過去編第8話 ~今で言う女子会~
ある土曜日の夜、蠣乃神社の巫女(?)蠣崎丸恵は布団の中で二人のクラスメート女子に抱きしめられ、苦悩していた。
(一体どうしてこんなことになってしまったんでしょぉ…。)
話は同じ日の昼にさかのぼる。
「ねえねえまるちゃん。」
午前の授業が終わり(←当時)、家に帰ろうとしていた丸恵にクラスメートの伊藤聖子が話しかけてきた。
「伊藤さん。」
「この土日ね、お父さんとお母さんが親戚の家に行くんだ。だから一人でお留守番しなきゃいけないのね。」
「それは大変ですねぇ。」
「だからさ、今日打ちに泊まりに来てくんない?」
「ええー?」
突然の提案に、さすがの丸恵も戸惑いを隠せない様子であった。
「一人じゃ寂しいんだ。まるちゃんなら一緒に楽しく過ごせそうだし…。」
そう話す聖子の眼に若干の怪しい光が宿る。
(…!)
丸恵は身の危険を感じた。何しろ普段からよく自らのスカートをめくってくる聖子のことである。「男のお前のほうが危ないじゃないか」というツッコミはこの際無しである。
「で、でも…伊藤さん、ヘンなことしないですかぁ?」
「だ、大丈夫だよ(…多分)!そ、そうだ!みらいも誘うよ!ね?みんなでいたほうが楽しいじゃない、ね?」
「そ…そうですかぁ。分かりましたぁ。三人ならいいですよぉ。」
もう一人の友達の名を出されたことで丸恵もほだされた。
そして、平川未来はお泊りの誘いに二つ返事でOKを出し、ここに聖子・丸恵・未来によるお泊り会が始まったのであった。
聖子の家にたどり着いてからしばらくは取り止めも無い会話で時間がつぶれていったが、不意に丸恵が現実に引き戻す一言を放った。
「何か…お腹が空きましたねぇ。」
「あ、そういえば!」
未来もそれに同調した。男の娘にスポーツ少女、やはりお腹の減りは早い。
「そうか。確かにもう結構いい時間だよね。夕ご飯のこともそろそろ考えなきゃね。」
聖子はそう言いながら三人のいる居間から出て行った。程なく戻ってきた彼女の手には千円札が握られていた。
「…この千円、お母さんが「これで店屋物でも取っておきなさい」と渡してくれたんだけど…三人で千円じゃろくなもの食べられないよね。」
「…確かに。」
「マクドナルドとかも高いですしねぇ…。」(←当時)
ちょっと暗澹たる気持ちになる三人であった。
「でさ、冷蔵庫の中には野菜とか結構あったし…三人でご飯作ったほうがいいんじゃないかな、って思うわけね。」
「なるほど。」
「悪くないですねぇ。」
聖子にしてはまともな提案に、未来・丸恵も異論は無い様子。
「OK!じゃ、一緒にご飯作ろっか!」
三人による夕食の調理が始まった。元々三人ともこの種の行為はそれほど苦手でもなかったこともあってかかなり順調に調理は進み、あっさり野菜炒めとワカメの味噌汁が出来上がった。
「それでは…。」「「「いただきます!」」」
三人は一斉に野菜炒めを口に運ぶ。
「!」
「これは…。」
「まずくは…ないですねぇ。」
「でも美味しくもない気がする…。」
どうやら微妙な仕上がりだった様子。
とはいえ、仲が良い者同志で食べる食事は楽しいものであり、瞬く間に野菜炒めとワカメの味噌汁、そしてご飯が三人の胃袋に納まった。
「「「ごちそうさま!」」」
さて、食事が終わってしばらくして、聖子が別な話を振ってきた。
「ねえねえ、お風呂が沸いたんだけどさ…まるちゃん、一緒に入らない?洗いっことか、しよ?」
「!」
お風呂になど一緒に入ったら正体がばれてしまう!
