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#03 Discommunicators-2

毎日15時から20時の間に投稿予定

 ――なにも見えないし聞こえない!

 

 まさか閃光手榴弾を持っていて、それを出してくるとは……想定外だった。

 

 こうなってしまっては、わたしにできることはただ痛みに耐えることだけだった。閃光で気が緩んだところへの攻撃で地面に倒れ、そこにハンターが容赦なく打撃を繰り出してくる。

 

 全身を満遍なく殴られ、蹴られている。

 

 ――速く回復してくれ……。

 

 そのときだった。機械音と共にログが脳内に流れてくる。

 

 〈スキル獲得:〈打撃耐性Ⅰ〉〈応急視力Ⅰ〉〈応急聴力Ⅰ〉〉

 

 〈打撃耐性〉の効果は読んで字の如くだった。ハンターからもたらされる苦痛が少し軽減された。それから二つのスキルで、完全ではないが視聴覚が使えるようになった。

 

 どうにかハンターの動きを捉えたときには既に顔面目掛けて拳が迫っていた。わたしはそれを左腕でガード……までは良かった。拳が防がれた途端、もう片方の拳がわたしのみぞおちに勢いよく食い込んだ。

 

「な――ッ」

 

 声すらも出せないほどの苦痛に襲われた。そのまま吹き飛ばされ、近くの建物のガラス窓に突っ込む。

 

 ――最初より威力もスピードも上昇している。気のせいじゃない。

 

 今の一撃を食らったためか〈打撃耐性〉がⅡにレベルアップした。効果が強化されたことで痛みが和らぎ、どうにか動けるようになる。

 

「あの野郎、人をサンドバッグだと思って」

 

 不幸中の幸いというわけか、建物に突っ込んだことでハンターとの距離ができたしスキルもレベルアップした。今のうちに物陰に隠れて体勢を立て直す。

 

「LP、残り半分か……」

 

 人体図は全部位が黄色に変わっていた。あそこで新スキルを獲得していなかったら、そのまま殴り殺されていたかもしれない。

 

「そして奴の戦闘中のパワーアップ……原因はたぶんコイツだな」

 

 〈情報分析専門家〉では相手の保有している魔法やスキルなども確認できる。グール・ハンターが持つスキルの中で、わたしは一つのスキルに目を付けた。

 

 〈ラッシュ〉――攻撃し相手にダメージを与え続けるほど自分の身体能力が向上し、攻撃が途切れると効果が切れる。これのレベルⅢを奴は持っていた。閃光弾でわたしが抵抗できなくなったとき、あれはまさに、このスキルを遺憾なく発揮するのに最適な場面だった。そして今、奴の攻撃は途切れた。つまりこのスキルの効果は振出しに戻っている。

 

 とはいえ素の身体能力でも遠距離なら風弾を余裕でぶっちぎることができるので、奴の間合いで戦わねばならないことに変わりはない。MPが膨大にあれば数の暴力で地道に削れるが、今のわたしのMPではそうはいかないので仕方ない。

 

 ――〈ラッシュ〉を発動させないよう攻撃をいなしながら、こちらの攻撃をぶち込む。

 

 足音から、今奴は壁を挟んだ反対側にいる。わたしを探しているのだ。きっと、トドメを刺すために。そして奴はもうすぐ、こちらの空間と繋がるドアにさしかかろうとしている。入ってきたら角で出待ちして先制攻撃、通り過ぎるか引き返したら背後から奇襲できる。

 

 ――反撃の時間だ。

 

 グール・ハンターが入ってきた。わたしが歓迎の用意をしていたとも知らずに。

 

「ささやかなお返しだ。受取りやがれ!」

 

 至近距離からの風弾。ハンターは避けきれずもろに脇腹に食らった。衝撃で後ろに吹き飛ばされる。そこへ追撃。第二射、第三射とどんどん撃ち込んでいく。

 

 ――やっぱりこれくらいじゃ死なないか。しぶとい野郎め。

 

 ノックバックからのハメ殺しとはならず、脱出して距離を詰めてくる。が、こちらは〈瞬間回避〉のお陰で少し遅く近くされているのだ。〈ラッシュ〉のバフが無い状態なら見切れる。

 

 先ほどの戦闘で分かったのだが、接近戦でこの長い杖は邪魔だ。ということで杖とは一旦おさらば。近くに放り投げ、ハンターの攻撃を受ける。

 

 正面から殴りかかってくるのを身体を捻って躱し、至近距離で風弾。相手はそれを回復しつつさらに攻撃を繰り出してくるので、それをまたいなして風弾をぶち込む。

 

 ――良い調子だ。こちらにダメージが通らないのでラッシュも発動していない。

 

 どうして魔法主体と決めたはずのわたしがゴリゴリの接近戦をしているのかについては、今は考えないようにしよう。

 

 〈スキル獲得:〈格闘Ⅰ〉〉

 

 なんと、まさかスキルまで手に入るとは。これのお陰かさっきまでよりも楽に相手の動きについて行けるようになった。

 

 それから、どうやら肉体の一部、例えば拳に魔力を集中させることでその部分が様々強化されることも判明した。これによってわたしはもはや魔法では無く、魔力をみなぎらせた打撃でハンターとやり合っていた(ますます魔法から遠ざかったではないか)。

 

 魔力で強化した手刀でハンターの右腕を付け根から切断する。ハンターの左拳の反撃を脇腹に食らったが、そこは〈打撃耐性〉で耐える。千切った右腕で顔面を殴りつけ、怯んだ隙に猛攻撃。

 ――今度はテメェがサンドバッグだ!

 

 攻撃の途中で〈格闘〉がⅡに昇格し、さらに威力と攻撃スピードが増す。とうとうハンターが堪えきれず、建物の外、最初わたしがいた場所まで吹き飛ばされてしまった。

 

 ――逃がすか!

 

 トドメをさすべく追いかけると、そこには利人によって首を刎ねられたハンターの死骸が転がっていた。

 

 ――向こうも片付いたんだな。

 

「こっちが片付いたんで援護に向かったら急にコイツが飛んできたので斬ったけど、余計だったか?」

 

「いや。ありがとう」

 

「それよりも君、めっちゃ血だらけだ。どこか怪我したのか?」

 

 と利人に言われて初めて気が付いた。全身、特に手がひどくハンターの血で汚れている。

 

 そりゃそうだ。素手で腕を千切ったりしていたんだから。

 

「いや、これ全部返り血……」

 

「ええ……どんな戦い方したんだよ。なんか〈格闘〉ってスキル増えてるし」

 

「最初は魔法で倒そうと思ったんだが、すばしっこくて当たらないから直接殴った」

 

「杖買った意味……」

 

「細かいことは気にするな。――それより、どっかに手洗えるとこないか?」

 

「あっちの方に公衆トイレあったから、そこで洗うといい」

 

「サンクス」

 

 この戦いの結果、わたしと利人はレベルが3に上がった。これによってわたしは〈緊急回避〉〈魔法入門〉がⅠからⅡに、〈打撃耐性〉がⅡからⅢにレベルアップした。魔法も新たに〈一刃の風Ⅰ〉を獲得した。〈風弾〉は戦闘中にⅡからⅢにレベルアップしていた。

 

 一方で利人は〈緊急回避〉〈魔法入門〉がわたしと同様にレベルアップ。新たなスキル〈剣術入門〉〈予見眼〉を獲得し、レベルアップで双方レベルⅡに。魔法の新規獲得やレベルアップは無し。

お読みいただきありがとうございます。


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