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#06 狂王-1

毎日15時から20時の間に投稿予定

 わたし達の乗る車を横転させた魔物、その姿は明らかに他の魔物と雰囲気が違う。その佇まいからは圧倒的なプレッシャーを感じる。

 

 身長は十フィート以上。真っ黒い鎧を身につけ、ボロボロのマントを優雅にたなびかせ、その内側には苦痛に歪んだ無数の人の顔が見える。肌は青白く干からび、一部は骨が露出している。それから右手には黒い霧を纏った巨大な剣を握っていた。

 

 スキル〈情報分析専門家〉発動。この魔物のステータス・ウィンドウを見る。

 

 〈名前:狂える王モルヴァス〉

 

 〈種族:グール・ロード〉

 

 〈レベル:8〉

 

 他スキル、魔法多数

 

 他の魔物には固有名称が無かったのだが、この魔物はそれがある。初めてオーダーズ・バザールを訪れたときに商人から聞いていたのだが、有名個体は同じ種族、同じレベルの無名個体よりも様々な能力が強化されているそうだ。

 

 ――とんでもない奴と出会ってしまった。

 

 グール・ロード――グール系統の頂点に君臨する種族、それだけでもヤバいのに有名個体、レベルもわたし達より高いときた。

 

「利人、どうする……逃げるか?」

 

「できればそうしたいが……」

 

 今のわたし達のレベルは4――道中魔物を倒してくる間にレベルアップした――。まだ魔法もスキルも少なく、そのレベルも低いのが多い。

 

 ――正直、勝てるビジョンが思い浮かばない。

 

「イチ、二のサンであっちにダッシュするぞ」

 

 と、利人が目線で逃げる先を指して言う。

 

「了解」

 

「イチ、二……サン! 走れ!」

 

 利人の合図でわたし達は走り出した。全速力で。

 

 後ろからモルヴァスが咆哮をあげて追いかけてくるのが分かる。

 

「振り返るな、走れ!」

 

 前方に州軍の姿が見える。あそこまで辿り着くことができればなんとか……なるか? 少なくとも奴のターゲットは増えるから、わたし達が狙われる可能性は低くなるだろう。州兵にタゲをなすりつけて逃げるか。

 

 だが、わたしのその考えはあっけなく崩壊した。州兵がわたし達と後ろから追いかけてくるモルヴァスに気付き、モルヴァスに対して射撃を開始した。が、その瞬間モルヴァスが大ジャンプ。州兵がいた辺りに着地し、手に持った剣で州兵を一掃してしまった。

 

「マジかよ、コイツ――!」

 

 わたし達は慌ててブレーキ。反転して再び走り出す。が、剣の素振りによる風圧で吹き飛ばされてしまった。

 

 モルヴァスが迫る。

 

 ――逃げるのはもう無理……か。

 

 仮にもう一度逃げたしたとしても、あの大ジャンプで行く先に先回りされてしまうだろう。となれば、コイツを倒すか、最低限行動不能にしなければならない。

 

 ――やるしか、ないか。

 

 利人と目で合図しあい、行動を開始する。利人が奴の付近で攻撃を避けながらちまちま剣で攻撃し、わたしが遠距離から魔法をぶっ放す。

 

 利人は〈予見眼Ⅳ〉を持っている。それと〈緊急回避Ⅲ〉で頑張ればなんとかいけるか。後はわたしの魔法がどれだけ通用するか。

 

 モルヴァスは想定通り利人に狙いを定めた。足元をちょろちょろと動き回る利人に向かって剣を振ったり蹴りを繰り出したりしている。が、スキルの効果も相まってなかなか当たらない。

 

 ――今だ。

 

 この隙にわたしは杖を構え、〈風弾〉の術式を構築。道中での戦闘やレベルアップで魔法レベルはⅤまで上昇した。これが通用してくれるといいが。

 

 〈風弾〉発射。三発。それら全てがモルヴァスの上半身に吸い込まれるように飛翔し、命中。胸部のLPが若干減少した。利人の攻撃で両脚のLPも削られている。が、まだまだこれでは倒れない。

 

 間髪入れずに第二射、第三射と撃ち込んでいく。

 

「おっと危ない」

 

 利人の回避が少し遅れ、モルヴァスの剣が命中しそうになるのをわたしは見逃さなかった。振り下ろされる剣へ〈一刃の風〉を発射。剣を命中の衝撃で弾く。こちらもここに来るまでにⅢになった。威力やノックバック性能などが向上している。

 

「助かった、サンクス」

 

「どういたしまして」

 

 そのときだった。モルヴァスの行動に変化が現れた。ジャンプして利人から距離を取り、剣を天にかざした。

 

「何をする気だ」

 

 モルヴァスが、それまでの咆哮とは違う、何か呪文らしきものを唱えだした。

 

 ――何する気か知らんが、なんかヤバそうだ。

 

 〈風弾〉五連射。モルヴァスの妨害を図る。が、モルヴァスは被弾を気にする素振りもなく詠唱を続けた。そして天にかざした剣が一瞬、発光した。

 

「これは……クソ、面倒なことを」

 

 あれは奴の持つスキルの一つ、〈徴兵〉だった。その名の通り、付近にいるグールを自分の兵として操るスキル。周辺にいたグールがワラワラと集まってくる。

 

「グール共の狙いはわたしか」

 

 遠距離からの魔法攻撃が鬱陶しくなったか。集まったグールは利人には一切目もくれず、わたしに向かってきた。

 

 狙い変更。魔法で集うグールを殺していく。あのスキルはあくまで周辺のグールを操るだけだ。辺りにグールがいなくなれば無意味になる。

 

 そう思っていたのだが、想像以上に数が多かった。

 

 ――こんなにいたのかよ。

 

 この辺はバリケードゾーンに近い。それだけ人が多く、犠牲者も多い。だが、想像以上だ。

 

「MP間に合ってくれよ……」

 

 グール戦では〈一刃の風〉を主に使用した。グールを完全に真っ二つにでき、更にその背後にいたグールにも命中してダメージを与えられるから。うまくやれば一発でダブルキルも狙える。

 

 通常のグールならそれで問題なかった。のだが、グールに混じって上位種のリーパーやハンターも何体か混じっている。そいつらは以前よりレベルアップなどで戦いやすくなったが、まだ余裕で勝てる相手ではない。それが複数同時に相手では、なかなかにキツい。

 

 ――一旦退くか。

 

 魔法〈疾風翔〉発動。足元に爆発的な風を発生させて一気に高く跳躍する魔法。落下時の衝撃もほとんど無いという優れものだ。これでグールの群れから脱出、州兵たちがいた方へと跳ぶ。


 こちらへ跳んだのにはちゃんとワケがある。というのが――

 

「あったあった、良かった」

 

 州兵たちの装備の一つ、四○ミリグレネードランチャーだ。これに魔力を込めてぶっ放せば効率よくグールを倒せるだろう。

 

 グールが皆こちらに向かってくる。

 

 ――これでも食らえ。

 

 グレネードに魔力を付与し、発射。群れの中心付近に着弾し、炸裂。四体ほどやったか。

 

 ――反撃の時間だ。

お読みいただきありがとうございます。


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