表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/55

#04 Opus-1

毎日15時から20時の間に投稿予定

 わたしたちが今いるところはちょうど四○五フリーウェイからサンタモニカ・フリーウェイに乗り換えるためのジャンクションだ。前にも後ろにも、左にも車で後戻りはできない。右側は壁。そして恐らく、化け物は前方から来る。

 

 前方から何人も、車を乗り捨てたのであろう人たちが逃げて逆流してくる。

 

「どうする利人。わたし達も降りて逃げるか?」

 

「いや、ここで逃げたところでこの道を出ないとまともに身動きとれないぞ。それに、車列を抜けても後続に轢かれるかもしれん」

 

「それもそうだが……なら車の中で隠れてじっとしてるか?」

 

「いや、この場でフリーウェイから降りる」

 

「は?」

 

 そう言うと利人はサングラスを外し、その場でエンジンをふかしはじめた。

 

「お前、何する気だ」

 

「首気を付けろ」

 

 そう言うなり利人は車を斜め前方に発進させた。

 

「おい、そっちは壁――!」

 

「喋るな。舌を噛む!」

 

 車はそのままフリーウェイの壁に激突。壁をぶち破り、鼻から地面に突っ込んだ。衝撃でエアバッグが作動し、わたし達の顔面を覆う。

 

 地面と熱烈なキスをした車は幸い真っ逆さまにはならず、最終的に後輪をガタンといわせ、正常な姿勢で着地をキメた。

 

「Huh……成功……」

 

「ったく……無茶苦茶しやがる……寿命が十年は縮んだよ。――で、こっからどうするんだ」

 

「ちゃんと走れればいいんだが……」

 

 そう言いながら利人はクラッチやアクセルを弄っているが、エンジンはプスンプスンと言うだけで、さっきまでの勇ましい音は出さなくなってしまった。

 

「エンジンがイカレちまった。残念だが、こいつとはここでおさらばだ」

 

「ってことは、徒歩か」

 

「イエス・マム」

 

Great(泣けるぜ)……」

 

 車には利人が先ほど使ったものの他にもう一挺、ショットガンをトランクに積載していた。それと自分たちの荷物を担ぎ、相棒マスタングとのお別れ準備は整った。

 

「さってと、ダウンタウンLAまでは十二マイル、歩いて五時間弱ってところか」

 

 と、利人がグーグルマップでここからの経路を確認しながら言う。

 

「声に出して言うな。萎える」

 

「五時間はあくまで普通に歩いた場合だ。この状況だと、それ以上かかるだろうな」

 

 化け物に見つからず十二マイルの道のりを歩く……か。コイツは相当ハードだ。

 

「取り敢えず、少し行ったところにスーパーがある。そこで食糧なんかを調達しよう」

 

「そうだな。――ライター失くしちまった。悪いが火持ってないか?」


「災難だな。――ほらよ」


「サンクス」

 

 新しい煙草に火を付け、それからわたしたちはピコ大通りを歩き、スーパーに到着した。道中は逃げる人や車こそいたが幸い近くに化け物はおらず、割とスムーズに移動することが出来た。

 

 ――この調子でダウンタウンまで行けたらいいんだが……まあ、そう簡単にはいかないだろうな。

 

「さて、中はどうなってるかな」

 

 そう呟きつつわたしはスーパーのドアを開け、中に入る。

 

 中はすでに化け物に襲われた後なのか、物が散乱していた。ところどころに血痕や肉塊もある。化け物の気配は無い。

 

「うわッ、こりゃヒデえな」

 

 と、利人。

 

「さっさと必要なモンとって出よう」

 

 狙い目は菓子パンのようなすぐに食べられるもの。缶詰なんかベストだ。それからドリンク。

 

「ヘイ、京、これなんかどうだ?」


 そう言って利人がなにかを投げ渡してきた。


「って、シュールストレミングじゃねえか。捨てろ捨てろ」

 

 バリケードゾーンでテロでもやる気か、コイツは。というかなんでこんな物が置いてあるんだ。

 

 それと、これは全くの別件なのだが、わたしは先ほどからあることが気になっている。それは車で逃げているときからチラチラと頭の中をよぎっていた、あるワードだ。

 

 そのワードとは、〈共通スキル・テーブル〉というもの。これがどういうわけかずっと脳内をチラついている。

 

 ――なんなんだ、さっきから。

 

 ちょうど状況も落ち着いているし、わたしはそのワードを強く意識してみた。すると、なんということだろうか。目の前に様々なアイコンがあるウィンドウが表示された。上部には共通スキルと書かれ、右上に保有ポイントという欄がある。

 

「うわッ、なんだこりゃ」

 

 わたしは突然の出来事に思わず声を上げて驚いた。

 

「どうした、何があった?」


 その声を聞きつけた利人が駆け寄ってくる。

 

「ああ、その、なんて言うか……変なこと聞くかもだけど、お前、頭ん中であるワードがチラついてないか?」

 

「あるワード?」


「その……〈共通スキル〉、とか」

 

「……実は、ずっとチラついてた。京もなのか? 俺の頭が変になったのかと思ってたが」

 

「そのワードを強く意識してみたか? まだならちょっとやってみろ」

 

「ああ。――うわ、なんだコイツ!」

 

「なにか見えたか?」

 

「ウィンドウが一つ……共通スキルって書いてある」

 

 利人が見ているのはたぶん、さっきわたしが見たのと同じだろう。ただ、利人が見ているであろうものはわたしには見えない。どうやらその人にしか見えないようだ。

 

 それからわたしは、ウィンドウにある計四十個のアイコンに注目してみた。アイコンにはそれぞれ固有の名前がついており、十個ずつA級、B級、C級、D級に分類されている。わたしは試しに、A級に分類されたアイコンの一つ、〈管理〉に注目してみた。すると、それの説明と思しきサブウィンドウが表示される。

 

〈管理:自身のステータスを閲覧することができる 取得コスト:1〉

 

 ――自身のステータスを閲覧、だって?

 

 ステータスと言われてイメージするのは、様々なゲームでお馴染みのHPだとか攻撃力だとか、そういうやつのことだ。これを取得すると自分のそういうのが見えるというのか?

 

 〈管理〉の取得コストは1と説明されている。恐らくこれを取得するためのポイントが右上に表示されているもので、それが1必要ということだろう。なんとも初見でも理解しやすい、優れたインタフェースだ。

 

 右上の欄には現在、10と表示されている。すなわちわたしは10ポイント保有しているということだ。わたしは試しに、その〈管理〉とやらを取得してみた。取得はアイコンに注目し、取得の意志を心の中で表明するとできた。右上のポイントが10から9に減少し、取得した共通スキルのアイコンが発光する。

 

 〈管理〉を取得すると、今度は〈ステータス・ウィンドウ〉というワードが頭をチラつくようになった。わたしはそれに意識を向ける。と、今度はステータスと上部に記されたまったく別のウィンドウが表示された。

お読みいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたなら、↓の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけるとありがたいです。


またブックマークも宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