表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/36

ざわめき


 朝、いつも通り朝食を取る二人。


すると、テレビから一つのニュースが飛び込んで来る。


本日、正午過ぎに───共和国の大統領が来日するとの事です。

それに伴い、一部の交通機関の利用が制限されます。

お出掛けの際は、交通機関の確認を忘れず外出されますようお願いいたします。


麗は、テレビへ視線を一瞬だけやった。

すぐに何もなかったように、食事へ戻る。


「で、麗は……警護に当たったりするの」


「……あんたね……。私が所属してるのは刑事部で、こう言う要人警護は警備部って部署がやるの」


まるで子供に言い聞かせる様に話し、持っている箸でテンを指す麗。


「ここまで言って分からない事ある」


「つまり……部署が違うから私に言われても、要人警護なんて出来ませんって事ね」


「なるほど。お前が要人警護? ……似合わないな。ごめんごめん」


「アンタ……人が折角、子供でも解るように教えてあげたのに……そう言う言い方する訳」


「それに、私は……部署が違ったって声が掛かれば、要人警護だってやり遂げてやるわよ」


強気な発言に託つけて、とある提案をするテン。


「なら、言葉通り……要人警護をする事があって成功したら、豪華ディナーに連れて行ってやるよ」


「解ったわ。今の言葉、忘れんじゃないわよ」


「そうなった日には、私の前で土下座して謝っても許さないんだから」


そんな二人の空気を解く様に、マナーモードの携帯がテーブルの上で震える。


携帯を取り、着信相手を確認するテン。


だがその際……麗の方からも着信相手の名が見えてしまう。

それを気にしないテンは立ち上がり、携帯を取って自分の部屋へ向かった。


麗とすれ違い数歩、歩いた所で――


「麗。遅刻しない様に行ってこいよ」


「いつも通り、俺が片付けるからシンクに入れておいてくれ」


そう麗の方を向き直し、声をかけると――

歩き始め……部屋の扉が閉まる音がした。


「そんなこと解ってるわよ。言われなくても」


一人残されたリビングで、愚痴を零しながら食事を続ける麗。


電話を終え、部屋から出てくるテン。


「ったく、思い通りになると思うなよ」


愚痴を溢しリビングに戻って来たテン。


リビングに戻ると、麗の姿はなく……

残っていた食事を再開する。


食事を終え、台所のシンクへ行くと、傍に置かれた紙に気づく。


食器をシンクに置き、紙を手に取ると、そこには――


豪華ディナーの件、忘れんじゃないわよ!

いっーーーーちばん良い所で

ビッーークリする程の店じゃなかったら

許さないんだから。バーーーーカ ヽ(`∧´)ノ


内容にそぐわない達筆な字で書かれた手紙を読んだテンは――


「どんだけ行きたいんだよ」


「素直に言えばいいのに……ほんと、素直じゃない奴」


独り言にもかかわらず、思わず笑みが溢れる。


─────


職場に着いた麗は、いつもの様に挨拶をして自分の使っている机の椅子に腰を下ろす。


腰を下ろすと、机の上に置いてある「倒れた額縁」を起こし手に取ると……


「今日も、私……頑張ります。見守っていて下さい」


そう額縁に入った写真に語りかける麗。


「先輩、出勤する度に毎回している、その謎の儀式は……どうにかならないんですか」


麗の奇行を見かねた後輩が声をかける。


「べっ……別にいいじゃない」


「迷惑をかけてる訳でもないし、私にとっては願掛けの様なものなんだから」


それを聞いた後輩は……


「願掛けと言っても、その方……獅子署の署長……鴇冬さんですよね」


「ずっと思ってましたが、存命中の方を願掛け扱いするのは……」


流石の後輩も苦笑いをして言葉を濁す。


その言葉に、ぐうの音も出ず写真を抱きしめ、俯いてしまう麗。


「そこまでにしてあげなさいよ」


「アンタも、そんなことを言うために麗に声を掛けた訳ではないでしょ」


二人の様子を見ていた一人が、間を割って会話に入る。


千沙都(ちさと)……アンタは分かってくれるのね」

「流石、私の親友」


そう言うと、千沙都と呼ぶ女性に飛び込む。


「はいはい。手の掛かる大きな子供だわ……」


(流石の私も、その奇行は……どうかと思うけど)


