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#05 屍賛の地下霊廟-2

毎日15時から20時の間に投稿予定

 敵はノクトグールが二体とヴェルムグールが一体。最初にわたし達を見つけたヴェルムグールが突出し、後ろからノクトグールが続く。

 

「行け、オーブ」

 

 オーブを懸架するハードポイントからオーブを切り離す。オーブ、自律飛行開始。舞い上がり、戦闘のヴェルムグール目掛けて魔法〈突風弾〉を発射。

 

 風弾の上位魔法、突風弾。風弾から威力や弾速、射程などが純粋に強化されたそれは、グール相手ならば掠っただけで相手の肉を抉り、肉体に大ダメージを与えることができる。

 

「クソ、いい反射神経してやがる」

 

 どれだけ威力が強化されようと、しかし当たらなければ意味が無い。ヴェルムグールはオーブの射撃と同時に急停止、バックステップで間一髪回避。

 

「ノクトグールがいないぞ」

 

 と前衛の利人が言う。

 

「暗闇に紛れたんだ。気を付けろ。どこから来るか分からんぞ」

 

 と言ったそばから殺気。一○時の方向。ノクトグールの鋭利な爪が迫る。

 

 魔法〈風障壁〉発動。風エネルギーのバリアでツールの爪をはじき返す。

 

「逃がすか――ッ」

 

 攻撃に失敗し、再び闇に紛れようとするノクトグールへオーブの射撃。命中、グールの左腕が吹き飛んだ。が、グールにとってその程度は致命傷ではない。

 

 ――浅い。あの程度ならすぐに回復されちまうか。

 

 わたしを襲ったノクトグールは完全に闇に隠れてしまった。恐らく腕の回復が終わり次第、また攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

 ノクトグールだけでも厄介だが、この場にはさらにヴェルムグールがいる。ヴェルムグールはノクトグールのように闇に隠れるなどということはしない。が、わたし達の攻撃をのらりくらりと躱しては、わたし達がノクトグールの対応に意識を向けた途端に反撃してくる。

 

 ヴェルムグールの主な攻撃手段は毒や酸のブレス。ダメージ自体は大したことないが、ノクトグールに集中しているときにやられるとストレスが溜まる。

 

 ――しまった!

 

 あまりのウザさからつい意識をヴェルムグールに集中したそのときだった。背後にノクトグールの気配。オーブを操り威嚇射撃をしたが、間に合わなかった。

 

「京――ッ」

 

 ノクトグールの爪がわたしの背中を引っ掻いた。背中に熱い感触。直後に利人が飛び込み、背後のグールに向けて剣を突き立てる。が、無情にも刃が壁に辺り跳ね返る音しかしなかった。

 

 さらにわたしが被弾でよろけたところにヴェルムグールが突っ込んできた。飛びかかり、地面に押し倒される。が、これは好機だ。

 

 ――こうなってはもう逃げられまい!

 

 わたしは別にオーブからでなくとも魔法を撃つことができる。それに気付かなかったオマエの負けだ。

 

 自分の眼前で術式を構築。魔法〈突風弾〉発射。ヴェルムグールの顔面へゼロ距離射撃。瞬時にヴェルムグールの頭部が跡形も無く吹き飛び、わたしを拘束する力が消えた。

 

「どけろ、気持ち悪ぃ」

 

 脚に力を込め、ヴェルムグールの死骸を蹴り飛ばし、起き上がって体勢を立て直す。

 

「京、大丈夫か」

 

「ああ。奴は」

 

「さっき一体は仕留めた。が、まだあと一体残ってる」

 

 どうやら、わたしがヴェルムグールを殺ったタイミングで利人もノクトグールを殺れていたようだ。

 

「さて、どこから来るかな」

 

 背中合わせの状態で、二人で三六○度全周囲を見張る。ヴェルムグールという邪魔者がいなくなった今だからこそとれる戦法だ。

 

 そのとき、真上に殺気を感じた。

 

「直上!」

 

 咄嗟にわたしが叫ぶ。

 

「任せろ」

 

 天井の暗闇からノクトグールが顔を出す。と同時に利人が剣を真上に突き上げた。鋭利な爪を突き出すグールの腕と利人の剣がすれ違う。

 

「サヨナラ、引きこもり野郎」

 

 利人の剣がノクトグールの眉間に突き刺さった。そのままグールは力なく落下し、地面に倒れて動作を停止した。

 

「ふう……一件落着」

 

「本当に大丈夫なのか? 怪我したようだが」

 

「もう回復は済んだよ。大佐から貰った魔法様様だ。それに、そのお陰か新スキルも手に入ったしな」

 

 標準スキル〈痛覚軽減Ⅰ〉、グールから受けた傷が完治したと同時に取得した。効果は名前の通り痛みの軽減だ。ダメージを負った際の痛みを和らげる。

 

「そうか、それならいいんだが。――しかし、もうグール三体程度ではレベルが上がらなくなったか」

 

「当然だろう。どれだけレベルが上がっても必要EXPが同じじゃ環境が壊れる。でも、獲得EXPは補正入ってるみたいだぜ」

 

「補正? なんで分かる」

 

「ステータス・ウィンドウの〈レベル〉欄からEXPバーが見れる。そこをさらに調べると、獲得したEXPの内訳が確認できるんだ」

 

「おお、本当だ。――フムン。確かに、さっき得たのに補正が入っているな」

 

 内訳を見ると、ご丁寧に何パーセント補正されているかが分かる。これが不可知空洞の効果という訳か。EXP補正はおおよそ四から五パーセントほど。決して桁外れに大きくはないが、ありがたい効果だ。

 

「さ、コインを拾って先に進もう」

 

 コインのドロップは一体あたり十枚から十五枚ほどだった。それらを回収すると、この部屋にもうめぼしいものは無い。

 

 それから先に進み、何度かグールと交戦したが、いずれも大して苦戦することはなかった。そうして遂にわたし達は回廊の果てにある最後の部屋に到着した。

 

「お、こいつはなんだ? 金庫のようだが」

 

 利人が部屋の隅にとあるものを発見した。

 

「こういう所にはよく宝箱が設置されてるもんだが、これがそうなのか?」

 

 と呟きながら、利人がその物体を観察する。

 

 利人が見つけたそれは金属製の黒いキューブ型コンテナで、扉には銀色の取っ手が付いていた。鍵穴やダイアル式ロックのようなものは見当たらない。

 

「これ、宝箱だってよ。ただ――」

 

 と、わたしがその物体をスキルで調べた結果を伝える。が、

 

「マジかよ。さてどんなお宝があるんだ?」

 

「ああ待て。宝箱に擬態した魔物の可能性もある。まだ触るな」

 

 と言って宝箱を開けようとする利人を制止する。


「マジかよ。危ねえな」

 

「しかも厄介なことに、擬態中はそいつのステータスが見れん。開けるときは臨戦態勢でやらにゃならん」


 わたしはオーブを飛ばし、照準を宝箱に合わせる。利人も剣を抜き、いつでも斬りかかることができる。


「開けるぞ」


 宝箱、ご開帳。


「……アタリのようだな」


 と、利人。


 開けた途端に擬態が融けて魔物が襲いかかってくる、という事態にはならなかった。中には箱は偏に箱であり、中には金貨やアイテムがぎっしりと詰まっている。

お読みいただきありがとうございます。


面白いと思っていただけたなら、↓の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけるとありがたいです。


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