(どうしましょどうしましょ…そうだ!)
焦った丸恵はあるなかなかの名案を思いつき、それを実行に移すことにした。
「伊藤さん…あのですねぇ…えっとですねぇ…。」
丸恵はいかにも「お察し下さい」という態度でもじもじし始めた。
「まるちゃん…あ、ひょっとして「あの日」!」
「そ、そうですよぉ。伊藤さんの家のお風呂を汚すわけにはいきませんよぉ。」
「そっか…残念だな。」
(ほっ…。)
思いのほかあっさり引き下がる聖子の様子にほっとする丸恵であった。
「じゃあ…みらいは一緒に入ってくれる?」
丸恵をあきらめた聖子は未来に話を振った。
「嫌ですよ。伊藤さんの眼が危ないです。」
未来にはさくっと断られるのであった。
「残念…。じゃあみらい先に入ってきてよ。お客さんに一番風呂入ってもらうのは礼儀だと思うんだ。」
「…ありがとう。」
ということで未来が入浴に向かった。
しばらくして…
「伊藤さん、ありがとう。いいお湯だったよ。」
未来が風呂から出てきた。さすがに他人の家でお泊り、ということでしっかりピンク色のパジャマを着込んでいる。
「それは良かった。じゃあ今度はあたしが…。」
引き続き聖子が入浴に向かった。
これまたしばらくして…
「うん、確かにいいお湯だね。みらいの言うとおりだったわ。」
「!」
「?」
のんきなことを言いながら上がってきた聖子の格好はパンティ一枚のあられもない姿!
「伊藤さん!何て格好してるの!」
「だって湯上りは暑くってさ…。」
「年頃の女の子がはしたないよ!」
未来は聖子を怒りまくった。その一方で…
「…。」
丸恵は黙りこくっている。
「ほら、蠣崎さんも何か言ってあげたほうがいいよ…あれ、ちょっと顔が赤いけど、どうしたの?」
いかに普段女の子として過ごしているとはいえ、さすがに生の乳房は年頃の男の子には刺激がきつい。
「ご、ごめんなさいぃ…。ちょっとトイレにぃ…。」
こそこそとトイレに向かった丸恵は威きり立った股間のモノを出して(以下略)
…そんなこんなで一日が終わり、いよいよ就寝の時間である。
「ねえねえ、せっかくだからさ、三人一緒に寝ようよ!」
二たびの聖子の提案だが、今度は未来も乗ってきた。
「それはいいねえ…そうだ、一番大きい蠣崎さんを真ん中にするのはどうだろ?」
「えぇ…。」
「おお、それはナイスだね!」
「あのぉ…。」
丸恵の声は二人の耳には届かない。結局丸恵は二人に抗えず、丸恵を中心としたフォーメーションで就寝することになってしまうのであった。
「蠣崎さんは背が高いから安心感があるよね。」
「みらい良いこと言うね!」
そしてすぐに寝入ってしまった未来と聖子に抱きしめられ、現在に至るというわけである。
(これじゃ眠れません…。)
ちなみに、寝入った二人は…
「やったー!インターハイだよインターハイ!これも蠣崎さんが入ってくれたおかげだよぉ…。」
「まるちゃん今日はレースか…。たまにはこんなのも穿くんだね…。」
丸恵を抱きしめているせいか、丸恵が出てくる夢を見ているようであった。
結局、丸恵は一睡も出来ず、早朝にこっそり布団を抜け出し早起きしたふりをせざるを得なかったのであった。もちろん布団を抜け出した直後にはトイレで(以下自粛)
「ただいまぁ…。」
「おお丸恵!どうじゃお泊りは?楽しかったかの?」
「イヨ様…所詮わたしも薄汚いオスに過ぎないんですねぇ…。」
「丸恵…何があったのかは知らぬが…気落ちせずに頑張るのじゃ…。」
おわり




