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第六話 ⑤


 翌日のお昼、私はマリーを連れて、レオンと共に屋敷を出発する準備を整えた。


「な、何とか間に合いました……」


「慌ただしくてごめんなさい」


 今朝、マリーにデュランタに行くことを伝えた。私の予想通り、マリーは一緒に付いて行くと言ってくれて、すごく……すごく嬉しかった!


 でも、こんな短時間で荷物をまとめるのは、ものすごく大変だったみたい。


 私の荷物はある程度まとめておいたのだけど、これでは駄目だと駄目出しを食らい、マリーが全部一からやり直した。


 私が用意した荷物は必要最低限のもので、トランク一つ分だった。でも、マリーがまとめ直したら五つになった。


 持っていきすぎじゃないかしらと言ったら、貴族の令嬢なのだからこれぐらいは必要どころか足りないぐらいだと言われた。ちなみに中身のほとんどは、ドレスや装飾品だ。


 荷物を馬車に詰め込み、玄関まで見送りに来てくださったおばあさまに出発の挨拶をする。


「レオンさん、孫娘を頼みます」


「はい、マダム・クローデット、彼女は命に代えても僕が守ります」


「おばあさま、行ってきます。お身体には十分気を付けてくださいね。お料理のレシピはドニに渡してありますから、同じ味が楽しめます」



「ありがとう。私のことは気にせず、楽しんでいらっしゃい。……ああ、そうだわ。忘れてしまうところだったわ。これを渡しておかないと。はい、これ」



 おばあさまが手渡してくれたのは、私が幼い頃にお気に入りだった白いリボンだった。


 金色の糸で薔薇の刺繍が入っているもので、お父様が旅先で買ってきてくれたものだ。ちなみにカタリーナとお揃い。


 当時はとても大切にしていたのよね。いつも厳しいお父様がお土産をくれたのも、カタリーナとお揃いなのも嬉しかったっけ。


「このリボン……懐かしいわ。見つけてくださったんですね」


 おばあさまの屋敷に滞在していた時になくして、たくさん探したのに見つからなかったものだ。


「いいえ、実はこのリボンを見つけたのは、ハンスよ」


「えっ! ハンスお兄様が?」


 偶然見つけてくれたのかしら。あんなに探してもなかったのに、どこにあったんだろう。


 それにしても、よく私のリボンだってわかったわね。


「ええ、あなたがなくしたって悲しんでいたから、遅くまで一生懸命探していたわ」


「お、お兄様が?」


 私を嫌いなハンスお兄様が、私に全く興味のないハンスお兄様が、私のために探してくれた?


 嘘……信じられないわ。いえ、おばあさまが嘘を吐くはずがないのだけど。


「ふふ、そうよ。あの子ったら、自分が見つけたと言うのは恥ずかしいから、私が見つけたってことにしてあなたに渡して欲しいってこのリボンを預けたの。ごめんなさいね。あの後バタバタしていて、返すのを忘れてしまったの」


「そうだったのね。ありがとう」


「あの子、無事だといいけど……今頃、どうしているのかしら……」


「ええ……」


 ハンスお兄様は、行方不明のまま……。


 一体、今頃どうしているのかしら。無事で居てくださればいいのだけど……。


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