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女の子がいた件について




 明かりが見える場所は横道にあるようで、入り口が這いつくばらないと通れないほど狭いものだった。


 俺はアイテムボックスに宝箱を入れて、その場に這いつくばり、匍匐(ほふく)前進で中へと進んでいく。


 すると、思ったよりも開けた場所に繋がっていたようで、俺は這い出たあと立ち上がり、あたりを見回した。


 天井には球体の照明──ボール型ペンダントライトと呼ばれる──のようなものがあり、奥には3つのドアがある。


 四角い大きな机に、3人は座れそうな広さのソファーが2つ、食器の入った戸棚もあり、そこにはティーセットの用意がされている。


 洞窟の中というよりも、まるで隠れ家のような空間に驚いた。


 そもそも、こんな狭い入り口からものを運ぶなんてことは出来ないだろうし、この3つのドアの何れかが外に繋がっているのだろうか?


 そんなことを考えながら、好奇心から扉を一つ一つ開けていく。


 一番左のドアを開けると、何もない空間が広がっていて、天井にはボール型ペンダントライトがぶら下がっている。


 真ん中の扉を開けると中は真っ暗で、何があるのかよくわからない。だが、何かがそこにいるような気配がした。



「誰かいるのか?」



 つい、小さな声でそう口にした。


 今思うとあまりにも不用心ではあると思うのだが、何故かこのときは無警戒で、当たり前のように問いかけてしまった。


 一拍ほど間を開けてから、「誰?」という、か細い、女の子のような声が耳に入って来て、思わず息を呑んだ。


 ──本当に誰かいた。


 今更ながらに手に汗をかく。


 恐る恐る、バックに入れていた宝箱を取り出し、開いて明かりをむけると、そこには檻の中に閉じ込められている日本人のような風貌の──服装もこっちの世界の人というより、向こうでよく見た服装だった──女の子が体育座りをしていた。



「あれ?」



 気のせいかもしれないが、どこかでみたことがあるようなないような顔立ちに引っかかりを覚える。



「君、有名人だったりする?」

「え?」



 俺の言葉に肩を震わせたその子は、少しの間を置いてから「違います」とだけ口にした。



「そっか」



 沈黙が落ちる。なんとも気まずい。


 先に沈黙を破ったのは目の前の少女だった。



「あの、変なこと聞いてもいいですか」

「ど、どうぞ」

「あなたも……召喚されたんですか?」

「え?」

「違うんならごめんなさい」



 そう呟いて、顔を伏せてしまう。


 俺はどう反応したらいいのかわからず、言い淀んでしまった。


 もしかして、彼女も?


 それとも、召喚はまた別の意味?



「君も、気がついたらここにきてたの?」



 俺の言葉に弾かれたように上を向く彼女。



「突然、地面に吸い込まれて……気がついたら」

「地面に?」

「はい」

「俺とは違うな」

「そうなんですか?」



 俺の場合は寝ている間に転移していた。


 まあ、寝ていたから知らないだけで、俺も床に吸い込まれたのかもしれないが。



「一つ、確認してもいいかな」



 俺の問いかけに彼女は前のめり気味に答える。



「はい!」



 そんな彼女に少し引きそうになりながらも、ずっと抱いていた疑問を口にする。



「君もこの世界の人じゃないんだよな?」


  

おまたせしました。

体調も大分と回復したので今日から更新していきます。

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