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番外編 ①

書籍が2/17に発売されました!

応援してくださったみなさまありがとうございます!


今回はエミリアの話ではない、番外編を書いてみました。

ヒロインの話ではないのですが、楽しんでいただけますと幸いです~!


 よく“人間、顔じゃない”なんて言われてるけど、嘘じゃねーか。キモオタデブの俺が証明してやるよ。




 俺の名前は、鈴原流星。不細工・デブ・低身長・オタクetc……数多くの非モテ要素を兼ね揃えた男だ。


 小学生の時、俺に触られると“鈴原菌”が移って不細工になるという噂が広まり、体育のダンスの授業でペアになった女子に、まだ触ってもいないのに泣かれた。

 

(泣きすぎて引きつけも起こして、大騒ぎになった)


 中学生の時は、俺の前を歩いていた女子がハンカチを落としたから、拾ってあげたら「触らないでよ! キモ原の触ったハンカチなんて二度と使えない!」と罵られた。


 受験を終えて合格発表を機に、イメチェンを決めた。


 生まれ変わってみせる。

 

 女子から嫌われる生活とはおさらばだ。

 

 痩せて彼女をゲットして、童貞卒業してみせる! 

 

 ついでに友達も作ってやる!

 

 ゲームに出てくるお助けキャラみたいな奴とな!




 そんな目標を立て、俺は春休みだけで二十キロのダイエットに成功した。


 俺の時代がきた! 高校デビューだ!


 しかし、不細工キモオタデブが痩せたところで、ただの不細工キモオタになるだけだった。

 

 高校デビューなんてできるはずも、彼女もできるはずもなく、小中学校と同じく休み時間は持ち込んだ漫画を読み、ぼっちで過ごす。

 

 最近ハマッてるのは、飯がテーマの漫画だ。女子中学生主人公が、受験勉強の最中に夜食を作って食うっていう話。

 

 影響されて自分でも飯を作るようになって、せっかく痩せた体重も元に戻りつつある……キモオタデブに逆戻りだ。

 

 まあ、非モテ要素が一つ戻ってきたところでどうってことはないけどな。



「キモ原って、流星って言うんだって。名前負けだよね」


「流星? 流星って言うか、隕石じゃね?」


「あはっ! 隕石ってうけるんだけど~!」



 クラスのギャルが、俺のことを話して笑う。


 てか、悪口なら聞こえないように言えよ。もろ聞こえてんだよ!


 でも、可愛いんだよな~……それに、いい身体してるし。

 

 胸元開けすぎだろ。黒いブラが見えてんだよ! スカート丈上げすぎなんだよ! 

 

 動くたびにパンツ見えるんじゃないかって期待するだろ!



「え、キモ原がこっち見てるんだけど~! キモいー!」


「悪口聞こえたんじゃね? あんた、声デカいんだって~」



 オメーの声も十分デケーよ。もうパンツ見せてくれねーなら、どっか行ってくれ。


 ため息を吐きながら漫画を読んでいると、後ろから肩を叩かれた。



「ねえ、それって、『JC夜食飯』だよね? 面白い!?」



 話しかけてきたのは、俺の後ろの席の北条皐月だった。

 

 黒髪ストレートで、目が大きくてクリクリしていて可愛い。

 

 俺のドストライクなタイプな女子だ。


 今、北条が俺に触った!? つか、俺に話しかけた!?


「鈴原くん?」


 話しかけられてる~……!


「あっ! う、うん、そうだけど」


 うわ、最悪、声裏返った。絶対キモがられてんだろ!


「本屋で見かけてすっごく気になってたんだ。面白い?」


 けど、北条はキモがるどころか、目を輝かせて身を乗り出した。


「あ、う、うん、結構……てか、かなり」


「そうなんだ~! 次のお小遣いが入ったら買っちゃおうかな~」


「あ、あ、いや、よければ貸すけど?」


 いや、何言ってんだ俺! 俺の持ち物なんて、借りる女子がいるかよ!


 うわ~……どうやって断ろうなんて考えて、困るところ見たくないなぁ……。


「えっ! いいの!?」


 えっ! いいの⁉ こっちの台詞だけど!?


