接触
大統領が乗った車が走り出す。
すると、反対側から乗車した秘書が
" 乗車前にSPと何を話していたんですか "
と探りを入れる。
そうだね。簡単に言えば…
" 異文化交流 "の準備を少しね。
" その様な事でしたら、私に言って頂ければ
対応に当たりますので今後は自分で
するのではなく話して頂きたく思います "
大統領は、苦笑いをするが
" 善処しよう "と素直に聞き入れる。
素直に聞き入れる大統領の態度に
不信感を抱く秘書は続け様に…
もしかして、異文化交流の相手が
" 女性 "だから自分で自発的に
SPに言伝てを頼んだ訳ではないですよね。
そう訊ねる秘書に、素っ気ない態度を取る。
大統領の態度に呆れながら…
いいですか。他国に来たとは言え
貴方は国の頭なんですよ。流言飛語が立ち
信用を失う様な事があれば大変なんですから。
そう釘を刺す秘書に対して
" いいじゃないか。そんな、流言飛語を信じて
信用出来ないのなら他の人がやればいい "
" 流言飛語 " そんな言葉に流されていては
私達の望む世は…いつに為るのだろうね。
そう話し窓の外を仰ぎ見る大統領。
大統領の言葉に思惑を巡らせ眺めていると
とは言え、裏で悪さするヤツもいるだろうし
" 火のない所に煙は立たぬ" と言うからね。
一概に言えないのが難しい所だ 。
眺めていると突然、振り向き話しかける。
" では、貴方様は…そちら側に為らない事を
願っております。そして、今でも大変なのに
これ以上の面倒事は御免を蒙りたいです "
一瞬、返答に遅れるがない事もなかった様に
振る舞う秘書。
そんな秘書の発言に笑みを浮かべていた
大統領の表情が笑いに代わり
それは、とても難しいね。 だって
もう " 片足 " を突っ込んでしまったから…。
その言葉に思考が追い付かない秘書は
必死に思考を巡らせ " 真意 " を掴もうとするが
" 言葉の真意 " に辿りつけない。すると
" これは、私の背負うべき責務だから
気にすることはないよ。だから、今まで通り
第一秘書の彼を超える人物になり給え "
彼女に言葉を送ると、その後…彼女に
手を伸ばし " 頭を撫でる " 大統領。
" あの大統領。これは…なんのつもりですか "
起こった出来事に素の表情で答える秘書。
" 君へのご褒美だが不満かね "
その言葉に何故か静まり返る車内。
静まり返る空気に耐えきれなかったのか
運転手は " 何か音楽でもかけますか " と
ラジオをつけようとする。
" ちょっと、君達…この沈黙が耐えられないのは
君達だけじゃないからね。反らすのはいいけど
この後どうしたらいいか教えてくれないか "
答えを求める大統領に…
" では、そのまま…セクシャルハラスメントで
裁かれ…檻に入ればいいと思いますよ "
ご機嫌斜めの秘書の頭に置いた手を退け
機嫌を取る為に模索していると車が止まる。
" 大統領。目的地に着いたので
降りる準備をお願い致します "
今までの空気をものともせず声を掛けるSP。
秘書と気まずい距離感が出来たので
出方を伺っていると " しっかりお願いしますよ "
と、声を掛け先に降りる秘書。
秘書の言葉に肩の荷を下ろす大統領は
気持ちを切り替えドアが開くと車から降りる。
すると、歓迎するホテルの従業員。
一方…慌ただしくしている秘書とSP。
それに気付き近付こうとすると側役のSPに
制止を求められるが押し切って声を掛ける。
" そんなに慌てて何かあったのかね "
声を掛けられた秘書達は…側役のSPに
視線を向け無言の圧力をかけると
秘書と共にいたSPが、大統領に耳打ちする。
事態を把握すると大統領は的確に指示を出し
原状回復に務める。
指示を出し終えると数名のSPを
引き連れフロントに向かう。
そして、フロントが確認出来る位置迄来ると
大統領に気付き会釈をする人物。
会釈する人物をSPに確認すると声を掛ける。
" 本当に話の通り…私が一人で来て
チェックインしたのだな "
そう確認する大統領。
" 同じ姿をしていたので間違いありません "
その言葉に考えを巡らせ再び
SPに耳打ちをする。
すると、SP達は四方八方に散って行く。
そして、一つの考えに至った大統領は…
" ちなみに、その人物は…コレに似た
物を身につけてなかったか "
と、支配人に身に付けている物を見せる。
" えぇ。似た物を身に付けておりました "
" そして、その質問を聞かれることがあれば
この様に伝える様にと仰せ使っております "
深々く頭を下げ言葉に詰まる支配人。
" どうしたのかね? 何を言付かったんだ "
そう訊ねられた支配人は震えながら
" 話す内容は、私の意思とは反する事だと "
承知の上で聞いて頂きたく思います。
" いいだろう " そう話す大統領の声を聞くと
覚悟を決めたのか頭を上げ…
" さっさと部屋に来い。バーーカ "
と、罵声を浴びせる支配人。
その言葉に静まり返る一同。だが…
" アッハハハ。これは面白い!
