世界
秘書は大統領の言葉を信じたのか脇に
お盆を差してマグカップの取っ手に手を掛け
同時に皿も回収する。
その際…一度、大統領の様子を確認すると
未だ、椅子の背凭れに頭を置き
天井を見上げていた。
" その方がいいよ。時に潔さも大事だからね "
秘書の行動を見ていなかった筈の
大統領が話し掛ける。
" その態度で見透かす様に話すの
やめてもらえませんか "
" 態度はどうあれ、君を称賛してるんだよ "
顔を秘書の方に向け笑顔を見せるが
大統領に対して険しい表情をする。
" 私に言いたいことがあるのは解ったが
今は、私より…あっちを優先すべきでは "
" でないと…今以上に厄介事が増えると思うがね "
そう話すと偽者が去っていった扉に
視線を送り忠告する大統領。
" はあ…。同性に、この様な勘違いをされるのは
不愉快極まりないですね。 急ぎ訂正を "
部屋を出ようとする秘書に
" 彼女達の言葉に乗るのも一興だと思うけどね "
忠告を聞き入れ行動しようとした矢先
ふざけた事を言われ、足を止める。
そして、大統領の方を向き
" 無言の圧 " を掛け退出する。
" やっぱりVIPになると部屋も違うよね "
広間に到着した麗達は部屋の広さと
外の絶景に魅力されていた。
" 一度は…こう言う所に泊まってみたいよね。
そう思うでしよう。ねぇ…千紗都 "
思った事をありのまま伝え尋ねた麗だが…
" う……ん。そうだね……泊まってみたいよね "
返事をするが歯切れの悪そうな千紗都。
" もしかして千紗都…
こういう所に泊まった事があるの "
麗は千紗都に近づき、両手を千紗都の肩に掛け
前後に振る様に揺さぶると千紗都は
下を噛まない様に " あり~ま~す~ " と話す。
" 教官…自白しました。聞きましたか "
遅れて来た教官に供述の確認をする麗。
" あぁ…。 聞いてはいたが…麗こそ
栗花落以上に泊まった事があるんじゃないのか "
" そりゃ…小さい頃はあるかも知れないですが
大人になってからでは話が違いますよ "
未だ、千紗都を解放はしないが
揺さぶる事をやめる。
" で、いつ頃…似た様な部屋に泊まったのかな "
問い詰める麗に対して教官の方を見て
助けを求める千紗都。
だが、千紗都の視線に気付き
教官の方を向き圧をかける麗。
麗の姿を見た教官は、麗の圧から般若の姿が
見える錯覚を覚え苦笑いで場を誤魔化す。
" これで貴女を助ける人はいなくなったわ。
さあ…大人しく観念なさい "
逃げ場がなくなった千紗都は渋々
" 国家公務員採用試験 " の合格祝いに。
そう話す千紗都に、心なしか物悲しさを感じるが
自分の好奇心に抑える事が出来ない麗は
" で、その人とはどうなった訳 "
" どうもこうも、今の私が答えでしよう "
" そう…。それで、貴女は歪んでしまったのね "
" でも、安心して。 私は、その歪んだ貴女を
ちゃんと受け入れてあげるから "
" あの~、歪んだって…どういうこと "
"大丈夫。品のない発言も理解してあげるから "
麗は、淡々と千紗都の言葉に返答するも
" 千紗都の想い " とは裏腹な発言に言葉を失う。
" しかし、秘書の姿を見せないな "
" こんなに騒いで姿を見せないとは
本当に、栗花落の言う通りなのか "
そう2人に問い掛ける教官。
" やっぱり、教官もそう思…… "
教官の言葉に千紗都が返答するも
途中で言葉が途切れる。
" お待たせして申し訳ございません "
" こちらで大統領がお待ちです "
秘書は、自分の立つ場所の側の扉を開き招くが
秘書の言葉に三人は、互いの顔を見返す。
" どうしましたか。 大統領がお待ちに
なっている事がそんなに不思議ですか "
" いや。先程、部屋に招き入れてくれた大統領は
そのまま外に出て行かれたので "
" なるほど。では、貴女方の目で部屋にいる
人物を確認するれば疑問が晴れるかと "
" 私は、飲み物を用意してから参りますので "
平然とする秘書の対応に三人は
招かれた部屋に足を踏み入れる。
