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テラスの一時

 そういえば、ヤースラからの帰国の記憶はないな、と改めて思った。飛行機が発進する時にかかる圧力が、実は好きだったりする。レニリカはずっと窓の外を眺めていた。一時間程度の旅は、レニリカと話したり、この後の予定を考えていたらあっという間だった。飛行機を降り、入国審査を経て空港を出る。ニカには初めて来たが、降りる場所によってまたかなり空気が変わるらしい。今回は首都ルンドルーブルに降り立ったが、他の場所も見てみたいものだ。

 街に出ると、中世の町並みを残しつつも近代的なビルが立ち並んでいた。まずはライズル広場という旧市街へと向かった。そこには沢山の観光客が訪れていたが、レニリカは構わずグングン進んでいく。川沿いを歩き、やがて目的の場所にたどり着いたのか、とある店先で足を止めた。


「ここ!ここでご飯にしましょ!」


 店はカフェのようで、テラスの席につくとウェイターがメニューを持ってきてくれた。レニリカは既に注文を決めていたのか早々にメニューを置いた。俺は何にしようかと考えているとふとシュニッツェルという料理が目に入り、それに惹かれた。隣国なだけあってこの料理に馴染みはあるものの、隣のテーブルが頼んでいるのを見るととても唆られてしまった。


 注文が決まり、ウェイターを呼ぶ。レニリカはシュペッツレというパスタのような料理を注文していた。そしてソーセージは二人で分けて食べようとそれも追加で注文し、まだ昼間ではあるがせっかくだからとニカのビールももらうことにした。


「楽しみだね。」


「うん、そうだね。でも昼間から飲んで大丈夫か?」


「私こう見えて結構強いの。」


 確かに何度か家で食事をした時に酒を持っていった事はあったが、酔っている所を見たことはない。なら大丈夫だろう。すぐにビールは運ばれて来たため、景色を眺めながら乾杯をして飲んだ。かなり深い味わいで濃いビールだった。


「美味しい〜!!」


「そうだな。こっちで飲むものとはやっぱり違うんだ。」


 これはこの後にくるシュニッツェルとよく合いそうだ。そう考えながらもう一口進んでしまう。隣を見ると既にレニリカのグラスにビールはない。ウェイターがすぐに気がついてお代わりを持ってくるか尋ねてくれた。レニリカは少しこちらを見て顔色を伺った後、即座に注文した。


「ごめん、良かった?」


「飲みなよ、せっかくなんだから。」


 こちらのジョッキにはまだ半分以上ビールがある。むしろ飲んでくれと思っていた。その後すぐにビールが届き、入れ替わりのように料理が到着した。隣のテーブルで先に見ていたとはいえ、やはり目の前に来ると迫力が違うを仔牛の肉を叩いて薄くしたものに、衣を着けてサクッと上がっている。皿からはみ出すほどに大きなそれを、ナイフで切り分けながら食べることにした。口に入れるとサクサクな食感と濃い味つけが広がっていく。ビールをそこに合わせれば他では真似のできない至高の瞬間だった。


「美味いな。」


「良かったね。こっちのシュペッツレも食べてみる?」


 そう言って彼女は少し取り分けてくれた。代わりにこちらのシュニッツェルも彼女の皿にのせ、交換をする。シュペッツレはパスタにしてはかなりモチモチとした食感で、ソースとよく絡み合い、今まで食べたことのない味をしていた。


「これも美味い……!」


「でしょでしょ!食べてみたかったんだ〜。」


 そう言って次から次へとレニリカは頬張っていく。その美味しそうな顔を見ると、ついこちらも気持ちが綻んでしまった。

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