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#6

夜、寝ながら相田は、放火強盗事件の前日に琉田と話してたとき一瞬過ぎた光はなんだろう、と思った。あの時は疲れのせいだと思ったが今になってあの違和感が甦る。伊綱のあの姿を見ると、天使は光のような姿をしているみたいだ。もしかしたら、天使。亞奴田。僕たちの、彼に対する疑惑の話は、聴かれていたのか。

「何かと役に立つ」

と今は亡き伊綱が言ってくれた吸射鏡とジクフリントの歴史書。相田は吸射鏡の包みを解いた。

それは一見して黒い板の破片であった。しかしながらその黒さは異様であった。吸い込まれるような闇。反射すらしない、塗りつぶされたような黒。

相田はそれを倉庫の明かりににかざした。鏡が反射されて光を映し出すように、影が壁に浮かんだ。相田はじっとその影を見つめていた。




翌朝、相田は昨日起きた事を琉田に話し、吸射鏡を見せた。

「…なるほどね。」

「これが天使たちを退治できるわけじゃないね。伊綱だってさんざん浴びかせられてた。だけど応急処置にはなるでしょう。」

「なるほど…一かけらしかないね。」

「割るのはまずいし…どっちが持つ?」

「あなたでいいわ。」

「そうか。」

「その本は?」

「最終章を読んでる…封印の鍵が出来てその後だよ。」

「分かったことある?」

「うーん…天使の特徴かな。」

「どんな?」

「天使の本当の姿は光みたいな姿で、つまり亞奴田の言う人間の本来の姿、高エネルギー体の姿なんだ。封印の鍵で解放されると、アイデンティティである身体を構成する物質は皆エネルギーに変わってしまう。」

「ようするに体もすべて光になるのね。」

「そう。で天使たちは時おり人間の姿になるけど、あれは解放されたエネルギーを、過去の体の記憶に従って形を保つように拘束してるんだよね。だから人間の体になるためには相応の我慢が必要だ。」

「たまに亞奴田が消えるのはそれね。」

「そう。」

「封印の鍵ってどうやって、人間解放してるの?」

「具体的には分からないが…あれはかなり特殊な形状をしてる。」

「うん。」

「どこか、人には魂と体を繋ぐツボみたいなのがあって、それをピンポイントに破壊するものなのかなあと。」

「それって恐ろしい話ね。」

「まあ仮説だけど…ん?」

相田は突如上を見た。

「どうした?」

「シッ。」

倉庫の外、恐らく空の方から大声が響いた。亞奴田の声だ。

「我々は!人類解放軍だ!姿は見えないが空で光として輝いている!今日我々は苦痛に満ちた君たちを解放し、日常という絶望から救いに来た!」

沈黙。

「君たちも我々みたいにこの世界で光を照らし続けよう!この世で永遠に、輝き続けるんだ!もしそれを否定するならこの世の外に解放してあげよう。君たちのその苦しみは」

斉唱。

「死をもって償うべし。」ヒィィィンと耳を突くような高音が聞こえたかと思ったその瞬間、倉庫が音を立てて倒壊した。

「わぁぁ!」

「きぁぁ!」

崩れた倉庫の天井の向こうの、青かったその空は異様に光っていた。その光はおさまったかと思うと無数の天使の大群が現れた。

相田は先生が天使になった時のように再び言う。

「逃げよう!」

天使はどうやら弓を構えていた。そして光の矢を一斉に放った。激しい煌めきで目も眩む。二人が命からがら逃げてる時に、クラスメート鮫田にすれ違った。琉田が「アッ…」と気づいた時、光の矢が鮫田の背中を貫いた。

「あ!」

琉田が叫ぶが、鮫田は驚いたような表情で前のめりにゆっくり倒れ、背中から光の翼が生え、天使の姿になった。

「鮫ちゃん!」

琉田は呼ぶが、天使になった鮫田はそのままゆっくり空へと飛んでいった。

「行こう!」

相田は叫んで琉田を掴み、連れて逃げた。天には光の軍隊が矢を放ち、天と地の間には矢を貫かれた人々が無表情のまま天に上げられ、地には破壊が満ち満ちていた。

「相田ァァァ!」

琉田の叫びが聞こえた。気がついたら琉田が手から離れていた。ハ、と気づいた相田は振り返った。琉田が天使に掴まれ、空へとさらわれていた。そのまま天使は光になって、猛高速に飛ばされた。空の光が無くなった事に気づき、琉田を拐うためにこのマネをしたのかと相田は気づかされた。

助けなければ。相田は後を追った。

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