第四話 ②
「嘘……」
「どうして疑うんだ?」
「だって、私が線路に落ちなければ、高町くんが死ぬことなんてなかったのに……」
「北条は後ろに居た中学生にぶつかられて、線路に落ちた被害者だろ。それにあれは俺が勝手にしたことだ。北条は何も悪くない。というか、助けられてないしな……こっちこそごめん」
優しい人――。
私が高町くんと同じ立場なら、こんなことが言えるかしら。
「高町くんが謝ることないでしょ! 本当にごめんなさい。高町くんの未来を、人生を奪ってしまって……」
謝って許されることじゃないとわかっていても、謝らずにはいられない。
「ああ、いいんだ。気にしないでくれ」
サラッと言われた。
例えるなら、友達のペンを間違えて持って帰ってしまって、翌日謝って返した時のノリ!?
「ありがとう。私が気にしないようにそう言ってくれているのね」
表情から感情を読み取ろうと注意深く見る。
「いや、本当に。北条のいない人生でなんて、生きていても意味がないから」
「えっ」
私のこと、そんなに大切な友達だと思ってくれてたんだ。
胸の中に春が生まれたみたいに、ポカポカ温かい。
「俺も転生したなら、北条もそうなんじゃ……と思って、ずっと探してたんだ。まさか、モラエナにいたなんてな」
「あ、そうだ。高町くんは、どの国に転生したの? きっと貴族よね?」
「よくわかったな。デュランタの第二王子だ」
「えっ! デュランタだったの!?」
「そう、今の名前はレオン・リースフェルトだ」
デュランタの第二王子といえば、数年前に第一王子が亡くなっているため、王位継承権第一位になった。
「すごい。高町くん、王子様だったんだ! あ、じゃあ、レオン王子って呼ばないと」
前みたいに呼び合ってたら、周りから変に思われてしまうものね。
「レオンでいいよ」
呼び捨て……というのも、気が引ける。でも、こちらの世界では「くん」を付けるのは変よね。
「わかったわ。レオン」
ん? ちょっと、待って? レオン王子って、ジャック王子に毒殺されそうになったあのレオン王子よね……!?
まさか、高町くんが被害に遭っていたなんて……。
あいつ、本当にとんでもない男だわ!
「北条はこの世界では、なんて名前なんだ? お嬢って呼ばれてたし、貴族なんだろ?」
「ええ、私はエミリア・ラクールよ。一応公爵家の令嬢」
「エミリアか、いい名前だな。レディ・エミリアって呼んだ方がいいか?」
レオンが悪戯っぽく笑う。
「ふふ、エミリアでいいわよ」
「わかった。じゃあ、エミリア」
「うん」
私の名を敬称なしで呼ぶのは、両親とお兄様とおばあさま、それに国王夫妻とジャック王子だけだった。
誰に呼ばれても特に何も思わなかったけれど、どうしてかしら? レオンに呼ばれると、少しくすぐったい気持ちになるわね。
「でも、エミリアがどうしてこんな田舎に? この前まで王都に居ただろ?」
「えっ! 私のこと見たの?」
「ああ、半年ぐらい前だったか? 城門のところで、気分が悪そうに見えたから話しかけたんだが、あの時は本当に大丈夫だったのか?」
「! あの時の人って、レオンだったの!? ごめんなさい。あの時貧血を起こしていて、姿がハッキリ見えなくて覚えていないの」
「やはり大丈夫じゃなかったか。強引にでも家に送っていけばよかったな」
「ううん、あの時は城の中にどうしても行かないといけなかったから、家に帰るわけにはいかなかったのよ」
「……何かわけありなのか?」
私の沈んだ表情を見て、レオンは何か察したらしい。
「えーっと……あんまり愉快な話ではないのだけど」
「エミリアのことなら、なんだって知りたい」
レオンの優しさが嬉しい。
カタリーナのことは、マリーにすら話せなかった。でも、ずっと誰かに聞いて欲しかったから。
「ありがとう。実はね……」
気に入ってくださったら、評価ブックマークいただけると嬉しいです~!
更新の励みになります!




