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東方酔呼伝  作者: 真暇 日間
後日談
33/41

光り輝く、夜の月

 

 久方ぶりに妹紅と酒を飲み明かした日から幾日かの時が過ぎ、私はまた懐かしい顔と再会していた。

 その相手は、輝夜姫。妹紅との喧嘩の時の言葉から私のことだと思い至ったらしく、こうして新月に程近い夜にこっそりとやってきたらしい。

 話を聞くと永琳も輝夜姫の住む屋敷に居るようだが、今回は飲みには来ないらしい。

 ……少しばかり残念だが、無理に呼びつけることはしない。来たくなったら来て、のんびり飲んでいけばいい。

 霊夢もあまり表には出していないようだが一応歓迎しているようだし、拒否はしないだろう。






 こぽり、と徳利からお酒が溢れ、溢れたお酒がおちょこに溜まる。

 お酒の溜まったおちょこを手に取って、その中身をゆっくりと飲み干した。

「ねえ、次は私もいいかしら?」

「別にいいわよ?」

 おちょこを輝夜に渡し、私はそのおちょこにお酒を注ぎ入れた。

「ありがと」

「別にいいわよこのくらい。お礼をくれるならお賽銭でも入れていきなさい」

 魔理沙に言うみたいに輝夜に言うけれど、輝夜はその言葉を何でもないかのように受け流す。まあ、確かにいつも賽銭賽銭言ってても、実際に入れてもらったお賽銭の使い道はそんなに無いものね。精々人里で野菜かなにかを買う程度だし、それも大した量は買わないものね。

 ……輝夜がその事を知っているとは思えないけど、そのへんは別にいいわ。間違ってないんだし。

 ぐいっとお酒を飲み干した輝夜は、ほっとため息をついて空を見上げる。

 空にはほっそりとした月が浮かび、柔らかな光が降り注ぐ。

「………ケッ」

「空気が悪くなるからやめなさい」

 私がそう言っても、輝夜の愚痴は止まらない。まあ、愚痴りたい気持ちはわからないでも無いし、酔ったら愚痴りたくなるのもわかるけど。

 ……仕方がないし、少しくらい輝夜の愚痴に付き合ってやることにした。

 かなり長い時間外に出れなかったんだろうし、溜め込んでいたものも多いだろう。吐き出せるだけ吐き出させれば、少しは大人しくなるんじゃないかしらね?

 とりあえず今日の空腹を覚悟して、輝夜の持っているおちょこにお酒を注ぎ込む。萃香には悪いけど、瓢箪の酒で空腹をごまかしながら愚痴を聞くことにしよう。萃香は屋根の上で寝っ転がってるんだから、別にいいわよね?

 色々自分をごまかしながら、輝夜の愚痴に付き合う。

 愚痴に付き合っていると、輝夜の月人嫌いがいかに凄いかよくわかる。

 私にはあまりよくわからないけど、月人というのは全体として頭が固いらしい。

 寿命が長く、死ににくくなると、その生の密度は下がるって話を聞いたけど、それは本当のことみたいね。

 鬼のお酒を大杯に注ぎ、私は私でくいっと飲む。

 愚痴は素面で聞く物じゃないし、聞くんだったらこっちもそれなりに酔わなくちゃね。

「……それで永琳がね……」

「……そうなの。大変ね」

「月人が頭ガッチガチで……」

「ふんふん」

「……妹紅が……」

「それで?」

 …………疲れるわね。いつもだったらもうかなり酔っててもおかしくないんだけど……やっぱりあの徳利を使って無いせいかしら?

「それで………ちょっと、聞いてるの?」

「はいはい、聞いてるわよ」

 まったくもう……。






 いつの間にか輝夜姫は酔い潰れて眠ってしまっていた。霊夢も眠そうにうつらうつらとしているが、完全に意識を失っているわけでは無さそうだ。

 私を使っていなかったせいか、霊夢の腹からきゅるきゅると音が聞こえてくる。やはり普通の酒ではあまり腹には溜まらないらしい。

 霊夢は無言で私と小さなこを手に取り、酒を注いですぐに飲み干す。そして、縁側で酔い潰れてしまっている輝夜姫と同じようにぱたりと仰向けに倒れてしまった。

 そこに現れたのは、食材を持ってやって来た七色の魔女ことアリス。季節も考えずに縁側でごろごろと寝ている霊夢と輝夜姫を見て顔をひきつらせた。

 すぐに近くに居た人形達に霊夢と輝夜姫を布団に運ばせ、アリス自身は私と小さなこを持って台所に。

 そして自分が最後に使ってから使われた形跡のない台所を見てため息を一つ。

「……まったくもう………」

 そう呟いてからアリスは料理を始める。胃に優しく、それでいてしっかりと形があるものを選んで作っているあたり、人がいいというか優しいと言うか……。

 まあ、それでこそアリスらしいと言えばその通りなのだろうな。

 ……さて、それでは私は霊夢と輝夜姫の酔いを抜く作業に入ろうか。疲れは抜けないが、それでも効果はあるからな。




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