#10
「君に天使らを退治してほしい…」
「なぜ僕が…」
「光の神の、ご意志だよ…」
倉庫での、今は亡き伊綱との対話を思い出す。光の神とはなんだろう。もしそれが存在したとして、それは自分にこれほど辛い使命、ミッションを果たせと言うのか。
人のいないその小屋で、相田は吸射鏡を巧みに改造した武器のテストをしていた。腕に取り付けられたそれは、鏡やレンズを用いて、一点に強烈な吸射光(とでも言うべきか)を向ける集中攻撃と、広く光が吸いとれる広範囲攻撃の二つの切り替えができた。
ふと、ノックの音が聞こえた。何事か。敵ではないか。相田は息を潜め、相手が去るのを待った。
相手が言った。
「相田くん!返事して!瑠田よ!」
相田は驚いた。ドアを開けると、確かに瑠田の姿があった。
「瑠田!久しぶり!人の姿が保てるようになったんだね!」
「ええ。何してたの?」
「天使をやっつける武器のテストを…あ…」
相田は腕につけた武器を外した。
「どうしたの?」
「瑠田も天使だよね…じゃあ見せない方がいいか…」
「なんで?」
「瑠田が死んじゃうかもしれないだろ?」
「私、死んでるけど。」
「まあそうだけど…」
「大丈夫。私は大丈夫。貸してごらん。」
瑠田は相田の持ってる武器をひったくって、スイッチを切り替え、集中攻撃型のまま自らの身体に当てた。
「あぁぁ!」
相田は悲鳴を上げたが、瑠田は何事もなく武器を返した。
「…え?」
「平気よ。」
「じゃあ…効果ないのか。」
「違う違う。私はね、ボラズロック山に行ったの。そこで封印の鍵を守ってた大きな光と融合しちゃったの。当時光の神と呼ばれてた存在ね。」
それを聞いて、相田はボラズロックに登ったのは亞奴田だけでない事を察した。「それは…伊綱さんと会話した事あるの?」
「勿論。」
「だから彼は奴にやられた後にこの僕に向かったのか…」
「貴方は選ばれた者よ。相田小見郎くん。なぜ私が平気だと思う?私は暗闇を照らす力を手にいれたからよ。あの天使たちは、解放解放言ってるのを見ても分かるように、自分が輝く事に精一杯。だから闇に怯えるの。
「だから相田くん、彼らに過ちを気づかせる必要がある。皆を闇に落とすのよ。私は輝く事しかできないからそれは手伝えないけど、貴方ならできる。
「もちろん手伝うよ。見て」
瑠田はそう言って、光になった。眩しすぎて相田は目がくらんだ。しばらくして、まぶたの向こうで眩しさが消えたので目を開けると、瑠田が背後にいた。
「ほんのひとときだけど、私はあなたの翼になるわ。天使の矢からも守ってあげる。行くのよ!案内する!」
「了解!」
小屋は弾け、相田は飛び立った。