第十六話 ⑤
カタリーナは口を両手で押さえ、潤んだ瞳で私を見ていた。
……ん?
泣いているんじゃなくて、トロンとしているというか……大好きなアイドルを間近で見たかのような反応だ。
え、何?
「素敵……♡」
「は?」
「お人好しのお姉様が、こんな激しいお心を持っていらっしゃるだなんて……そんな冷たい目をして私を罵って、私を……こ、殺すだなんて……」
カタリーナは息を荒らげながら、自分の心臓を両手で押さえる。
「こんな素敵な方が、私のお姉様だったなんて……! ああ、ドキドキして胸が苦しいわ。エミリアお姉様、大好きっ♡ 今すぐ私を殺してぇ……っ!」
「えっ!? ちょっ……きゃあああ!」
私に抱きつこうとしたカタリーナをレオンが引きはがし、ハンスお兄様が間に立ってくれる。
「離してくださいまし! エミリアお姉様っ! 私をどうやって殺してくださるの!? 好き好きぃっ♡」
あ、頭が痛いわ……。
さっき飲まされた薬が身体に残っていたのか、ワインがいけなかったのか、眩暈がして目を開けていられなくなる。
「エミリア!?」
「エミリア、大丈夫か!? エミリア! デニス、医者と司祭を呼んでこい!」
「はい!」
「あぁん! エミリアお姉様ぁっ! しっかりなさってーっ!」
みんなの声が、どんどん遠ざかっていくわ……。
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