真実を求めて
「ケホッ……は!?」
「言葉の通りだ。君はスパイに相応しいよ。その正義感や芯の強さは素晴らしいものだ。そこら辺にいる普通のサラリーマンと一緒にするには勿体ない。後はまあ、君は独り身だし、唯一の家族の妹ちゃんは新婚ホヤホヤ。両親が早くに死んで妹を育てなくちゃいけなかった君は交友関係も広くないし、親しかった友人は……まあそれは置いといて、情報が漏れることはないだろう。」
何もかも調べられているということか、と思い大きくため息を付きたくなった。だが一つ、ラインの言葉が引っかかった。
「そこまで言っておいてなぜ友人のことは濁したんだ。俺はそいつはビルの火事に巻き込まれて焼け死んだと聞いた。親のことだって気遣いゼロで言ったくせに、今更……。」
「それに突っかかってくるって言うことは、なんとなく君も気付いてたんじゃない?彼の死について、君は疑問を抱いている。ちょっと思い出して見ようか。」
彼の死を聞かされたときのことを思い出した。
「突然警察から電話が掛かってきて……、ロードが死んだと聞かされた。その時一緒にいた家族も死んだと。身元が分かる人がいないから、だから俺が遺体を確認しに行った。でも焼け爛れて本人かどうかなんて分からなかった。DNAが一致した、警察はそう言ったじゃないか。……ここは情報管理局……、ロードは何か巻き込まれたのか?」
「そこまで頭が回るとは、やっぱり君良いね。ロード君、彼の行方を、実は我々も追っているんだ。彼は国際的なテロ組織に拉致された可能性がある。先日のヘルマンタワーの大火事は、ハーマン国からのテロ組織による攻撃だと我々は見ているんだ。だが火事になってビルが崩壊する寸前に脱出した者が犯人以外に数名いる。黙っていてすまなかったね。これも、機密情報なんだ。昨今の情勢は君も知っているだろう?隣のハーマン国とは停戦状態ではあるが、平和になったとはまだ言えない。今回は事故として処理したが、隠れたテロ活動はどこにでも起こっている。我々の内にもそれは言えることだ。もっと視野を広げれば国同士の戦争だけではなく、民族争いやら宗教戦争やら、人の争いが止むことはない。我が国は、平和を求め、維持していく。そのために、情報は不可欠なんだ。これから話すことは政府の中でもこの情報管理局の一部の人間しか知らないことだ。話を聞く覚悟はある?」
つい先程までは飄々としていて掴みどころのない男だったが今目の前にいる彼は、局長の名に相応しい雰囲気を漂わせていた。