模擬戦
両家の騎士団が揃った所でエリック叔父様が前に立った。
騒ついていた場が一気に静まる。
「今日はよく集まってくれた。ここ近年、魔獣の被害が両領地でも増えてきている。王宮騎士団も全ての領地に迅速に向かう事はできない、領民の安全は君達にかかっている。そして時には領地の垣根を超えて、協力しあう事も必要だ。今回は共に鍛錬し、両騎士団の絆を深めていくという目的もある。本日は初日でもあるので、模擬戦をトーナメント方式で行う。優勝者には賞品も用意してあるぞ」
賞品という言葉に団員達は大盛り上がりだ。
トーナメントとはいえ、友好試合なので。剣の先を潰した練習用の剣で行い、相手の剣を叩き落とすか、急所に剣を当てた時点で勝ちとなる。
対戦相手はくじ引きでランダムに決められた、私の初戦の相手はかなり大柄なラフィーノ騎士団の騎士だった。
「おやおや、俺の相手はこんなヒョロヒョロのガキか。そんな細くて剣を持てるのか?」
彼の仲間の騎士達も私を見て笑っている。
まあいつもの事だ。
私は剣をヒョイと持ち上げると、肩慣らしで剣を片手で振り回した。
「そんなに重いとは思いませんね」
イリウス騎士団のみんなは私の腕力に慣れているので、特には驚かない。
エリック叔父様はニヤッと笑ってから
「では、両者位置について、始め!」
相手の騎士は
「1撃で終了させてやる」と私に向かって走ってきた。
私は特に動かない。
ラフィーノ騎士団の騎士達が騒いでいるのが聞こえる。
「おい、お前。そいつは手加減なんかしない、早く逃げろ」と誰かが言ったのが聞こえた。
私は相手騎士が剣を振り上げた瞬間、相手の懐に入り込んで、騎士の首に剣先を当てた。
「勝負あり、勝者リック」と叔父様が言う。
相手の騎士もラフィーノ騎士団の他の騎士達も何が起こったかわかっていない様だ。
「いや、今のはおかしい。お前は魔法でも使ったのか?」
「いえ、私は土魔法しか使えませんし、高速移動魔法なんてないですよ」
「馬鹿にして悪かったな、お前はすごいな」と相手の騎士が言ってくれた。
私は順当に勝ち進んで、決勝ではラフィーノ騎士団の若い騎士と対戦する事になった。背は高くがっしりしているが、髭も生えてないし学生の様にも見える。
エリック叔父様は
「これは面白い事になったな、あいつも来年から学園に入学するはずだ」と私に言った。
え?まさかの同い歳。そう考えると老けてるわね彼。
私達は剣を構える。
今までの相手は攻撃を交わしてから、隙を狙って急所に剣を当てたが。この人は。。。
しょうがない、私から動くか。
私は勢いよく、彼に向かって行った。
彼も私に向かって走ってくる。剣を交えるが、全く隙がない。
私は流石に騎士ほどの持久力はないので、早めに決着をつけなくては。
ちょっと焦って、思いっきり剣を彼に振り下ろしてしまった。
「リリ。。。リック、それはちょっと」エリック叔父様の焦った声が聞こえる。
彼はなんとか自分の剣で私の剣をとめた。。次の瞬間、両方の剣が折れた。
「は!!なんで折れんだよこれ」
「ご!!ごめんなさい。盛り上がって力込めすぎました」
私は彼に怪我をさせてしまったかもしれないと思ってワタワタしていると、彼は折れた剣を私の首に当てて、
「はい、俺の勝ち」
あ、まだ試合中だった。
「勝者エドワード!」エリック叔父様の声は聞こえた。
エドワードと呼ばれた青年は、大笑いしながら、私の肩をポンポン叩いた。
「お前、そんなに細いのに馬鹿力で面白いな、俺の名前はエドワード、1週間よろしくな」
「俺はリックだ、宜しく」
エリック叔父様が私達に近づいてきた。
「エドワード、すまんな俺の甥っ子は見かけによらず、ゴリラ並みの腕力があるんだ。怪我はなかったか?」
「エドワード副団長の甥っ子ですか。将来楽しみですね、俺は大丈夫です」