飛び込んで来た麗を抱きしめて宥める千沙都。


「で、そんなアンタも……麗に負けず劣らず、懲りずに麗に声をかけてるのね」


見下す様に冷たい眼差しで見る千沙都。


「今回は、今までとは違うんですよ」

「ちゃんと目的があって……」


そう話す後輩に、抱きついていた麗が後輩の方に顔だけ向ける。


「あんな仕打ちした後で、何を言うつもり」


そう話す麗に対して……


「麗先輩! 自分とデートして下さい」


頭を下げながら話す後輩。


だが、麗は千沙都と顔を合わせると、無言のまま千沙都の体に顔を向ける。


「はぁ……そのくらい自分で言いなさいよ」


ため息を付きながら麗に話す千沙都。


「麗には、同棲している男がいて、その人が好きだからデートはしないの」


千沙都の言葉に肩を落とす後輩。


それと同時に千沙都の言葉を否定する様に、麗の抱きしめる腕が締まり息苦しくなる。


「ちょっと麗……私が代弁してあげたのに文句がある訳。あるなら、自分で言いなさいよ」


すると、腕の力が抜け楽に千沙都。


「大体、同棲してる男と何もないなら紹介してって言ってるのに……紹介しないなんて、勘違いされても仕方がないじゃない」


と、話ながら抱きつく麗の腕を取り、身体から引き剥がす。


「ちょっと千沙都……もう少し、そのままでいさせてよ」


「やっぱり……なんともなさそうね」


「アンタ、そんな態度ばかりして真剣に向き合わないと痛い目みるわよ」


麗に対して警告する千沙都。


「おい、見ろよ。俺達の話を聞かずに純情を弄ばれた男が……また出たぞ」


三人のやり取りが聞こえていた人達が話す。


「よく……同じ部署の女に手を出す気になるな」


「噂じゃ……獅子署の協力者に飛び蹴りをかまして気絶させたって話だぞ」


「俺も、その話聞いたけど……本当らしいぞ。獅子署にいる知り合いが実際に見たらしい」


「動くなって言ってるだろう……とか叫んで走り込んで、近づいた所を飛び蹴りしたって」


「しかも、一人だけに留まらず……もう一人の協力者には手錠をかけて喜んでたらしいって」


反論したい所だが、言ってる事が事実の為、反論出来ずにいる麗。すると……


「そのくらい強気なくらいじゃないと、この部署は勤まらないでしょ」


「この部署に、私達を守れる騎士様は――いったいどのくらいいるのかしら」


そう強気に話す千沙都。


そんな人物の言葉に黙り込む周りの人達。


「流石、千沙都。私の親友」


「あはは……そんな大した事しないわよ」


(やってしまった……。男運が下がった気がする)


こんな騒々しいのに、何か腑に落ちない麗。


「そういえば……課長はいないの」


そう周りに質問する様に話す。


「確かに、こんな騒がしかったら怒鳴り散らかして注意するのに」


いない事を良いことに好き勝手言う千沙都。


「課長なら先輩達とすれ違う様に呼び出されて、どこかに行かれましたよ」


そう話す後輩。すると……


「俺に、用事でもあるのか」


「丁度いい。お前達に話があるから来い」


「守って貰える騎士様がいない二人」


皮肉混じりの言葉を言いながら、自室に向かって行き部屋の中に入る課長。 


「どこから聞いてたのよ……てか、話って何」


「千沙都……何かやったんじゃないわよね」


「なんで、私って決めつけるのよ! やらかしてるのは麗じゃないの」


さっきのやり取りが嘘の様な醜態を晒す二人。


「あの~、ここで言い合っても解決しないので、課長の話を聞いた方がいいかと」


見かねた後輩が苦し紛れに二人を制止させる。


「そうね。ここで言い合っても、みんなの笑いの種にされかねないから早く行きましょう」


そう話す二人は、課長の居る部屋に向かう。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