子爵家の妖精ゴリラ姫
ラフィーノ伯爵家のお話の最後はエマとエバンの父、エドワードと母リリーの話です。
少し悲しい話ですが、最後はハッピーエンドです。
ミルトン子爵家には妖精姫と言われる令嬢がいる。
ふわふわの金髪に明るい緑の目、リリアン・ミルトン子爵令嬢は御伽話から出てきた様な女の子だった。
16歳で社交会デビューをした時は、年頃の子息がいる貴族から求婚の申し込みが殺到したので、すぐに婚約がまとまると思われていたが、リリアンとお見合いをした子息はすぐに求婚を撤回する。
その数が両手では足りなくなった時にリリアンには新しい渾名がついた。
ミルトン子爵家の妖精ゴリラ姫。
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「リリー!!!どこにいるんだ!」
お父様の怒鳴り声が階下から聞こえる、また求婚撤回の手紙が来たかな?
もう15人目だし、ゴリラ姫なんて渾名がついたから、そろそろ求婚自体なくなると思うんだけど。
今回の彼は侯爵家の次男だったし、お父様も期待してたから余計に怒ってるわね。
うん、逃げよう。
私はお兄様のお古のパンツとシャツを着て、フード付きのマントで髪の毛を隠す。そして着替えを入れたバックを持つ。
私の部屋が2階なのでバルコニーの柱を使って庭園に降り、厩舎に向かう。
厩舎で働くハンスが私がくるのに気がつき、手招きをしている。
「お嬢様、そろそろだと思いましたので、ステラに鞍をつけておきましたよ」
「ハンス、おはよう。よくわかったわね」
「お見合いの次の日に、手紙を持った使者が来た時点で大体わかりますね。20人目ですか?」
「失礼ね15人目よ」
「10人過ぎたらもうあまり変わらない気がしますからね。もうこの国では結婚相手はいないのでは?」
「私は私の見た目だけじゃなくて、本当の私を知った上で求婚してくれる人と結婚したいの。後、騎士になる事を許してくれる人!」
「貴族相手じゃ無理じゃないですか?」
「まあ、とりあえずの目標は騎士になる事だし、子供は欲しいけどまだそんな歳でもないしね」
「あ、そろそろ旦那様がお嬢様が部屋にいないのに気がついて、こちらに来る頃ですかね」
「そうね、じゃあ私は今日から1週間叔母様の所に行くわね。ありがとうハンス」
私はお父様の横を馬で駆け抜ける。
「お父様、叔母様の所に1週間遊びに行ってきますねー」
「待て、リリー、お前は侯爵子息に何をしたんだ?」
「お茶を一緒に飲んでいただけですよ。彼がお茶をこぼしたメイドを叩こうとしたので、つい力を入れてカップを置いたら、カップが砕けてテーブルにヒビが入ってしまい、素敵なティーカップだったのに申し訳ない事をしました。侯爵子息はそれに驚いて逃げてしまっただけです」
「なんでお茶会でそんな事になるんだ?どうしてそんなに力がついてしまったんだ?」
「お父様が自分の身ぐらい、自分で守れる様にならないといけないって言ったんですよね」
「しかし限度ってものがあるだろう」
「私。。。決めたことは全力できっちりやりたい性格なので。では、お父様ご機嫌よう」
私は馬を走らせ、王都から東に馬で2時間離れた場所にあるイリウス伯爵家の領地館にやってきた。
「メリンダ叔母様、おはようございます」
「あら。リリー、やっと来たのね。もうそろそろ訓練が始まるわよ。今日は午後からの訓練だから間に合って良かったわね」
メリンダ叔母様は私にお母様の妹で、私が赤ちゃんの時から可愛がってくれて、私の1番の理解者でもある。数年前にエリック・イリウス伯爵と結婚して伯爵夫人になった。エリック叔父様は王宮騎士団も副団長で、私の憧れの人でもある。
「お父様に求婚撤回の事で捕まってしまって」
「ああ、18回目の」
「15回です、叔母様」
「それより、早くしないと間に合わないわよ。今日は初日だから力を見るために、トーナメント制で模擬戦をするんですって。ほら、かつら被って」
私は黒の短髪のかつらをかぶり、イリウス伯爵家騎士団の騎士服を着て、簡易的な鎧をつけ剣を持つ。
憧れの騎士服を着られて、私は嬉しくてたまらない。1番小さいサイズでもブカブカだが。
「叔母様ありがとうございます。行ってきますね」
「あの子、結婚は当分無理そうね」と叔母様が呟いたが、そんな声は聞こえなかった。
この国では17歳になる年にキルギス国立学園に入学できる。
学園には一般教養科、騎士科、魔法科、魔道具科、ポーション科の5学科がある。
私は勿論、騎士科に入りたい。
私も少しなら土魔法は使えるが。。他の魔法に比べると攻撃って感じじゃないのよね。畑を耕すのに最適なので、領地の農家さんには大好評だけど。
来年は私も17歳。やっと来年には学園で騎士のトレーニングを受けれる。
その為には学科分けテストで騎士科に入らなくてはいけない。
障害物コースを走りタイムを競うが、剣を持ちながら走り、行手を阻む魔道具の魔獣を倒していかなくてはならない。
毎年怪我人も多く出るので、よっぽど騎士科に行きたい生徒以外は棄権するほどだ。
私は試験に向けて鍛錬をしたいがお父様がいる子爵家ではする事はできない。お父様に結婚をしないで騎士を目指していると言ったら、おそらくひっくり返る。
それをメリンダ叔母様に相談した所、領地で騎士団の訓練がある時に参加してはどうかと去年から誘ってもらっている。
今回はエリック叔父様はの休暇を利用して、隣のラフィーノ伯爵家領地とイリウス伯爵家領地の騎士団の合同訓練を1週間行う事になっている。
メリンダ叔母様は折角のお休みなのにどこにも行けないと怒っていたが、私はこんなチャンスは滅多にないと大興奮だ。
そして昨日、ラフィーノ伯爵家の騎士団が到着して、敷地内の宿舎で寝泊まりをしている。
騎士団には女性騎士もいるが。私の容姿はやや目立つので男装をして訓練に参加している。金髪がきちんとカツラに隠れている事を確認する。目の色はどうにもならないが、珍しいが全くない色でもないので大丈夫だろう。
領地館から出て、イリウス騎士団の騎士達に混じって並ぶ。
「お、リック久しぶりだな。また王都から来たのか?」
「ああ、さっきついたんだよ」
「お前も物好きだな、こんなきつい訓練にわざわざ参加したいなんて」
「俺は学園で騎士科に入りたいんだよ、エリック叔父上の訓練が受けれるなんて最高だ」
エバンの話で母上は無茶苦茶強かったと書いたので、それに沿って書いたらゴリラ姫になってしまいました。