「で。。。賞品なんだが、未成年のお前らが決勝に行くと思ってなくて、酒にしちゃったんだ。準決勝の勝者にあげてもいいか?お前達は。。。。ジュースとケーキだな」
「叔父上、私達はお酒は飲めないですが、ケーキって子供じゃないんだから」
「リックはチョコレートケーキ大好きじゃないか。エドワードお前はどうだ?」
「。。。。。大好きです」
「じゃあ決まりだな。メリンダがリックの為に王都のカフェからチョコレートケーキを取り寄せたんだよ」
「「え!金の小麦カフェの!」」
と私とエドワードが揃って言う。
「エドワードもあそこのカフェのケーキ好きなのか?」
「ああ、母上のお気に入りでよく一緒に行くんだ」
「じゃあ、今日の訓練はこれで終わりだ。エドワード、リック、そこのテーブルで待ってろ。今ケーキを持ってきてやる」
「うーーーーーーん、やっぱり美味しい」
私はここのケーキが大好きだが、お父様にお肌のために甘いものは控えろと言われてて買って貰えなかったのですごく嬉しい。
エドワードはちょっとずつ、綺麗な所作で食べている。
多分貴族よね。
「エドワードは来年王立学園に入るのか?」
「ああそのつもりだ。騎士科を目指している、だが俺は魔法騎士になりたいんだ」
「エドワードは魔法が使えるのか?」
「ああ、雷魔法だ。だがコントロールが上手くいかなくてな、心が乱れると暴発してしまうんだ」
「そっか、カッコよくていいな。俺は土魔法だから攻撃には使えないからな、いつも土を耕してくれとか言われるだけだ」
「そうか?土魔法は野営の時とか、魔獣を穴に落とす時に使えると聞いたぞ。一緒に練習しよう」
「そうなのか!じゃあ一生懸命に練習しなきゃな」
私は嬉しくて、エドワードににっこり笑いかけてしまった。
エドワードは私の方を見て固まっていたが、慌ててケーキを食べ始めた。
あーあ、顔についちゃった。
「何だよ、エドワード。チョコレートが頬についてるぞ」
私はついハンカチで頬を拭いてしまった。
あ。。これは男の子ぽくない。
「あ、すまん。弟にいつもやってて」
「いや、こちらこそ。ハンカチを汚してしまった」
「気にすんな、姉さんから持たされているやつだから」
「リックは兄弟はいっぱいいるんだな」
「4人兄妹だ、上から兄、姉、俺で弟だ」
本当は私がその姉なんだけど。
「俺は一人っ子だから。兄弟がいっぱいいるのは羨ましいな」
「そうか?弟は可愛いけど、兄貴はうるさいぞ」
エドワードと私は色んな事を話した。エドワードは家の事は話したがらなかったので、無理には聞かなかった。
そうして、1週間があっと言う間に過ぎた。
エドワードと離れるのは寂しかったが、父から家に帰ってこいと言う手紙が大量に届いたので帰らなくてはいけない。
「リックは王都の方だろう?送って行こうか?」
「いや、俺は馬で来てるし、叔母上とする事があるからその後帰るよ」
「そうか、またなリック」
私は叔母上に手伝ってもらって、リリーに戻った。
「お、リックに慣れてきた所だから、その格好は新鮮だな。ちゃんと令嬢に見えるぞ」
「エリック叔父様、私は令嬢ですが」
「昨日、エドワードを締め上げていた時は違ったぞ。お前ら随分仲良くなってたな」
「ええ、楽しい1週間でした」
「エドワードはまだ婚約者いないぞ。嫁に貰って貰えばいいじゃないか」
「エドワードはどうせ良いところの貴族の子息でしょ?そんな所に妖精ゴリラ令嬢はお呼びじゃないわよ、絶対騎士の仕事とかさせて貰えないだろうし」
「お似合いだと思うんだどな」
「あら、もうこんな時間。暗い中馬を走らせたくないから、もう行くわ。メリンダ叔母様、エリック叔父様、お世話になりました」
「また春に訓練をするから、その時おいで。エドワードも呼んでおくから」
「はーい、ではまた」私はステラに乗って帰り道を急いだ。
エマやエバンが好きなチョコレートケーキはここから来ています。
私も美味しいケーキ食べたいな。




