接触 -2-
" それは、私を馬鹿にしているのですか "
" そんな訳はないだろう。只の確認だよ "
そんな物言いをする大統領に
" 貴方が本物の大統領で間違いありません "
そう自信を持って話す秘書に…
" そう言い切る根拠を教えてくれないか "
" 普段から私が率先してする行動には
口を挟みませんから貴方は "
" もっと…言い方があると思うんだが
例えば、君を信用しているからとか "
" まさに、それこそが貴方が
本物である証拠です "
待ってましたと言わんばかりに
大統領に詰め寄る。
" 行動は尊重してくれますが
減らず口を叩く所…本物で間違いありません "
" 私が大統領だと言うことを忘れてない "
自分の立場を解らせる為に話し掛けるが
秘書は聞く耳を持たず、席を外した偽者と
思われる人物の触れたマグカップを
回収しようとするが……
" そんなことしても、きっと無駄だよ "
呆れる様に秘書の行動に助言をする。
" 私が何をしようとしているか解るのですか "
" 解るよ。そのマグカップを
調べさせようとしてるんでしよう "
椅子にもたれ掛かりダルそうに話す。
" 解っているなら…何故、止めるのですか "
その質問に大統領は、秘書を見ながら
だって、それ… " 私の指紋 " が出るはずだから
話を聞きながら、マグカップに
手を掛けようとした秘書の手が止まる。
" どういう事ですか。 それでは、貴方が… "
" いや~、世界は広いね "
" 世間で知られている
情報が全てではないと言うことだ "
" こんな事が出来るなら
情報操作もお手の物だね "
事の重要性を理解してないのか
椅子の背凭れに頭を置き平然と話す。
" あれ…誰も出てこないけど
部屋を間違えたかな私達 "
" そんな筈はないだろう。SPの人に
ちゃんと確認してからきたんだから "
" なら、あの美人の秘書さんと
お取り込み中とか… "
" 千紗都…その思考どうにかならない。
きっと、今出て… "
すると、扉を開こうとする
音が聞こえ静かになる。
" いらっしゃい。良く来てくれたね "
扉が開き迎え入れてくれるのは大統領だった。
" おっ、お招き頂きありがとうございます "
動揺する千紗都を余所に平然と挨拶をする麗。
" 君も来てくれて嬉しいよ…将軍 "
2人の後ろに立つ女性に声を掛ける大統領。
" お招き頂きありがとうございます。
そして、その呼び方…どうにかなりませんか "
そう話す言葉に笑って誤魔化す大統領。
" さぁ、中に入って。秘書に
準備させてる途中だけど "
意気揚々と中に入って行く2人とは別に
扉の敷居の前で立ち止まる将軍。
" そう言えば、先程の空港では声を掛けて
頂いたにも関わらず無碍にしてしまい
申し訳ありませんでした "と話す将軍。
" 空港…? 君とは、話しなどしてないだろう。
君は、列から離れ私の視線に気付き
会釈をしただけだろう "
" それとも、何かね。
私を試して逮捕するつもりかな "
" 失礼しました。 職業柄、護衛対象との
齟齬が合ってはならないので念の為 "
" まぁ、仕事熱心なのは構わないが…
今は数少ない友人として接してくれないか "
" 貴方が、それを望むなら仰せのままに "
将軍の言葉に笑みを溢す大統領。すると…
" 早速だが、頼みがあるんだが聞いてくれるか "
" 解りました。何でしようか "
" これから、フロントに忘れた物を
取りに行くから戸締まりを頼めるかな "
" 急ぎでしたら私が取ってきますが
その様子だと…ここは、貴方の言葉通りに
従うのが良さそうですね "
理解した将軍に " ありがとう " と話すと
エレベーターに向かう大統領。
そんな姿を見送ると、大統領の願い通り
扉を閉めて戸締まりをして中に入って行く。
" これから、エレベーターに乗り込む "
すると、 " 了解 " との声のみ聞こえると
エレベーターが到着する。
エレベーターは、大統領のいる階層から下の
階層に二ヶ所止まった後…一階に到着する。
それを確認していたSPは
エレベーターの前に立ち扉が開くのを待つ。
扉が開くと、乗っていた人と目が合い
軽く会釈をすると去って行こうとする。
そして、エレベーター中に目を向けると
大統領と秘書・自分が話した三人の姿がない。
不思議に思ったSPは
降りて来た人に声を掛ける。
" すいません。ちょっとお尋ねしたいのですが
お時間の方…少し宜しいですか "
突然、声を掛けられ驚くが
" はい…なんでしようか " と話す。