「お、おん、結構巻数あるし、集めるのも大変だと思うし……」


「ありがとう! じゃあ、貸して貰える⁉」


「お……っ……おん、わかった。明日全巻持ってくる」


 女子となんて一生喋ることもなければ、やり取りなんてすることもないと思っていたのに……人生ってのは、何が起きるかわからないもんだ。


 それを機に俺は北条と漫画の貸し借りをする仲になった。



「鈴原くん、私昨日の夜中にピザトースト作って食べちゃった」


「もしかして『JC夜食飯』三巻の影響?」


「そう! もう我慢できなくなっちゃったよ。夜中に食べるのってなんであんなに美味しいんだろうね~!」


 北条と話すようになって、学校に来るのが楽しみになった。今までこんなことなかったのに。


「ねえ、皐月ってさぁ、キモ原と普通に話すよね。キモくないの?」


 トイレの帰り、北条が他の女子に話しかけられているのを見かけてしまった。


 あっちからはちょうど死角で見えていないようだ。


 うわ……嫌なところに出くわした。北条に「キモい」なんて言われたら、さすがの俺も傷付くんだけど!?


 でも、北条がなんて言うか気になる。

 

 いや、決まってんだろ?

 

 俺のことキモいと思わない奴なんていないんだって。

 

 早くここから逃げろよ。


 ドMか俺は……。



「え、キモくないよ。鈴原くんは友達だもん。すごくイイ人だよ」



「……っ」



 思わず声に出てしまいそうになった。


 友達⁉


 俺を友達って……マジで?


 女子の友達ができたのなんて、初めてだった。


 人生ってのは、何が起きるかわからないもんだ。



 本当に、何が起きるかわからないもんだ。




 北条が電車事故で死んだ。


 他の客がぶつかってきた弾みで線路に落ちて、轢かれて死んだらしい。

 

 庇おうとした高町も死んだ。


 なんでだよ……なんで……なんでこんなことが起きるんだよ。


 あいつ、キモい俺に話しかけてくれて、友達って言ってくれて、こんなのあんまりだろ⁉



 それからの俺は荒れた。


 荒れたって言っても、キモオタのやることだ。


 学校サボって引きこもって、ただただゲームやってただけ。


 何をやっても楽しくない。


 北条のいない世界って、なんてつまらないんだろう。




 ――ああ、俺、北条のことが、好きだったんだなぁ……。




 涙がボロボロこぼれた。


 今頃気付いても遅い。


 いや、北条が存命だった時に気付いても何か変わるわけじゃないけどさ。


 だって、高町なんて北条狙いだっただろ?

 

 他の女子に不愛想なあいつが、いつも北条には積極的に話しかけてさ。


 まあ、そうだよな。


 北条、可愛いだけじゃなく、いい奴だったからな。そうだよ。


 あんな死に方をしていい奴じゃないんだよ。あいつはさ……!



「あぁぁぁ……っ! くそっ! くそっ! くそーーっ!」



 やりきれない思いをどうしていいかわからなくて地団太を踏むと、一階から母ちゃんがドスドス音を立てながらのぼってきた。


「流星! うるさいわよ! いつまで引きこもってるの!? 明日は学校に行きなさいよ!? あら! あんた、何泣いてんの!?」


 母ちゃんは生き写しかってぐらい俺と同じ顔と体形だ。


 俺、確実に母ちゃんの遺伝子を引き継いでる。


 ちなみに父親も同じ感じだ。こうなると、子供がどんな顔で生まれるかわかってんだろ!?


 流星なんて名前付けんなよな!


「うるせぇババア! くそがっ! 放っておけよ!」


「母親に向かってババアとは何!? 流星! 待ちなさい! こら、流星! あんた、来月のお小遣いナシだからね――!」



 俺はスマホと財布を持って、家を飛び出した。どこに行くかは決めてない。ただ、黙っていられなかっただけだ。


 ぼんやりとその辺を歩いていると、ぐぅっと腹が鳴る。


 悲しくても、腹は減るのな。てか、デブだから余計に減るのか?


 作った夜食のことについて、北条と語るの楽しかったな……。


「何、食うかな……」


 スマホを見ながら歩いていると、「危ない!」という声が聞こえた。


 は? 何が危ないんだ?


 スマホから目を離した次の瞬間、ドンッという音と共に俺は宙に舞い上がった。




 なんだ……?




 空が見えたと思ったら、次はものすごい痛みと共に地面が見えた。


「きゃあああああ! 救急車呼ばなきゃ! 人が車に轢かれたわよ!」


 周りに人だかりができる。あれ、もしかして轢かれたのって俺?


「キミ、大丈夫か!? ……ああ……これは駄目だな」


 おい、そりゃないだろ。轢かれた人間目の前に、「これは駄目だな」なんて言っちゃ駄目だろ。




 ああ……目の前が、真っ暗になる。


 俺、死ぬんだなぁ……。

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