大過去編 ~蠣乃神社ができるまで~
香澄を作るにあたって何となく「蠣崎」という苗字を考えたのですが、「蠣崎」という苗字は本来東北のものであり、一方コラボさせていただいている「巫女番長」の舞台は岐阜、ということに対し辻褄を合わせるためにでっち上げた一本。
「ねえ蠣崎ちゃん、いつも気になっていたんだけど…。」
「何です?」
蠣乃神社の巫女(?)蠣崎香澄に風松神社のヤンキー巫女・広島清香が話しかける。
「何で蠣崎ちゃんの家って男の子が女の子の恰好してんの?」
「それは…伝統だからですね。」
「伝統って何?始めた理由とかあるんじゃないの?私はそれを知りたいの!」
清香はいつになく厳しい。
「んー…前にイヨ様に聞いてみたんですけど…細かいことはあまり覚えていないんですよ。」
「じゃあイヨ様に聞いてみたら?」
ということで二人は蠣乃神社の祭神・イヨに事情を聞いてみることとしたのである。
「…というわけなんです。」
「分かったぞ!それではイヨさまが教えてやろう。」
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元々蠣崎家は武田信繁の流れを汲む…
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「ちょっと待って!信繁って武田信玄の弟の?蠣崎ちゃん信玄の親戚?」
ちょっと聞き覚えのある名前にミーハーな反応をする清香。
「ち、違いますよ!ねえイヨ様。」
「そうじゃ!よく間違われるが同姓同名の別人じゃ。イヨさまが言っているのは安芸、つまり広島県の武田信繁じゃ。」
「なーんだ。」
「…では続けるぞ。」
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…「安芸の」武田信繁の流れを汲む東北北部の名家である。
戦国時代の蠣崎家の一族に「香姫」という人物がおり、宗家のために「歩き巫女」としてスパイ活動を行っていた。
しかしながら、戦乱の中香姫は宗家とはぐれてしまい、逃げ伸びる中どんどんと本州を南下、気が付いた時には美濃国名柄郷に流れ着いてしまっていた。
(どうしよう…行くあてもないし食料もないし…。)
切羽詰まっていた状態の香姫の夢枕に、ある少年が立った。
(困っているようじゃの?)
(…誰です?)
(我が名は…)
その少年は長ったらしく難しい名前を名乗る。
(…長いですね。)
(では「イヨ」でいいのじゃ。自分でもそう名乗っておるからの。)
その少年こそがイヨだったのである。
(実はイヨさまはこの地の神なのじゃ。)
(ええ?)
(イヨさまも元々いた神社を焼かれた上に神主一族を皆殺しにされて困っておったのじゃ。もしイヨさまのことを保護して新しい神社を立ててくれるならそなたのことも守るのじゃ。どうじゃ?悪い話ではないじゃろ?)
(え、本当ですか!やりますやります!)
旅の中で消耗し追い詰められていた香姫はイヨの怪しい申し出に飛びついた。そしてイヨが夢で伝えた場所である神社の焼け跡からご神体の銅鏡、つまりイヨをサルベージし、その近くの適当と思われる場所に新しく粗末な社を建立した。それが蠣乃神社のおこりである。
神の力と住む場所を得た香姫はようやく生活が落ち着いた。そして地元の男性を婿に取り、更なる社勢の拡大を図ることとしたのである。
…ところが、生まれる男の子男の子ことごとくが夭折してしまう。そして三人目の男の子が亡くなった時、香姫はたまりかねてイヨにアドバイスを求めた。
「どうもこの地は魔物に目を付けられやすい場所らしいのう。じゃから男の子が死にやすいようじゃ。」
「ではどうすればいいのでしょう?」
「…それならば元服するまで女の子として育ててみるのはどうじゃ?そうすれば魔物の目をごまかせるかもしれぬ。」
「…やってみます。」
その後生まれた四男は女の子として育てられ、そして無事成人した。
「やりましたイヨ様!」
「安直な手かと思ったが…結構有効だったのう。」
それにより、蠣乃神社の伝統として「後継者候補の男子を女子として育てる」というものが定着したのであった。そして代を重ねるごとに徐々に蠣乃神社の規模も大きくなっていったのである。
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「というわけじゃ。」
「ふーん…。」
思いのほかヘビーな歴史に清香も感心した様子ではある。
「蠣崎ちゃんのご先祖様って名門のお姫様だったんだね。…それによく見れば名前も一緒だ。」
「そうじゃ!丸恵は香澄にそれだけ期待していたからのう。それに香澄は年々香に似てきておる。」
「そ、そう言われると…照れます…。」
確かに現在の香澄は眉目秀麗・霊力優秀でありその点では丸恵やイヨの期待通りに育っていると言える。
「でも蠣崎ちゃんエルダー棒があるよね。エルダー棒のあるお姫様かあ…。(ニヤニヤ)」
「や、やめて下さい…。」
おわり
というわけで香澄の先祖は戦国時代の姫でした。当然この話はフィクションです。




