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第十六話 ③

する とそのとき、扉が大きな音を立てて外れた。


何事……



「「エミリア!」」



扉を蹴破ったのは、レオンとハンスお兄様だった。続いてデニスさんと、デュランタ兵数名が入ってくる。


レオン! ハンスお兄様! まさか、二人が助けに来てくれるなんて……!



レオンがリタの手を背中に捻り上げると、リタがナイフを落とした。


「きゃぁぁっ! 嫌……っ……痛い……っ……」


「この者を地下牢に連れていけ」


「はい」


すぐさま兵がリタに手錠をかける。私、助かったのね……。


ハンスお兄様が私を抱き起こしてくださった。


「エミリア、怪我はないか 」


「だ、大丈夫……お水……が欲しいわ」


「あぁ、ここにあるぞ。大丈夫か。飲めるか」


そう言うと私を抱きかかえたまま、優しく水を飲ませてくださった。


水が体内に染みわたるのがわかる、少し不快感が治まっていく気がする。


「カタリーナ王子妃、これはどういうことだ?」


レオンがカタリーナを睨みつけると、彼女はその場に崩れ落ちて涙を浮かべた。えっ……! 何?


「エミリアお姉様、酷い……そんなに私のことが憎い? ジャック王子と結婚したのは、お姉様が怪我をして目覚めなかったからで、私の意思ではないわ!」


…………え?


「レオン王子、聞いてください。私はさっき睡眠薬を飲まされたみたいで、目覚めたらここにいただけなのです。お姉様はさっきの侍女に自らを縛らせ、死なない程度に怪我をさせろと命じたのです。私がやったと思われるようにと……お姉様の代わりに、ジャック王子の妃の座に就いた私を恨み、私を悪者に仕立て上げようとしたんです……っ!」


よくもでたらめをペラペラと言えるものね!


レオンは侮蔑に満ちた目で、カタリーナを見下ろした。



「エミリアがそんなことするわけがないだろう」



レオンなら信じてくれるってわかってた。


でも、とても嬉しくて、涙が出そうなほど嬉しくて、鼻の奥がツンとする。


ハンスお兄様は私の手足の縄も解いてくれて、ようやく身体を自由に動かすことができるようになった。


「カタリーナ、なぜこのようなことをした?」


どう誤魔化すつもり?


ハンスお兄様が尋ねると、クスクス笑う。




「面白いからに決まっているでしょう?」




その場にいた全員が、耳を疑ったことだろう。


「あーあ、とうとうバレちゃった。でも、別にいいわ。普通に過ごすよりも、その方がずーっと刺激的で楽しいもの」


カタリーナは天使のような顔で微笑んだ。


その目には、もう涙なんてどこにもない。


「カタリーナ、お前……」


カタリーナの本性を伝えてあるハンスお兄様も、彼女が見せた本当の姿に驚きを隠せない様子だった。


無理もないわ。二度目の私ですらすっごく驚いているもの。


「さっきの侍女に協力してもらって、エミリアお姉様を眠らせてここに運んだのよ」


「なぜ、そんなことをした」


レオンに厳しい口調で尋ねられても、カタリーナは全く怯まない。


「それはもちろん、エミリアお姉様を殺すためですわ。レオン王子」


「なぜ、エミリアを殺そうとする」


「デュランタの侍女が、モラエナの貴族令嬢を殺したとなれば、和平交渉を結んだばかりとはいえ、戦争の火種になると思ったからです」


「なぜ、戦争を望む?」



「それはもちろん、刺激的だからですわ。先ほどもお姉様に言ったのですが、私は刺激的なことが大好きで、平和が嫌いなのです。刺激的な日々を送ることができるのなら、どんなことでもできますの」



ゾッとして、寒くもないのに鳥肌が立ってしまう。


「ちなみにエミリアお姉様が三年前、暴漢に襲われたでしょう? あれは私が暴漢を雇ってやらせたのよ」


「知っているわ。偶然あなたが独り言を口にしているのを聞いてしまったから」


「ええっ! やだっ! 嘘、やだぁ……っ! 私が仕掛けたって知ったときのお姉様のお顔を見るのが楽しみだったのに知っていたなんて……あーあ、がっかりだわ……」


自分の所業が明るみになったときは微笑んでいたのに、今のカタリーナは心からショックを受けた様子だった。


ショックを受ける基準、おかしくない


「お父様とお母様が、エミリアお姉様に冷たく当たる理由は……どう? 王妃として厳しく育てなければっていうのはあるけど、あまりにも酷いと思うことはなかった?」



「えっ」



まさか……。



「そうよ。私がお姉様に酷いことをされたって言ったから」


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