" エレベーターに乗った際
この五人の誰かを見ませんでしたか "
と、写真を見せて確認する。
" いや、見てませんけど乗った際
これが落ちてました " と、カードキーを渡す。
" 良ければ、代わりにフロントに
渡して置いてもらえませんか "
カードキーを渡される際に言われて
" 解りました " と答える。
" それでは… " 軽く会釈して去ろうとする人と
別れフロントに向かう。
そして、フロントにいた
支配人にカードキーを渡す。
" 先程、大統領にお貸ししたマスターキー
確かにお預かりした。無事に戻って何よりです "
そう話し会釈する支配人に、確認するSP。
" ちなみに、これがエレベーターの中に
落ちてる事はあり得るか "
" 少なからず大統領達が戻ってこなかった事を
考えますと、大統領達が部屋に入った後に
侵入して持ち出す以外…考えられせんね "
そう答える支配人に
" なら… ──階と──階に泊まってる人
もしくは、外に繋がる出入口はあるか "
" 各階層には、一階に降りられる
緊急用の非常口はありますが
外部に繋がる出入口はありません "
" そして、両階層の宿泊者は
これから宿泊する予定はありますが
現在、宿泊中の方は存在しません "
その言葉に思考を巡らせ答えるを模索する。
黙りこくるSPを見て支配人は
" お言葉ですが…一番可能性として高いのは
そのエレベーターに乗って降りて来た方かと "
そう言われたSPは、支配人に背を向け
自分が話した人を探す為…回りを見渡す。
すると、出入口を抜けてた所に
黒塗りの車が入ってくるのが目に映る。
それを横目で見ながら辺りを探していると
話した人物を見つける。が、先程の黒塗り車に
乗る為身体を屈めて乗り込む所だった。
そして、その姿を見ていると " 確かに "
乗る間際…こちらを見て笑みを浮かべていた。
すると、黒塗りの車は何事もなかった様に
走り去って行く。
" あの黒塗りの車は、ホテルで手配した車か "
そう訊ねるSPに
" あの車は、此方で手配したものでは
ありません。 当ホテルでは、あの様な
ハイヤーの手配も承っていますが
その様な要望は滅多に承らないですから "
" そうか。ありがとう…助かった"
と話し去って行く。
" お嬢様、気分が良くないと存じます "
" それは、誰の所為だと思ってる訳 "
" それは…お嬢様の所為だと思いますが "
" …そもそも、面白い事したくないかって
言うから話しに乗ったのに
危険な事しかなかったじゃない "
" …でも俺は、前もって今回の内容を伝え
聞いた上で話に乗った訳だから
君が悪いと思うんだよね "
" それに、面白い事するのに危険がないと
面白くないと思うんだけど…どう思う "
" 確かに、それは一理あるけど "
" てか、正直に言えばいいじゃん "
" 役回りが納得いかなかったって "
" だって…それを言ったら…… "
そうだね。俺は…君が "じゃんけん" で
" 決めたい " と言うから譲歩したんだけどね。
" 本当……あんたって…最低よね。
少しは華を持たせる事…出来ない訳 "
" 華……ですか。今回の内容の花形を
譲った訳ですが…物足りないと言う事かな "
" とりあえず上手くいったから良かったじゃん "
" 途中、バレそうになったけど "
" そうね… 事前に確認して正解だったわ。
しかも、警官になってるなんて "
" 知らないのは意外だったけど
ちなみに、ジンも知らないと思うよ "
" あんた…また、ジンに黙ってやった訳 "
" これでいいだよ。アイツは何でも
背負い込むから…特に、この件は知らない方が "
" へぇ…。アンタでもジンを気にかけるのね。
私は、てっきり憎んでるのかと思ってたけど "
" まあ…今は、その事はいいじゃん "
" それより、飯は…何を食べに行く "
" ご飯…? 奢り…?そうよね…絶対そうよね?
うーーん。何にしようかな…悩むな "
" ちなみに、今日使った物は
コレに入れて戻して置いて "
助手席に置いていたアタッシュケースを渡す。
" はいはい。ちゃんと返却しますよ~ "と
使った道具をアタッシュケースに
仕舞うと助手席に投げる。
" 飯だけどさあ…俺に任せてくれない "
" 上手い料理と酒は保証するから "
" ちなみに、明日は予定なかったよね "
" 明日は、自由だからいいけど
そう聞かれると、ちょっと不安だわ… "
" まあ…悪いようにはしないから安心してよ "
そんな雑談をしながら車を走らせて行く。




