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妙メモリー

おばあちゃんの庭に「成せば」がなった話

作者: みょめも

僕のおばあちゃんは自然がいっぱいの田舎に住んでおり、野菜や果物を庭で育てるのが趣味の人だった。

夏休みになると毎年のように遊びに行っては新鮮な野菜や果物をご馳走になるのだが、これは小学4年生のときのある出来事だ。


おばあちゃんの家の裏庭に生えている木に見慣れない果実が実っていた。



「これは何?」



そう僕が聞くとおばあちゃんは「『成せば』だよ」っと微笑んだ。



「今年は何十年かぶりに『成せば』がなったのさ」



成せばと言えば、学校の生活科の授業で学んだことはあるが、実物は随分と大ぶりなんだな、と感じたものである。



「もう何年も、水に肥料に小まめな剪定にと頑張ってきたけど、実がならないからもうダメかなと諦めていたんだけどね、『やれば何とかなる』ってことだね。」



シワシワな笑顔でそう言っていた。




その夜は、おばあちゃん特製の『成せばの煮っころがし』だった。

何十年も実っていなかった成せばを上手く調理できるものなのかと尋ねると、包丁片手に『やれば何とかなる』『やれば何とかなる』と成せばの固い皮を剥いていた。

食卓にたくさんならんだ『成せば』。

おばあちゃんは僕にたくさん食べてほしかったようで、自分ではほとんど食べずに差し出してくれた。





次の日、帰り支度をしていると、おばあちゃんがビニール袋に入れた『成せば』をお土産にくれた。

僕は料理なんてできないと遠慮したのだが、「やってみなさい、やれば何とかなるよ」と半ば強引にバッグに詰め込まれた。



「あんたにね、私の座右の銘を教えてあげよう。無理かもしれない、きっとダメだと思ったときはこの言葉を心のなかで唱えなさい。『やれば何とかなる』」



その言葉にずっと気になっていた事を言ってみた。



「おばあちゃん、それ『成せばなる』っていうんだけど。」



おばあちゃんは顔を赤くして「あたしゃ、『成せば』が苦手でねぇ」と言ったのだった。




あれから年月が経ち、久しぶりに『成せば』を食べる機会があったのだが、どうも舌にあわない。頑張れば喉を通らなくもないが、僕はそれをそっと皿の隅によけた。

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