第十三話 ①
デュランタ国に戻って来た私は、すぐにハンスお兄様とお父様に手紙を書くことにした。
ハンスお兄様への手紙 、ちゃんとお兄様の手元に届くかしら。お父様が手を回して、私からの手紙は、没収されてしまうかもしれないわよね。だとしたら、お父様が中身を確認する。下手なことは書けないわ。
『お兄様へ 私はデュランタ国に行くことにしました。心配しないでください。エミリア』
当たり障りのないこと……ってなったら、すっごく短くなっちゃったわ。次はお父様ね。
『お父様へ 幼い頃から頑張り続けて疲れました。もうこれ以上、自分の気持ちを殺して生きていくのは嫌なので、モラエナを出て、別の国で暮らすことにします。今はデュランタ国に滞在しています。家には迷惑をかけずに暮らしていきますので、私のことは死んだと思ってください。それでは、お元気で。エミリア』
こんな感じかしら。
アンヌさんにも手紙を出したいけど、デュランタから送るってことは、それなりにリスクがある。
お父様とお兄様は公爵家の力でなんとかできても、彼女は一般市民だ。王家からデュランタのスパイ容疑なんてかけられたら大変だもの。不義理をすることになるけど、こちらから連絡は取れないわ。
「マリー、この手紙を出す手続きを取ってきて貰える?」
「かしこまりました」
手紙をマリーにお願いして、マリーが出ていくと同時に私は机に突っ伏した。
おばあさま……。
思い出したら、涙が出てくる。
前世のお父さんとお母さんが死んだ時も、すごく辛かった。大切な人が亡くなるのは、何度経験しても慣れない。
早く元気にならないと……。
今日はいい天気だし、お庭を散歩させて貰うのもいいかも。
そう思いながらもなかなか顔をあげられずにいると、扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
急いで涙を拭って、返事をする。入ってきたのは、レオンだった。手には綺麗にラッピングされた箱を持っている。
「あ、レオン、どうしたの?」
「エミリアがどうしているか、気になって……泣いていたのか?」
「ううん、あくびしただけよ」
笑顔を作るけど、うまく口元が動かせない。
「無理しなくていい。辛いんだろ?」
心配を掛けたくなかったから誤魔化したけど、レオンにはお見通しなのね。
「ありがとう。早く元気にならないといけないのに、なかなか立ち直れなくて」
「早くなくても、いいんじゃないか?」
「え?」
「身体に傷がついた時って、早く治そうと思っても無理だろ? 心だってそうじゃないか? 我慢せずに泣いて、悲しんで、ゆっくり立ち直っていけばいいよ」
そっか、焦らなくてもいいのよね。
「ありがとう。レオン……」
重かった心や身体が、スッと楽になるのを感じた。
「気にするな」
レオンはラッピングされた箱を私に差し出す。
「え、これ、私に?」
「ああ、エミリアに何かプレゼントしたくて、街に出て買ってきた。気に入ってくれるといいんだが」
私を元気づけるためよね? 政務で忙しいのに、わざわざ街に行って選んでくれたのね。
レオンの気持ちがとても嬉しい。
「レオン、ありがとう。嬉しいわ! 開けてもいい?」
「もちろん」
何が入っているのかしら!
ワクワクしながらラッピングを開けると、色んな形のクッキーの型が入っていた。
「わあ! クッキーの型だわ!」
「色々迷ったんだが、調理系のものが一番喜んで貰えるんじゃないかと思って」
「ええ、とても嬉しいわ! これはうさぎで、こっちは犬で、これは……え? 何かしら? カンガルー? ふふ、全部可愛いわ」
「喜んで貰えてよかった」
「本当に嬉しいわ。大事にするわね」
こんな可愛い型を見たら、我慢できないわ。今すぐ作りたくなっちゃう。
「ねえ、レオン、私、これからクッキー作るわ。焼けたらお茶にしない?」
「ああ、いいな。天気もいいし、外でお茶にしよう」
「素敵! じゃあ、焼けたら声をかけるわね」
私はレオンと分かれ、キッチンに向かった。
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