第十話 ②
城に着くとすぐにゲストルームへ通された。お医者様と司祭様が待っていて、すぐにハンスお兄様を診てくださる。
「先生、お兄様は何か悪い病気なのでしょうか」
「いいえ、安心してください。過労から来る発熱でしょう。栄養を取って、安静にしていればすぐに元気になりますよ」
「よかった……」
「解熱剤だけ出しておきます。胃があれてしまうので絶対に空腹は避けて、食事の後に飲ませてください」
「わかりました」
戦争で大変だったのだもの。疲れが溜まって当然だわ。
「祝福を与えましょう。早く回復する手助けになるでしょう」
司祭様が手をかざすと、温かい光がハンスお兄様を包み込んだ。
「……っ……」
するとマリーが、涙をこぼした。
「マリー、大丈夫よ。ハンスお兄様は、すぐ元気になるってお医者様が言ってくださったでしょう?」
「い、いえ、すみません。ハンス様もとても心配なのですが、エミリアお嬢様が意識不明だった時、こうして祝福を与えられていたことを思い出してしまいまして……」
「えっ! 私のことで泣いていたの!?」
「す、すみません」
「たくさん心配をかけてごめんね。もう、絶対あんなことにならないから安心して」
「はい……」
マリーの手をギュッと握ると、また彼女の目から涙がこぼれる。
「そうだ。俺が絶対に守るから、安心してくれ」
「レオン王子……ありがとうございます。どうかエミリアお嬢様を末永くお願いしますね」
「ああ、任せてくれ」
「ちょ、ちょっと、二人とも……」
これでレオンが永住権をくれるために、求婚してくれているってマリーが知ったら……。
絶対ショックを受けるわよね。
その時のマリーを想像したら、かなり胸が痛くなる。
「これで、終わりです」
「先生、司祭様、ありがとうございました」
「二人とも、ご苦労だった。また、何かあったら頼む」
「ええ、もちろんです」
「お大事にどうぞ」
司祭様とお医者様が帰って行くと同時に、ハンスお兄様が目を開けた。
「ハンスお兄様! 大丈夫?」
「ここは……?」
「デュランタ国城よ。レオンとデニスさんが運んでくれたの。ハンスお兄様は歩いている途中で、熱を出して倒れてしまったのよ」
「そうだったのか。情けないところを見せたな。すまなかった」
ハンスお兄様が起き上がろうとするのを慌てて止める。
「起きたらダメよ! 熱があるのよ」
「これぐらい平気だ。第一王子、側近、手間をかけさせてすまなかったな」
「とんでもない。大切な人のお義兄さんだ。これくらい気にしないでくれ」
「だから、誰がお義兄さんだ……。街に宿を取っているから、そっちに戻る」
ハンスお兄様は私が止めるのも聞かずに、身体を起こした。
もう、どうして無理をしようとするのよ!
「駄目!」
私はグッと力を入れ、ハンスお兄様をベッドに押し戻した。
畑仕事に料理、どれも力がいるものばかり。この半年間、たっぷり鍛えてきた私だ。高熱を出したハンスお兄様を押し返すことぐらい容易い。
「エミリア、お前、どうしてそんな力があるんだ?」
「……ハンスお兄様、怒るわよ?」
じろりと睨みつけると、ハンスお兄様が目を逸らす。
「ハンスお兄様には、休息が必要なの。安静にしないと駄目! 絶対に駄目なの! わかった?」
「エ、エミリア、睨まないでくれ……」
「わかってくれたなら、やめるわ」
「わ、わかった。休む。動かない」
……無理をしなくなったのは嬉しいけど、私の顔、そんなに怖いの?
「エミリアは一体どんな顔で睨んでるんだ?」
「こちらからは見えないですね。でも、ハンス様があんなに怯えていらっしゃるところは初めて見ました」
「普段からは想像できないですが、とんでもなく恐ろしいお顔なのでは?」
「それはそれで見てみたいな……」
レオンとデニスさんとマリーが、ヒソヒソ話している声が聞こえる。
「ち、違うわよっ! ハンスお兄様は具合が悪いから、神経が過敏になっているの!」
振り返ると、三人にサッと目を逸らされた。
もう……っ!
「ハンスお兄様、今食事を持ってくるわ」
「いや、あまり食欲が……」
「解熱剤を飲まないといけないから、少しでも食べないと駄目なのよ。少しでも食べやすいものを作るわ」
「作る……って、まさか、お前が作ってくれるのか?」
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