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再会の温度


噴水がある公園のベンチに座る男。

「お迎えに上がりました。瑜伽さん」

瑜伽は、ベンチに座りうつ向く様な姿で煙草を吸う。

しかし、声をかけられた方を見ようとしない。

「お前、第一声が……それだけか? 他に言う事があるだろう」

「俺が、気付いてないと思ったか」

変わらず相手を見ようとせず質問する。

「確かに、貴方の組の者を唆しましたが……それだけで」

それだけね……。

組の者に手を出しただろう。

「それは……」

「“保身”の為などと、つまらない言い訳はするなよ」

そう話す瑜伽は“逃す”つもりはないと言わんばかりの“圧”を放つ。

「あの……本当に………申し訳……」

険しい表情で渋々……頭を下げる。

「クッ……ハハハハハ……」

その声に……慌てて頭をあげる。

「ネタ提供……ありがとうございます」

言葉と共に、ベンチに座る男の後ろから人が現れる。

そして、ベンチに座る瑜伽の横に座り、撮影した姿を再生して見せる。

「お前が、何故……ここに……」

「何故って……ここは、俺のにわだぞ」

「お前こそ何故、気付かれないと思った」

うぬぼれるなよ。

お前ごときが――。

その“矛先”が、八雲へ向く。

その人物は、高圧的に……今にも“とどめを刺す”と言わんばかりの“圧”を放つ。


そんな状態の中――

「そこまでに、したらどうだ」

そう話しながら、三人に近づく男。

「組が解体になり、解放されたからって……早速、羽目を外し過ぎでは……」

ベンチに座る瑜伽に問いかける。

「折角、西で成り上がった八雲が勧誘に来たのに……こんな仕打ちは如何なものかと思いますよ」

男は八雲の肩を叩き同情する。

「そして、テンは……毎回、度が過ぎるおふざけはどうにかならんのか」

一人だけ説教を食らう。

三者三様……物言いを受ける。


それに、納得がいかないテンが口を開く。

「元はと言えば、八雲が……」

「お前は、全てを知っていて悠呀ゆうがさんに下らない提案を持ちかけたんだろう」

「流石、長年一緒にいるだけはあるな」

瑜伽が、軽く肩をすくめる。

「全て、お見通しか」

「もちろん。貴方ゆうがさんが合流してから一度も会話に参加してなかった事もね」

「で、どうするんです。八雲と一緒に西に行くんですか」

「それなんだが……。実は、まだ……考え中」

歯切れの悪い言い方をする悠呀。

「条件に何か不満があるなら言って下さい。貴方の希望に添うようにするので」

と、悠呀に話をする八雲。

その発言を聞いた三人は、ほぼ同時に“苦笑い”をして天を仰ぐ。

「八雲って、瑜伽ゆが……もとい悠呀ゆうがと付き合いあったよな」

「テン……俺、一応先輩な! さん付けろ」

テンは、手で“落ち着いて”と言いたげに手振りをする。

「お前達程ではないが、一応あるよ。プライベートでも数回会ってるし」

で、その誘い文句か……。

「ところで、八雲」

さっきまで、一緒にいたヤツはどうした?

その言葉に、テン以外の顔色が変わる。

そんな事を気にする素振りもなく話続ける。

「あいつは、もう帰ったのかな。この辺りには、気配がないけど」

「こんな風に、集まる事もまれだし連れてくれば良かったのに」

「皆、知らない仲ではないんだから 」

『あのさ……テン』八雲の声が、ほんの少しだけ硬くなる。

『……二人のお姫様に黙って出て来たから、埋め合わせで帰ったんじゃねえの』

一拍。

『……冗談だよ』テンは笑った。

誰も、笑わなかった。

『皆さん! 肝を冷やした所で上手い酒でも飲みに行きますか』

ジンが即座に返した。

『……金は』

テンは笑う。

『もちろん。俺が払う』

『――行くぞ』

四人は公園を抜け、駐車場へ向かう。

噴水の音だけが、いつまでも背中を追ってきた。


──一方、その頃──

突然、鳴り始める携帯を手に取る。

そして、着信相手を確認すると電話に出る。

「はい。どうしましたか? 親父殿」

「また、娘を危険な目に合わせたな」

「娘ですか……。親父殿が心配する事があるんですね」

「親父殿は、娘に無関心かと思っていましたよ。なんなら検査入院してる病院を教えましょうか」

「娘が慕っているからと言って、良いように使うのは感心せんな」

「それは……警告ですか」

「なら、こちらからも言わせて頂きます」

「なにかね……」

「親父殿。私兵を使い、娘の救出もせず見ているだけとは何をお考えなのですか」

「もっと言えば……一人、意識が飛んでる」

「そして、貴方の私兵はその斃しに関与している疑いがあるのですが」

「なら、私を任意で引っ張るかね」

「そんな事が出来ない事を解ってて言うんですから、親父殿も意地悪ですね」

「私は、あの場にいない筈の人間ですよ」

「表だって、出来る訳ないでしょう」

「お互い、肩書きがあると不便ですね……親父殿」

「そして、お互い……私兵に斃されない様に気をつけないといけないですね」

「あいつらが、その気になれば私達は……」

「まあ。親父殿の言い分も解らなくないので記憶の片隅にでも留めて置きますよ」

「それでは……親父殿。失礼します」

そう話すと、電話を切る。


すると、タイミング良く部屋の窓が開く。

あたかも、今……来た様に見せ掛ける必要はないぞ」

そう話し、開いた窓ではなく部屋の隅を見る。

「流石ですね。騙せると思ったのですが」

「で、電話ではなく直接来た理由を聞こうか」

「ジン坊っちゃまの行方を知りませんか」

「その呼び方は……本人が怒るじゃなかったか」

「本人の前では言わないので御安心を」

「俺は、行方を知らないが車で出掛けたならGPSがあるだろう」

「そのGPSが――公園の駐車場から発信が途切れまして。何か知らないかと」

「それなら、あいつが一緒なのは明白だろう」

「まあ、そうですね。私の杞憂でしたかな」

テンは“親睦会”があると言っていたから、ジンも交えて旧友達といるんじゃないか。

「なるほど。では、帰るとしますかな」

そう話し窓から去ろうとする人物に――

「ちなみに、ここの警備は……どうだ」

「そうですね。一般的には問題ないかと」

「一般的には……ねえ。さて、どうしたものかな」

そう呟き終わる頃には、姿は見えなくなっていた。



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