例えば強い魔物に捕縛されて衣服を破られ正体を知られそうになった時、女の子に身体を変化させることができれば男とバレずに済むではないか。あるいは身体検査や温泉などどうしても裸にならなくてはならない時にごまかす手段としても使えよう。」

「へ、へえ…なるほど…。」


イヨのいつになく理路整然とした説明に、香澄も今回ばかりは感心した様子である。


「それに香澄がこの技を完成させれば、香澄の子やその子孫たちのピンチの場面も減らせるようになるのじゃ。…やってみる価値はあると思うがのう。」

「…そうですね!それならやってみてもいいと思います!」


どうやら完全に納得した様子の香澄である。


「そうと決まれば早速山籠もりじゃ!今から準備じゃ!」

「ええっ!?」


…そして翌朝。


「香澄ー。朝ごはんだぞー。」


朝食の時間になっても階下に下りてこない香澄を心配し父の丸恵が香澄を部屋に迎えに行くと、勉強机の上にこんな置手紙があった。


「イヨ様と一緒に山籠もりに行ってきます。時間がかかるかもしれませんが県内から出ることはありません。ご心配には及びません。 香澄」

「…香澄も神社の後継者として自覚が芽生えてきたかな。」


一方その頃香澄とイヨはディーゼルカーとバスを乗り継いで飛騨地方のある山中にいた。そこで修業を行うつもりらしい。なお格好は香澄もイヨも巫女装束である。


「考えたのじゃが、肉体の変化自体はイヨさまが今まで培ってきた法力だけでもなんとかなりそうじゃ。問題はイヨさまの力をいかに香澄が受け止めるかじゃ。力を受け止め切るには互いの心を完全に合わせる必要がある。」

「なるほど…。」

「そこでじゃ…ジャンケンを修行として行うのじゃ!」

「へ?」


イヨの意外な提案に戸惑う香澄。


「三分の一の組み合わせをなめてはならぬのじゃ。ジャンケンでどんな時でもあいこを連続して出せるようになれば…それは心の波長が合ったということなのじゃ!まずは100回連続が目標じゃ。」

「はあ…。」


というわけで半信半疑ながら香澄はイヨとのジャンケン修業を始めたが…これが確かに難しい。油断するとすぐに出す手がずれてしまう・


「香澄!グーじゃ!そっちは?」

「パーです!」

「…残念じゃが75回連続引き分けでストップじゃ。もう1回最初からじゃ!」

「はいぃっ!」


しかし今回ばかりは真面目な香澄だけではなく、イヨも言い出しっぺなだけにゲームへの欲求も封印し懸命に修行に取り組んだ。


…そして…三日三晩にわたるジャンケンの末に…


「やったのじゃ!ついに100回連続引き分けじゃ!」

「はい!やりました!」


ついに目標に到達した。


「早速変化の術を試すのじゃ!」


ということでまず香澄が両手を広げ両足を踏ん張った体勢で立ち、その後ろでイヨが駆けだす態勢を整える。そして…


「「装神!」」


一人と一柱は同時にキーワードを唱え、イヨが香澄に向って駆けて行き、そして飛び込むと…何と!イヨが香澄の体内に消えていったではないか!


「ああああっ!」


イヨの法力が体内に流れ込む感覚に包まれる香澄。それと共にその身体も変化していく。


そして…


「…。」


法力の流れ込む感覚が一段落したところで香澄は自らの身体を撫で回しその感触を確かめる。

するとどうだ。確かにその身体が変化しているではないか。ささやかながら美しく自己主張する乳房(Bカップくらいだろうか?)、キュッと引き締まった腰、健康的に大きくなったお尻、そして消えてしまった股間にぶら下がる醜いモノ…。


「やりました!」


思わず叫ぶ香澄。その声も少女(?)時代のかわいらしいものになっている。どうやら実験は成功…そう香澄が思った瞬間!


「う…う…うああああっ!」


香澄の身体に激痛が走り、耐えられなくなった香澄はそのまま地面を転がり回る。

…痛みはすぐに止んだが、香澄が気がついた時には香澄とイヨは完全に分離、香澄の身体も元に戻ってしまっていた。


「い…イヨ様…。」

「…うう、どうやら心を合わせ続けるのが難しいようじゃ…。」

「…どうします…?」

「もう一度修行じゃ…。今度は500回連続を目指すのじゃ。」


ということで再び探求のジャンケン大会が始まった。さすがにコツをつかんだ後なだけあり記録の伸びは良くなり女の子の身体を維持できる時間も割合に容易に伸びていったが…。


「…ど、どうやらこれが限界のようじゃ…。」

「は、はい…。」


どう頑張っても7~8分というところで香澄とイヨとの合体が解けてしまうということが分かってきた。おまけに…


「…何か身体も重いんですよね。」


そうなのである。合体によって女体化することでむしろ身体能力や巫女としての戦闘能力がガクッと落ちてしまうのである。これでは戦いには使えないだろう。


「やはりこの技は緊急避難やごまかしにしか使えないようじゃの。」

「そうですね…。」

「魔物に服を破られそうだとか、知らない女の子と一緒に温泉に入るとかのう…。」

「…そんなごまかしをしなくてはならない場面に遭遇しないことを祈りますよ。」


だがこの技を使わなくてはならない場面がそう遠くない日に来るということをまだ香澄は知らないのであった。


おわり

これはいつもお世話になっておりますAoi☆はるえさんが「装神少女まとい」というアニメを話題にされたことをヒントに書いたものです(タイトルやキーワードからしても…)。「神様を身に纏う形で新たな力を…」というシチュエーションに惹かれましたので自分なりに。

ちなみに香澄の普段の声は堀江淳さん(古の歌手で、代表曲はメモリーグラスとか、メモリーグラスとか、メモリーグラスとか…)というイメージですが女体化後の声は堀江由衣さんがイメージ。偶然ですが両方堀江さんですね。

また置手紙やジャンケン修行の元ネタは「がんばれ!タブチくん」の映画です。

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