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第十三話 ②


 お菓子作りはグラム数を正確に測らないと失敗するんだけど、クッキーだけはかなりの回数作っているから測らなくても感覚で作ることができるのよね。


 まずはオーブンを百八十度に温めておく。この温度になるまでって、結構時間がかかるから大事!


 そしてバターをクリーム状になるまで練って、砂糖を入れて混ぜる。白くなってきたらそこに卵黄を数回に分けて入れて合わせ、最後に小麦粉を入れて混ぜたら……基本の生地の完成!


 三つの味を作る予定だから、生地を三つに分ける。


 一つ目はそのままのプレーン生地、二つ目はココアパウダーと刻んだチョコを混ぜてチョコチップココアの生地に、三つ目は塩を一つまみ入れて、刻んだアーモンドとくるみを混ぜて甘じょっぱい木の実の生地にした。


「エミリアお嬢様、こちらにいらっしゃいましたか」


「あ、黙って来ちゃってごめんなさい。書き置きをしてくればよかったわね」


 クッキーのことで頭がいっぱいになっちゃっていたわ。


「大丈夫ですよ。エミリアお嬢様がお部屋に居ない時は、キッチンに行けばたいていお姿を見ることができますので」


「ふふ、私の行動はお見通しなのね」


「当然です。私もお手伝い致します。何をすればよろしいでしょうか」


 マリーは手伝ってくれる気満々で、私がお願いするよりも先に手を洗っている。


「今ね、クッキーを作っているの。生地は作ったから、型抜きを手伝ってくれる?」


「かしこまりました。わあ、可愛らしい型がたくさん! キッチンにあったものですか?」


「レオンがプレゼントしてくれたの。クッキーが焼けたら、お庭でお茶会をする約束をしているのよ」


「まあ、素敵ですね!」


 マリーと一緒に、レオンからプレゼントして貰った型で、次々抜いていく。


 犬、猫、カンガルー、魚、ハート、星……ふふ、可愛いし、楽しい。


 油を塗った鉄板に生地を並べてオーブンの中に入れ、焼いている間にまた型を抜いていく。


 甘くて、いい香りがしてきた。


「わあ、いい香りですね」


「そうね。幸せの香りって感じ」


 何度も深呼吸して、香りを堪能する。


 オーブンに入れて、十二分……そろそろいいかしら。


 中を確かめると、ちょうどいい焼き色になっていた。焼けたクッキーを取り出して、待機させておいた型抜きが終わった生地を並べた鉄板をオーブンに入れる。それの繰り返しで、全てのクッキーを焼き終えた。


「さて、味見しましょうか」


「えっ! いいのですか?」


「もちろん、作りたてを食べられるのは、作った人の特権だものね。熱いから気を付けてね」


 冷めるとサクサクのクッキーは、出来立てだと柔らかくて、持ち上げるだけで崩れるくらいだ。


 私はプレーン、マリーはチョコレートを選んで口に運ぶ。


 口に入れると熱いクッキーがほろりと崩れて、口いっぱいにバターの風味が広がる。


「んん! すごい……っ! とっても美味しいです。焼き立てのクッキーって、こんなに美味しいのですね!」


「美味しいわよね。たくさん焼いたから、マリーもたくさん食べてね」


「ええっ! いただいていいのですか?」


「当然よ。そうだわ。マリーも私たちと一緒にお茶しましょうよ」


「ありがとうございます。ですが、お二人のお邪魔をしたくないので、遠慮させていただきますね。ご用意をお手伝い致しましたら、下がらせていただきます」


 あ、そうだわ。誤解を解いておきましょう。マリーはショックを受けるだろうけど、仕方がないわ。



「あのね、マリー……実は私たち、そういう仲じゃないのよ」



 マリーは目を丸くし、すぐにクスクス笑いだす。


 え、どうして笑うの?


「恥ずかしがっていらっしゃるのですね。ふふ、お可愛らしい」


 ええー……っ!


「いやいや、本当に違うのよ! レオンは私を助け……」


「さあさあ、せっかくのクッキーが冷めてしまいますよ。お茶も用意致しますね」


「だから……」


 何度本当のことを言おうとしても、マリーは全然相手にしてくれなかった。


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