SPがいなくてよかったな。
居たら只では済まなかったぞ "
" 笑い事ではないですよ!
全く、さっさっと部屋に行って捕らえますよ "
すると、支配人からマスターキーを受け取り
先頭を切って歩き出す秘書。
それを、追いかける様について行き
エレベーターに向かう2人。
エレベーターに向かってくる2人に気づいた
SPは、エレベーターの釦を押して到着を待つ。
到着すると乗り込む2人に続けて乗ろうとする
SPに耳打ちして制止させると2人だけで
エレベーターに乗り込む。
" 今度は、何を頼んだのですか "
" 君が気にすることではないよ。
念のため…応援の手筈をしただけだから "
その言葉に不満そうな顔で
" 私が…彼以外に遅れを取るとでも "
" やはり、彼には今でも勝てる気がしないか "
その言葉に不満そうな表情をする秘書。
一方、そんな秘書に背を向けるように
外の景色を見て話を続ける大統領。
" でもね…そんな君に朗報だよ。
彼でも勝てない人物がこの国には存在する "
" そして、その人物に君は…
既に会ってるんだが記憶にないかな "
大統領の言葉に反論しようとするが
" おっと、もう着いてしまったか
さっさっと部屋に行こうか "
と、エレベーターを先に降り歩き出す。
部屋の前に着くと秘書はマスターキーを使い
扉を開けると先に入って行こうとする大統領を
制止させて先導して行く秘書。
部屋に入ると広間には誰の姿も見えなかった。
だが、広間の両サイドには扉があり…
その片方の扉だけ半開きになっていた。
それに、気づいた秘書だったが
今度は制止する前に大統領が先に
ドアに手を掛け扉を開く。
すると、会合用の部屋なのか長いテーブルに
沢山の椅子が並べられた席の一ヶ所に
その人物は…座っていた。
" やっと来たか。さっさっと座りたまえ "
その人物は、確かに見間違う程
瓜二つの大統領が座っていた。
席に座る大統領の言葉に秘書は内心
" 肝を冷やす " が、平然を装う。
一緒に来た大統領は躊躇なく
瓜二つの自分と相対する様に対面に座る。
" 戸惑っている所…悪いんだが
飲み物を淹れてきてくれないか "
一緒に来た大統領が席に着き秘書に声を掛ける。
" いいえ、その様な事はありません
只今、お持ちいたします " と、席を外す。
そして、お盆に飲み物を乗せて戻ると
話が終わったのか二人は " ありがとう " と
同時に感謝の言葉を述べる。
そんな、二人の前にマグカップ・プレートに
乗せてた飲み物を置く秘書。
置き終わり少し距離を置くように立っていると
息を合わせた様に、二人は秘書を見る。
その行動の意味を察したのか不機嫌そうに
" 変な物は淹れてません " と話す秘書。
その言葉に安心して、飲み物に手を付け
飲もうとすると…チャイムが鳴り響く。
それに、秘書が対応に当たろうとすると
飲み物に手をかけていた大統領が飲み物から
手を離し " 私が行こう " と、部屋を後にする。
" さて、君にアレが何者なのか分かるかな "
そして、君といる私は…
" 本物 " なのか解るかな
と、試す様に問うのだった。




