運命の人
そしてあっという間に学科分けテストの日になった。
昨日の入学式では見かけなかったが、リックは何処にいるんだろうか?
魔力測定の後、俺は着替えて騎士科のテストが行われる学校の裏の森に行った。
ほぼ男子生徒だが、数人の女生徒もいる。
一際目立つのが金髪に明るい緑の目小柄な女生徒だ。
「おい、あれはミルトン子爵家の妖精ゴリラ姫じゃねえ?」
「うわーー本当に可愛いのに、ゴリラなんだよな。求婚撤回15回だろ?」
そんな声が周りから聞こえる。あれが父上が言っていた、妖精ゴリラ姫か。
確かに美しい。特にあの緑の目が。
リックみたいだな、顔も似ているし。
「次、リリアン・ミルトン」
リリアン・ミルトン。。L.M?
もしかしたら、リックの姉かもしれない。あとで話をしてみよう。
騎士科のテストは森の中のコースを一周して帰ってくる。コース中には魔道具の魔獣がいる。本物ではないが、火を吹いたり、突然襲いかかってきたりするので、毎年怪我人も出る。
リックの姉なら身体能力は高そうだが、大丈夫なんだろうか?
そんな事を考えていたら、リリアン嬢がもう戻ってきた。やっぱり棄権したのか?
「リリアン・ミルトン 6分5秒」
テストを待っている生徒達がどよめいた。
このコースは王宮騎士なら5-6分で出てこれるが、騎士科の生徒では10分以上かかる。確か、このコースの最短記録は5分48秒なはずだ。
流石、リックの姉だ。俺も全力で挑まないと。
「次、エドワード・ラフィーノ」
名前が呼ばれて前に出ると、リリアン嬢がこちらをじっと見ている。
「始め!」
俺は森の中に駆け込む。初めは火を吹くトカゲだった。これはトカゲは上に向かっては火を吹けないので飛び越えた。
木が倒れているエリアは下をくぐったり、上に上ったりする、こちらも俺は倒木から倒木へと飛び移って移動した。
最後はライオンに似た魔獣が出てきた。これは飛び越えたりはできないので、渡された模擬剣で首の下のボタンを押すと動きが止まった。
あとは、ゴールまで走るだけだ。
「エドワード・ラフィーノ 5分32秒ーコース最短記録」
その瞬間、俺は多くの生徒に囲まれてしまった。リリアン嬢が遠くに見えたが、嬉しそうに笑っていた。
「ちょっと通してくれ、俺は用事があるんだ」
でもやっと抜け出した時にはリリアン嬢の姿は見えなかった。
次は魔法科のテストだ。
特に魔法科に入るつもりはないが、リリアン嬢かリックに会えるかもしれないと思って来てみた。
「エドワード、コース最短記録おめでとう」リックの声が聞こえて、俺は振り向いた。
「どこ行っていたんだよ、リック」
しかし、そこにいたのはリックではなく、リリアン嬢だった。
「え?あ、すみません。友人かと思って」
「その事なんだけど、エドワード。。。」
「次、リリアン・ミルトン」と言う声が聞こえた。
「あ、ごめんなさい。後でね」
リリアン嬢は試験官の方に向かう。
俺はリリアン嬢の魔法が見たくて、近づいて行った。
リリアン嬢はリックと同じ土魔法を使うようだ。
「ちょっと土埃がすごいので、髪を纏めますね」
リリアン嬢は黒いスカーフをポケットから出して、頭に巻いた。
。。。。あれはリックだ。
だからリリアン嬢が妖精ゴリラ姫って言われるんだ。まああの腕力なら不思議じゃない。
リリアンの土魔法は凄かった。確かに土埃が凄かったが、的に表示された魔力量は150だった。
何が使えない魔法だよ。すごいじゃないか。
試験が終わると、リリアンは俺をみてにっこり笑った。
あの訓練の後に一緒にチョコレートケーキを食べた時のあの笑顔だ。
俺はあの笑顔に一目惚れしたんだな。リックでもリリアンでも関係なく。
俺はリック。。じゃなくて、リリアンの方に行こうとすると、
