盗賊と妖精ゴリラ姫
私は馬を走らせながら、空を見上げた。
「まずいわね、思ったより日が暮れるのが早いわ」
王都に着く前の森で日が落ちてしまいそうだ。でもここから王都までは泊まれるような宿屋もない。
夜道だとステラを走らせるには道が安定してないし。無理をしないで、叔母様の家に戻った方がいいのか、それともゆっくりと行くべきか。
そう思った時に前に光が見えた。他の旅人がいるなら一緒に王都に行けるかもしれない。
ゆっくり近づいていくと、なんだか様子がおかしい。
馬車が松明を持った男達に囲まれている様に見える。
私はステラから降りて、木の影に隠れながら近づいて行った。
あれは。。まさか。。盗賊?
馬車の外には拘束された男女が数人いる。旅商人かしらね?
助けなきゃ!でも今は剣も何も武器を持っていない。
そんな事を考えていたら、後ろから誰かに掴まれた。
「動くな、お前はさっき逃げた子供か?」
首にナイフが当てられる。
「こんなに大きかったか?死にたくなかったら動くなよ。お頭!さっき逃げたやつ見つけました」
「そうか縛って連れてこい」
子供が逃げて、助けを呼びに行っているのかな。こんな暗い森でかわいそうに。とりあえず捕まっている人の様子が見たいと思い大人しく捕まってみる。
馬車の近くには女性が2人と男性が2人いた。私を見るとびっくりした顔をしていたが何か言われる前に
「ごめん捕まっちゃった。助けを呼ぶ時間もなかった」と言うと盗賊の頭はニヤッとして、
「じゃあゆっくり戦利品を頂くとするか、お前らその馬車をそのまま持っていくぞ」
さあどうするか。流石に10人相手にこの人たちを守りながら戦うのは。。
うーーん。あ、エドワードが言っていたみたいに土魔法で。。。
私は土魔法で馬車の車輪を土に埋めた。
「何で動かねえんだ?おい、車輪がぬかるみにはまってるぞ!」
盗賊たちは慌てて馬車を押したり、車輪を掘り起こそうとしている
私はその間にこっそり自分と拘束されている人達の綱を引きちぎった。
それを見て4人はびっくりして固まってる。
「大丈夫ですよ、隙を見て静かにここから逃げてください。子供がこの森のどこかにいるんでしょう?」と静かに言うと。
1人の女性が涙を流しながら
「息子が。。。」
「じゃあ探しに行ってあげてください」
「俺たちは残って手助けする。さっきは妻を先に人質に取られて、身動きが取れなかったんだ」
「では武器はありますか?」
「ああ、だが盗賊にとられて、あの鍵付きの箱に入れられた」
あの鍵なら。。いけるかな。
女性達を隠す様に私達は座り、女性達は王都への道に向かった。
盗賊達は埋まった車輪を抜こうと必死だが、私は次々と魔法で車輪を埋めていく。
「もう良い、荷物をこっちの荷台に移すぞ」
それならと、私は荷物を運び出そうとする盗賊の足元に穴を開けた。
荷物を持っている男達は、足元が見えなくてどんどん倒れていく。
「いまだ!」
私は武器が入っている箱の鍵を引きちぎり、中の剣を取り出し、商人の男たちにも渡す。
それに気がついた盗賊の頭は、
「何だ?鍵が壊れていたのか?子供に何ができる」
私はニヤニヤしながら、こっちにやってくる頭に剣を向けた。
落ち着け、これは練習じゃない、実戦よ。
頭が近づいてくる。
「なんだ怖くて動けないのか?ん?お前女。。。」
私は素早く背後に回って、剣の持ち手で背中を叩くと、頭は地面に倒れて動かなくなった。
盗賊の頭が倒され、他の男達は逃げようとするが、私は1人残らず気絶させた。。。。多分気絶してる、力加減がわからなかったので、骨とか折れていないと良いが。
商人の男達は口を開けてこっちを見ていた。
「すげーな坊主。。。」
私達が盗賊達を縛り上げ、盗賊達の荷車に放り込んだ。ちょっとキツかったので重ねて入れたが。。まあ大丈夫だろう。