" いらっしゃい。よく来てくれたね "
" 三人とは…さっき振りだね "
" 私のイリュージョンは…どうだったかな "
" 気に入って貰えたのなら嬉しい限りだ "
と、話す大統領の毒気に当てられる。
しかし、将軍は…辟易するも対面に座る。
" 二人も、立ち尽くしていないで座らないか "
教官の言葉に立ち尽くし、思考が止まっていた
二人も席に付こうと動き出すと
" 二人は、私の話よりも
部屋の作りに興味がありそうだね "
" 特別に、自由に散策をして構わないよ "
" あと、これはないと思うが
余り埃を立てないのであれば
ベッドに飛び込む事くらいは許可しよう "
" 度が過ぎると、注意するから気付け給え "
そう話す大統領に会釈して部屋を出る二人。
" こうすれば、言葉を選ばずに済むだろう "
" 御気遣いありがとうございます "
そう話すと言う事は、先程の大統領は
" 偽者 " なんですね。何故、あのような発言を…
" 偽者か…。 何を感じて偽者と決めつける "
" もし、ここにいるから...偽者だと言うのなら
それは安易だと思わないか "
" 確かにそうですね。 ですが、私達も
この場を調査等した上で決定してる訳ですから
その様な抜け道を見過ごす訳がないんですよ "
" なるほど。 でも、それは君が直接
確認した訳ではなく聞いた話ではないのかな "
それは…
" そこまでにしたらどうですか "
" 無意味な問答をした所で解決しませんよ "
" 先程から私が質問しても逸らかしてますので "
話しに割って入ると、用意して来た飲み物を
大統領の対面に座る将軍の前に置く。
そして、散策する二人の分を将軍の両側に置くと
大統領の席から一人分席を離した所に着席する。
" 距離を取って座る必要はなかったのでは "
" そんな事より…いい加減白状したらどうですか "
そう話す秘書と将軍が向ける
視線が痛く、堪えかねた大統領は
" 仕方がない。 出来る限りの事を
教えるから、そんな目で見ないでくれ "
大統領の言葉に、二人は微笑みかける。
" まず、あれは偽者で間違いないけど
現状…敵ではないよ "
" 将軍すらも欺ける力量
是非とも影武者として欲しいものだね "
" 私は感心して言ってるだけだから
そんな顔をしないでくれるかな "
そして、これから二人にとって重要な事を話すが
その際の無礼については許し給えよ。
" あの偽者と将軍は…既に接点がある様だし
秘書の場合…裏にいる人物と既に接触している "
そう話しながら順々に指を差す。
つまり、要約すると…
二人とも " 知り合い " と言う事だ 。
大統領の言葉に、二人は仰天する。
" まあ、無理ないだろうが…こちらとしては
この事を公にするつもりはないがどうするかね "
" そうですね。 その様にして頂けたら幸いです "
" なら、その様に取り計らうとしようか "
とは言え、将軍は…秘書とは違い
心当たりがある様な顔をしているね。
" 私は、将軍の慎重さと正確さを買っているが
その期待を裏切る様な事はしてくれるなよ "
返事をする様に一礼をする将軍。
" これが、教えられる事の全てだが
将軍…質問をしてもいいかな "
" 何でしようか大統領。 何なりと "
未だに、将軍にとっての
" 世界 " は…変わっていないのかね。
" こちらとしては、いつでも大歓迎なんだが "
そうですね。 その言葉は、とても嬉しいですが
私の " 世界 " は、未だ変わる事はありません。
" まさか、再びこうして声を掛けてもらえるとは
私も捨てたもんじゃないですね "
一度は、面を食らった様子を見せるが
笑みを浮かべる。
" そんな可笑しい事を言ったかね "
" 言っていますよ。 降りる時は散々
苦手だと駄々を捏ねていたじゃないですか "
" そうでしたか。 そんな相手に声を掛け続ける
理由も未だ変わりないのですか "
私の意思は変わらない。
今も昔も、私の側にいる者から
関わる全ての幸せの為に




