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キゲン


 何度観てもどうにもならない。

 私は…ただ俯瞰して見ているだけ。

 介入すれば皆を不幸にしてしまう。

 何度も抗おうとするが、結果は変わらず

 その度…衝撃を受けて目を覚ます。


 そして、そんな夢から目が覚める度

 自分が頬を濡らしている事に気付く。


 いつもの様に朝食を二人で取る。

 テレビを付け、特に話す事もなく

 テレビから流れる音だけが響き渡る。

 そんな朝を過ごしていると

 玄関の方から扉を開けて入ってくる人物。


 ねえ、今日着て行く服…どっちがいいかな?

 

 そう話して二種類の服装を見せてくる唯。


 姉さんは、どっちを着ても魅力的だから

 好きな方を着て行けばいいよ。


 なんで、決められないから聞いてるのに

 そう言う言い方するかな…。


 ちなみに、麗ちゃんは…どっちがいいと思う?

 

 見慣れた姉弟の痴話話が始まったと

 高を括っていると声を掛けられる。

 背面にいる唯の方向に首を振ると

 持っている服を見て元に戻る。


 いつもメイド服を見てるから

 パンツの方でいいんじゃない…と

 興味なさそうに答える。


 麗ちゃんも、テンみたいな事を言うのね…。

 

 その言葉が麗の逆鱗に触れたのか

 突然、立ち上がり唯の方を向き直す。

 

 ちゃんと決めてあげてもいいけど

 その服を着て行くんでしようね。


 強気な態度で唯の前に歩いて行く麗に

 そっ…ねえ。麗ちゃんが真剣に考えて

 決めてくれるなら、それを着て行くわ。

 完全に弱腰になってしまう。


 なら、さっき言った通り…

 パンツの服装の方にしなさい。


 用途は聞かないけど…スカートの方は

 ヒール系の靴で合わせるつもりでしよう。

 それで、靴擦れでもしたら大変だからね。


 とは言え、パンツの方では普段から

 履き慣れている靴を履いて行きなさい。


 絶対に新品の靴なんて履くんじゃないわよ!


 念を押して席に戻ろうとする麗だが

 何かを思い出した様に向き直し


 貴女って… ── の大統領と関係あったりする?


 関係って、私のお父さん…大統領秘書よ。


 麗ちゃんの出自に負けず劣らずなんですよ!

 魅力的なウインクと共にポーズを取る唯。

 それを目の当たりにした麗は驚愕したのか

 一言も話さず席に戻り、食事を再開する。


 姉さんも食べて行くなら作るけど…どうする?

 

 有り難いけど遠慮しておくわ。

 履き慣れた靴を確認しておきたいから。

 そう話し去って行くのを見送り食事を再開する。



 いらっしゃいませ。御用件をお伺いします。

 

 私… Oceanth Freight Dam の ── と言いますが

 ─── 社長にお取り次ぎをお願い致します。


 少々お待ちください。

 ちなみに、本日はお約束でいらっしゃいますか?


 実は、数時間前に直接連絡を取りまして

 お伺いしたのですが…連絡は来てないですか?

 不安そうに尋ねる男性。


 そうでしたか。一度確認してみますので

 あちらの席でお待ち頂けますか。

 そう手で指し示して誘導する。

 わかりました…宜しくお願いします。

 そう話すと誘導された場所に移動する。


 ねぇ、あの人…かっこよくない?

 言うと思った。これから、確認するから

 大人しくしててくれない。

 でも、あの会社の名前…最近聞いた気が…。

 はい、わかりました。その様にお伝えします。

 ちょっと席離すから、ここお願いね。

 ご案内するなら私が行きますよ!

 違うわよ。エレベーターで向かう先を

 伝えに行くだけよ!残念でした。

 そっか…なら、いいや。

 席を離れて男性に伝え終えると受付まで

 二人で話ながら歩いて来ると " ありがとう "

 と話して男性が二人から離れて行く矢先


 思い出した! 柄の悪い人達の会社だ。


 受付で待っていた片割れが唐突に話す。


 ちょっと、いきなり何を言ってるの!

 あの方に聞こえたら…どうするの。


 受付に戻ってきた女性が必死に伝えるが

 それも叶わず…男性は言葉が聞こえたのか

 引き換えしてくると二人の前で止まる。


 あの…この子が大変失礼な事を……

 そう話し頭を淡々と下げる女性。

 

 気にしなくて大丈夫ですよ。

 柄の悪いのは本当ですから頭を上げて下さい。


 そう優しく話す言葉を聞いて頭を上げる。


 では、何故…私達の元に戻って来たのですか?


 受付の内側で座り、粗相をした片割れが

 何か言うとするのを感じ取り

 視線を送り…圧をかけて大人しくさせる。


 実は、私も…彼らの事が気になってまして。

 本来…出向かなければならない私が挨拶に伺えず

 部下に任せてしまって大丈夫だったのかと。

 そして、今の話し方から察するに

 何か粗相をしてしまいましたか?

