第十三話 ④
再び私たちはテーブルについて、冷めてしまったお茶を淹れ直す。
「エミリア、すまない」
「いいえ、とっても可愛かったわ。あんな可愛い妹がいて羨ましい」
本当に羨ましい! 私の妹は姉を殺そうとするサイコパスだもの!
今頃カタリーナは、どうしているのかしら。
カタリーナのことを思い出したら、ちょっと暗くなってしまう。
「そうだな。前世ではいい兄弟に恵まれなかったが、今はすごく恵まれていると思う。死んだ兄もいい人だった」
前世のレオンの兄弟……恵まれないってことは、あんまり関係がよくなかったのね。
「レオンの前世の兄弟は……」
話題に出すことで、レオンを傷つけてしまうかもしれないわよね。
「うん?」
「あっ……ううん、なんでもない」
「もしかして、気を遣ってくれてるのか?」
バレちゃった。レオンは鋭いわ。
「……ええ、聞いたら嫌かなって思って」
「エミリアになら何を聞かれても嫌じゃない」
本当かしら?
レオンの表情を見ると、無理をしているようには見えない。聞いてみて、少しでも辛そうに見えたらそこでやめよう。
「じゃあ……えっと、前世のレオンの兄弟って、あんまりいい人じゃなかったの?」
「ああ、最悪だな。クラスは違ったけど、宮川弘樹っていう男がいたのを知っているか?」
「ええ、覚えているわ」
「あれは俺の腹違いの兄だ。まあ、兄と言っても、誕生日が二か月早いだけなんだが。父親が政治家で有名人だったから、結構噂になってたはずだけど、聞いたことないか?」
「あるわ。でも、噂ってあてにならないから、嘘なんじゃないかしらって思っていたの」
「エミリアらしいな。そういうところもすごく好きだ」
「……っ」
そういう意味じゃないってわかっていても、ドキッとしてしまう。
この調子じゃ勘違いした人は、一人や二人じゃ済まないはずだ。
レオンったら、罪作りな人ね!
「俺は愛人の子供だから、苗字が違うんだ」
そうよね。宮川くんと高町くんだものね。
「俺の母親は弘樹の母親を目の敵にしていて、あの学校に入学させられたのも弘樹が入るっていう話を聞いたからなんだ。弘樹に負けるなってさ」
「そうだったのね……」
「俺は弘樹と張り合うなんてごめんだったから断ったんだけど、あの学校以外は学費を出さないって言われたから、仕方なく受験したんだ。気乗りしなかったけど、北条に会えたから行ってよかったよ」
「私も高町くんに会えてよかったわ」
ニコッと笑うと、レオンも笑ってくれる。
「当然だけど弘樹には目の敵にされていて、北条と初めて会った日も持ってきた昼食をあいつに捨てられて、購買で買い直すのも面倒だなーと思ってジュースだけ買って飲んでたら、高町が話しかけてくれて、弁当をわけてくれたんだ」
「そういう理由だったの!? 昼食を捨てるなんて許せない!」
思わず声を荒げてしまうと、レオンがククッと笑った。
あ、私、つい……。
「でも、そのおかげで高町と知り合うキッカケになったからな。高町のわけてくれた弁当、すごく美味しかった。家は父親から金を貰えていたから裕福で、お手伝いさんを雇って食事も作って貰ってたんだけど、その料理と全然違ってさ。すごくあったかい味がした。ああ、ご飯ってこんなに美味しかったんだって感動したよ」
「ありがとう! 嬉しいわ」
母親違いのお兄さんと張り合わされて、そのお兄さんに嫌がらせをされて……高町くんは大変な人生を送っていたのね。
「また、この世界で会えてよかった」
「ええ、本当に」
「エミリア、俺は……」
レオンがテーブルに置いていた私の手に、自分の手を重ねる。
「レオン様!」
その時、デニスさんが急いでこちらに走って来た。
「あ……もしかして、お邪魔でしたか? もしかしてというか、かなりお邪魔でしたか?」
「ああ、すごくな」
「申し訳ございません。ですが、国王がお呼びです。至急相談したいことがあるので、政務室までお越しいただきたいと」
至急相談したいこと? 一体何かしら。
「わかった。エミリア、せっかく作ってくれたのにすまない。後でまた貰っていいか?」
「ええ、もちろんよ」
レオンは何度も振り返りながら、城へ戻って行った。
「ふふ、リーゼ姫とそっくり」
微笑ましくて、私はクッキーを食べながら口元を綻ばせた。
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