「次、エドワード・ラフィーノ」と呼ばれてしまった。
「エドワード頑張ってね。終わったら一緒にランチしましょ」とリリアンに言われた。
胸がドキドキする。リックの時も綺麗だったが、リリアンは本当に妖精みたいだった。
「エドワード君、用意はいいか?始め!」
「え?はい」
俺は慌てて魔法を発動させる。
ちらっとリリアンの方を見ると、男子生徒2-3人に話かけられている。
それを見た瞬間、ついかっとなってしまった。そして俺の雷魔法は暴発した。
やっちゃった。。。
「誰かエドワード君を救護室に!!」という声が聞こえる。
そしてぐいっと体が持ち上がる。
俺は結構重いのによく持てるな。
うっすら目を開けると、緑の目が心配そうに俺をみている。
「大丈夫エドワード?」
俺の意識はそこで途絶えた。
気がついたら俺はベットに寝かされていた。
「気がついた?何処か痛いところはない?」
「リック。。。リリアンか。」
「うーーん、どうせならリリーって呼んでほしいな」
「俺はどれぐらい気を失っていたんだ?」
「もうテストは全て終わって、結果も発表されたよ。私もエドワードも騎士科だよ」
「まあ、当然だろうな。あのコースを6分で抜けるのは、現役の騎士だってそういない」
「エドワードに負けちゃったけどね。流石だね」
「リリーだって。。痛!」
起きあがろうとしたら、背中が痛い。
「大丈夫?ポーション貰ったから、見える怪我は全部塗ったけど。。その。。流石にシャツを脱がせるのは」
リリーは真っ赤になっている。何だこの可愛い生き物は。
何だかちょっと意地悪をしたくなった。
「多分、背中も打ったっぽい、でも自分じゃ届かないと思うんだよね」
「え?え?誰か呼んで。。。」
「いやーーそれまで耐えれないかも、リリーにお願いしたいな?弟がいるし、世話をするのは慣れてるんだろう?」
そういうと、俺はシャツを脱いだ。
「え?お兄様と弟と全然ちがう!!」
それはいい意味だよな。
リリーは決心したのか、ポーションを手に持って近づいてくる。
「う。。後ろ向いて」
リリーはペトペト背中を触るが、痛いところとは全然違う。振り向いたら、リリーは目を瞑ってポーションを塗ろうとしてた。
俺はつい、リリーを抱きしめた。
「え?エドワード!ぎゃ、裸!」
「半分着てるから大丈夫。リリー、お願いだ。俺と結婚してくれないか?」
「半分でも全然大丈夫じゃないわよ。え?今なんて言ったの」
「リリー。初めてあった日から好きだった。一目惚れなんだ、俺と結婚してくれ」
「え、初めて会った時ってリックの時じゃないの?」
「そうなんだけど、今わかった。俺はリリーの事が性別とかそんなレベルじゃなくて、全てが好きなんだ」
「だってあなた、ラフィーノ伯爵家の跡取りよね、私の家はしがない子爵家だし、それに私は求婚撤回19回のゴリラ姫よ」
「19回。。。さっき、周りからは15回って聞こえたが」
「家で謹慎させられている時に、私を騎士科に行かせたくないお父様が私の絵姿を配りまくって。更に4回求婚されたのよ。盗賊を叩きのめしたのがバレて、どれもすぐ撤回されたけど」
「じゃあ20回目は俺だな。撤回する気はゼロだけど。求婚だけじゃなくて、今すぐ結婚したい」
俺はリリーの目を見つめて言う。
「リリー、お願い。はいって言って」
リリーはちょっと悩んでから、キリッとした顔になって。
「私は騎士になるのが夢なの、結婚しても騎士になっていいなら」
「じゃあ俺は騎士団長になるから、リリーは副団長な」
リリーは最高の笑顔で返事をしてくれた。
「私の未来の旦那様で騎士団長様宜しくね」
前作を読んでいない方はここまでで。次の話は前作のネタバレになります。




