現代編第12話 ~「島根では、神在月ですよ」~
旧暦10月は出雲大社で神々の会議が行われる時期である。蠣乃神社の神・イヨも毎年それに参加している。ただ、変わったことにイヨは鉄道を使って出雲まで移動するのである。
「どうじゃ香澄、オススメの移動法は出たかの?」
この年もイヨは蠣乃神社の巫女(?)蠣崎香澄に移動方法をパソコンで調べさせていた。
「そうですね…一旦名古屋まで快速で行って名古屋から新幹線で岡山まで出てそこから特急に乗り換えて出雲市まで行くのが一番良いようですよ。」
「やはりそうか…。丸恵の頃は出雲大社まで直行の急行があってのう、時間はかかったがずっと座って行けて楽だったぞ。今は駅もろとも無くなってしまったがのう…。全く罰当たりな話じゃ!乗り換え有りでは居眠りも出来ないしおちおち3DSもできないではないか!のう香澄!」
「それについて同意を求めないで下さい…。」
香澄のやや冷淡な反応は続く。
「あ、それから領収書は忘れないで下さいね。イヨさまの旅費は神社から出ているんですからね。」
「神に領収書を切らせるのか…。」
「そうしないと会議に出ないでそのお金で遊んでしまうかもしれないではないですか!」
香澄の指摘に、イヨは思わずむくれた。
「信用が無いのう…。」
「このパソコンにウイルスを感染させたのはどこの誰でしたっけねえ?」
「そ、それを言うな…。」
弱みを突かれて今度は意気消沈するイヨであった。
そんなこんなでいよいよ出発の日。イヨは女の子っぽい私服に身を包み、大きなトランクを持って神社の玄関先に立っていた。
「では行って来るぞ香澄!」
「行ってらっしゃいませ。しっかりやってきて下さいね。」
そして10日あまりが過ぎた後…
「帰ったぞ!」
イヨは無事帰還した。
「お帰りなさいませ。会議はどうでした?」
「ばっちりだったぞ!…そうじゃ、香澄にお土産を買ってきたのじゃ!受け取るが良い。」
イヨが香澄に手渡したのは、何やら個性的なタッチで描かれた男の子がデザインされた携帯ストラップであった。
「…何ですこれ?」
「吉田君というらしいのじゃ!島根では人気のあるキャラらしいぞ!」
「なるほど…。」
「みのりちゃんが大ファンらしくての。島根に行くならぜひ買って来いと勧められたのじゃ。」
「そうですか…。」
今ひとつピンと来ない様子の香澄であった。
後日クラスメートと香澄との間で交わされた会話。
「かすみん、何このストラップ?」
「島根名物だそうですけど…わたしにはよく分からないですね。」
おわり
文中で出てくる「直行の急行」とは名古屋~大社間で運転されていた急行「大社」のことです。