私は魔法で土に埋まっていた馬車の車輪を掘り出す。
「それは土魔法か?すごいな。そんな風にも使えるんだな」
「友人に教えて貰ったので」
すると王都のほうから、灯りと馬が駆けてくる音がする。
無事に助けを呼べたのね。。。は!見つかるとまた、妖精ゴリラ姫の名前が広まってしまう。
「じゃあ俺はこれで」私はぐいっとフードを絞り髪が出ない様にする。
「え?ちょっと待ってくれ、お礼をしたい」
「大丈夫です。これからは気をつけて!」
私はステラの所に戻り、今きた道を戻って叔母様の家に行き、事情を説明した。叔父様はすぐに数名の騎士と出て行って、数時間して帰ってきた。
「盗賊は王宮騎士団に引き渡してきた。商人の子供が連れてきたのは、先に帰ったラフィーノ騎士団だった。エドワードが荷車に詰めこまれてた盗賊達を見て、リックですよねって大笑いしてたぞ。会えなくて残念だともな」
「リリー、全く。そう言う時はすぐ戻ってきて応援を呼ぶのよ。嫁入り前の令嬢が盗賊一味を制圧とか、ますます妖精ゴリラ姫って呼ばれるじゃない」
「この格好ですし、バレてないと思うんですが」
私は朝になるのを待って、王都へ帰った。
結果としては、思いっきりお父様にバレた。あの商人達はお父様に呼ばれて、私の為のドレスやアクセサリーを運んでいたらしい。家であった時にすごく困惑された。
私はそのせいで、当分叔母様の所に行くのは禁止された。そして次の騎士団の特訓にも参加できなかった。
エドワードに会えなかったの残念だが、それより今の問題はどうやってお父様に騎士科に行くことを許して貰うかだ。
私が入学するまで2ヶ月と言う所で、お兄様が学園の休暇中に紹介したい人がいるとお父様とお母様に話していた。
お兄様は私と違って、剣術より本を読んでいたいタイプだ。堅物お兄様が結婚したいと言うなんて、何があったんだろうか?
数日後にやってきたのは、何と侯爵ご夫妻と令嬢だった。出迎えたお父様の顔色がやや悪い。お兄様。。わざと言わなかったわね。
親同士の話が終わり、みんなで金の小麦カフェのケーキでお茶をする事になった。
「ええ?リサ様は騎士科なんですか?」
「そうなの、魔法より剣術の方が得意でね。魔法科との合同練習の時に私達は出会ったのよ。リリアンさんも騎士科に入るのよね、すごく強いって聞いているわよ」
「私はそれを希望しているのですが、父が騎士科に行く様な女性は。。」
「リリアン、何を言っているんだ。私は騎士科に行く女性は芯があって素晴らしいと言ったんだ」
お兄様とリサ様は私に向かって目配せをしている。そうね、今がチャンスね。
「お父様、それでは私もリサ様のように素晴らしい女性になれる様に、騎士科に進みたいと思います」
お父様は反対したいが、侯爵様の前ではいえず、
「わかった、テストを突破できたら、お前が行きたい学科に行けばいい」
「ありがとうございます、お父様」
お茶会の後、私はお兄様に抱きついた。
「お兄様ありがとうございます」
「リリー!力を加減しろ。肋骨が折れる」
私はお兄様を離して、リサ様にも抱きついた。
「あら本当にいい腕力ね。リリアンちゃんが騎士科に入るのが楽しみだわ」
「リリーって呼んでください。リサお義姉様。本当にありがとうございます。受かるといいんですが」
「リリーちゃんは1人で盗賊全員捕まえたんでしょ?見たかったわー」
え?この事は、子爵家で揉み消したはずなのに。
お兄様を見るが、俺じゃないと首を振っている。
「私には色々な情報源があるのよ」とウインクされた。
リサ義姉様、ちょっと怖い。
それより、私は学園で騎士科に行ける事になったんだ。何が何でも学科分けテストに受かるぞ。
その時ふとエドワードの顔が浮かんだ。テストの時に会えるかな?
次からエドワード視線になります。




