過去編第12話 ~宇宙海賊船の発進~
それはまだ蠣乃神社の宮司・蠣崎丸恵が自分のことを女の子と信じていた小学校高学年時代。
「おお、丸恵。何を観ているのじゃ?」
居間のテレビにかじりつく丸恵に蠣乃神社の祭神・イヨが話しかけた。
「あ、イヨ様。アニメを観ているんですよぉ。」
なるほど確かにテレビには黒い眼帯とほっぺの傷が渋い雰囲気を醸し出す壮年の男性キャラクターが映し出されている。
「クラスでは「999」のほうが人気みたいですけどぉ、私はこっちのほうが好きですねぇ。」
「そうかそうか!」
「私大きくなったらハーロックみたいなカッコいい男の人のお嫁さんになりたいんですよぉ。」
「…ん?」
眼をキラキラさせながら丸恵が語った内容はイヨの心に一筋の影を射させるものである。本当は男の子である丸恵はお嫁さんにはなれない。
「の、のう丸恵…。」
「何ですかぁ?」
再び声をかけるイヨに純粋な笑顔を見せる丸恵。
「う、な、何でもないのじゃ…。」
イヨは「男にはまりすぎるとあまり良いことはないのじゃ。」と丸恵に言いたかった。しかし、丸恵の純粋な笑顔はそれをためらわせるには十分過ぎるものであった。
(あんな顔されたら…何も言えないではないか…。)
丸恵が自らに秘められた残酷な真実を知るまで、あと数年。
おわり
この話はすぴばるというイラストSNSサービスで相互フォローさせていただいているかなたそさんの「心が女の子ならハーロックにtokitokiしたのでは!」という発言が大きなヒントとなりました。かなたそさんどうもありがとうございました!




