大事な物はとにかく何でもしまいこむ
手に入れたものはとにかく何でもしまいこむ。
元から持っているものも、とにかくどれでもしまいこむ。
だって。
ほうっておくと。
ちゃんと管理しないと。
外に出しておくと。
すぐ人にとられちゃうから。
名前をつけて。
マーカーで書いて。
シールを貼って。
自分の物です、と主張して。
それで、箱にしまって。
やっと安心できる。
大事で大切な、私の宝物たち。
人になんて渡したくない。
せみのぬけがら。
綺麗なビー玉。
布のおてだま。
いろいろしまいこんでみた。
そうしたら、心がかるくて。
心配でなくなったけけれど。
他の物もとられないか、気になった。
教科書。
ランドセル。
お気に入りの服と靴。
プレゼントの玩具。
どんどんしまいこんだ。
そしたらどんどん安心してきた。
もっと。
もっと安心したい。
だから、箱にしまい込むものを増やす事にした。
大切なお小遣い。
学校の連絡帳。
アルバム。お手紙。
他にも色々。
そうしてしまいこむようになって、何十年も経ったある日。
「もう君とは一緒にいられない。別れよう」
大切なものがなくなりそうだったから、それもしまいこむことにした。
「たのむ、外に出してくれ」
それは物じゃないけど、失わないためだから、しょうがない。
あなたが、諦めて。