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事故物件の壁のおふだの話

作者: PYON

今年もなろうラジオ大賞にエントリーさせていただきました。呪いにより猫のお話しか書けない猫作家です。オチも例によってってやつです。猫好きってこんなもんかもしれませんね。

「このお部屋、すごく安いですよね」


「ええ、本当におすすめ物件です」


 ぼくは、春から社会人となる。実家から離れてひとりぐらしをするわけだ。

 今日は不動産屋さんの案内で、気になる物件の内見に来ていた。

 それにしても、この値段は魅力的だ。


「もしかして、事故物件とか…」


「いえ、そんなことは…」


「じゃあ、その壁のおふだはなんですか?」

 壁には何枚ものお札が貼られていた。


「実はこのお部屋には、ご老人が猫と一緒に住んでおられたんです。

 ある日、そのご老人がおなくなりになって…

 しかし、身寄りがないから1か月くらい発見されなかったんです。

 ご老人は部屋の中で腐敗していました」


「それでそのご老人の幽霊が出るってことですか?」


「いえ。老人に寄り添うように黒猫が餓死していたんです。

 老人が死んだから、餌をもらえなくなって死んだんでしょうね」


「それはかわいそうな話ですね」


「それから、この部屋から猫の鳴き声がしたり、いつの間にか部屋に黒猫がいたりと不思議なことが起こるのです。

 しかし、先日高名なお坊さんにお祓いをしてもらいましたから、今は大丈夫です。

 このおふだをはってもらってから、そういうことはないようです。

 たぶん、おふだをはがさなければ大丈夫です」

 不動産屋さんは壁のおふだを指さす。


 そういえば、他の人が一度住んだら事故物件じゃなくなるって聞いたことがある。

 そういうことなんだろうな。


「わかりました。

 この部屋に決めます」

 ぼくは、この部屋に住むことに決めた。

 やはり、この立地でこの値段は捨てがたい。

 それに…この部屋にはもうひとつ魅力がある。



 2週間後、ぼくはこの部屋に引っ越してきた。


「荷物はこれで全部です。

 確認願えますか。

 問題なければ、ここにサインをお願いします」

 ぼくは伝票を受け取りサインをする。

 引っ越し屋さんはお礼を言って、引き上げる。


 ぼくは部屋に一人になる。

 さあ、ここでの新しい生活の始まりだ。

 そうそう。

 もう一つやらなければならないことがある。

 ぼくは丁寧に壁のおふだをはがす。

 えっ?そんなことをしたら幽霊が…って?


 ニャーニャー。

 さっそくどこからか猫の鳴き声がする。

 かわいい声だ。

 このお部屋、猫ちゃんの幽霊が出るなんて最高じゃないか。

 だってぼくは無類の猫好きなんだから。


 楽しい新生活になりそうな予感がした。

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