 

 先程言った通り、柄の悪い人達ではありましたが

 慣れない礼儀に対応しようとしていましたよ。

 少なくても私達の前ではそうでしたが

 社長の前でも同じだったかは解らないので

 気になるなら直接聞くのがいいかと。


 頭を下げていた女性が話そうとする前に

 粗相をした片割れが先に口を開く。

 

 そうですか。不器用ながらも彼らなりに

 対応しようとしていたなら良かった。

 では、私は社長の所に向かいますので

 これで失礼しますね。


 何事もなく、この場を去って行った男性に

 安堵を見せる女性は受付の椅子に座り直す。


 話の解る相手で良かったですよね。


 それ…あんたが言う訳?

 次、やったら許さないから。


 解ってますよ。次からは気を付けま~す。


 教えて貰ったエレベーターに乗り

 ── 階の釦を押して向かう男性。


 そして、到着すると扉が開く。


 やぁ…久しぶり。 と、言っても数ヶ月前に

 会った訳だけど…部下からは、今回

 此方に来ないと聞いていたから会えて嬉しいよ。


 そう話し、エレベーターの中にいる男性を

 歓迎する。


 社長自らのお出迎え…痛み入ります。


 恐縮する相手に立ち話もなんだから

 ついて来てもらえるかなと誘導する。

 

 男は、大人しく社長の後に続いて着いて行くが

 いくつもの部屋を通り過ぎて非常階段の扉を開け

 階段を登って行く。


 社長…何処に行くつもりですか?


 あれ、君を連れていった事がなかったかな。

 まぁ…悪くない場所だから気に入って貰えると

 嬉しいかな。


 そう話し二階層程登ると行き止まりの壁に

 辿り着く。そして、そこにある扉を開ける。

 

 すると、そこには…眺めのいい

 屋上テラスが広がっていた。


 だが、二人の登場に気付いた社員達が

 一斉に此方を見ている事に違和感(・・・)を感じるが

 黙って社長の出方を伺う。


 今日も人が多いね。

 皆…気に入ってくれている様で何よりだ。


 そう話し社員達の視線を構いもせず

 空いている席を探す為歩き出す。


 あの席が空いているみたいだから

 先に席を確保しておいてくれるかな。

 私は、飲み物を持ってくるから…


 そんな気を遣わなくて大丈夫ですよ。


 いや、私が飲みたいから付き合って貰えるかな。


 最初から思っていたのか社長の手の平で

 転がされている気分になる男だが

 社長の言葉に了承すると先に席に向かう。


 社長は、自販機も設置してある中

 カウンターに行き注文をする。

 

 珈琲を二つもらえるかな。


 珈琲二つ入りました!と、カウンターの定員が

 他の従業員に声をかける。


 また、社内メールで一斉送信されてますよ。

 今度は何をして秘書から逃げてるんですか?

 

 別に逃げた訳ではないよ。

 思い通りならなくなると毎回此だから困る。

 でも、君達からしたら願ったり叶ったりかな。


 そうですね…魅力的な内容ではありますね。

 

 一番最初に社長の居場所を教えた者に

 金一封を贈呈する。但し、(ひしょ)の目で

 直接確認が出来なかった場合は無効とする。

 そして、此は社長には分からない仕様な為

 社長に対する反逆行為にはならない。

 

 私の前では読み上げるなんて度胸があるね。

 

 失礼しました…参加しないのでつい。

 でも、この金一封って…

 何処から出るのでしよう。

 

 そりゃ…秘書のポケットマネーだよね。

 会社のお金から出てたら皆…困るでしよう!


 だから、確認が出来ることが前提なんですね。


 ちなみに、君は何故参加しないのかな?


 別に…困ってないですし。此で得たとして

 気持ち良くお金を使える気がしないので…。


 でも此…本当に通報相手が誰か

 社長は知らないんですか?


 そんな訳ないでしよう!少なからず

 秘書は…本当にそう思ってるみたいだけどね。


 なら、これまでの通報者を全て

 知ってる訳ですよね。良かった…

 私、やらなくて正解だったみたい。


 別に、通報したから何かある訳でもないよ。


 ちなみに、今の内緒だから!

 他言無用で宜しく。

 そろそろ私も行くとするかな…

 私が、ここにいると罰の悪い人もいるようだし。


 そう話すと、タイミング良く

 飲み物が運ばれて来る。


 カウンターにある機械に社員証を翳すと

 珈琲を受け取り、その場から離れて行く。


 ねぇ…随分、楽しそうにしてたけど

 何の話してたの?


 秘書さんの一斉送信の内容についてだけど。

 なんか罰の悪い人がいるとか最後言ってたけど…


 へぇ…そうなんだ。誰の事言ってたんだろうね…


 そう話すとカウンターから離れて行く従業員。


 

 

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