表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/69

第四話 ①

「おい、うちのお嬢さんに、何の用だ」


 固まっていると、キッチンにいたジョエルが慌ててこちらに来て、私を背に庇う。


「あ、ジョエル!」


 他のお客さんが、何事かと騒ぎ出した。


「退いてくれ。その人と二人で話がしたいんだ」


「うちの大事なお嬢さんだ。二人きりなんて許可できない。ここで話すか、お嬢がどうしても話したいと言うのなら、俺も同席させて貰った上で話して貰う」


「レオン様、私も同席させていただきます」


 デニスさんが、レオンさんの前に立つ。従者の方とジョエルが睨み合うのをお客さんが興味津々といった様子で見ていた。


 ちょ、ちょっと、ちょっと、これはまずい……!


「エミリアちゃん、何事なの?」


 異変に気付いたアンヌさんまで、キッチンから出てきた。


「ええっと、これは……」




「高町」




 ――え!?


 この世界で、私しか知らないはずの名前――まさか、こんなところで聞くなんて思わなくて、心臓が大きく跳ね上がる。


「高町陽翔……という名前に、聞き覚えはないか?」


 どうして、高町くんの名前を!?


「ジョエル、下がって」


「ですが、お嬢……」


「大丈夫よ。いいから、下がって」


「……はい」


 ジョエルが渋々私の後ろに下がった。


 でも、何かあればすぐに動き出せるように、ピリピリした空気を感じる。


「デニス、お前もだ」


「ですが……!」


「命令だ」


 ジョエルに続いて、デニスさんも下がった。


「アンヌさん、上の休憩室をお借りしてもいいですか? この方とお話がしたくて……」


「それは構わないけど……大丈夫?」


「はい、心配しないでください」



 私はレオンさんと一緒に、上にある休憩室へ向かった。


 ジョエルが二人きりになんてできないと心配してくれたけれど、何かあれば呼ぶからと言って下がって貰った。


「こちらに座ってください」


「ありがとう」


 テーブルを挟んで、向かい合わせに座る。




 この人は、誰なの?



 初めて会った時に受けた不思議な、懐かしい感覚――まさか、この人は……。



「あの、高町くんを知っているんですか?」


「知っている……というか」


 違う。私の予感なんて、どうか外れていて欲しい。だって、もしこの人がそうなら、高町くんは――。



「俺が高町なんだ」



 高町くんは、本当に死んでしまったってこと……。


「そ、んな……」


 あの状況じゃ、絶望的だってわかってた。きっと私と一緒に死んでしまったんだって。だけど、希望は捨てたわけじゃなかった。


 電車の線路の隙間に落ちて、高町くんだけ助かった……とか。


 高町くんの手を誰かが引いてくれて寸前のところで助かった……とか。


 でも、死んでしまっていたんだ。


 罪悪感で胸が苦しい。潰れてしまいそう。涙が溢れて、頬を次々と伝う。


「!」


 そんな私を見て、レオンさん……ううん、高町くんが慌てた様子で立ち上がる。


「ど、どうして泣くんだ?」


「……っ……わ、私のせいで……私を助けようとしたせいで、高町くんまで死んじゃって……ごめんなさい……」


 謝って済む問題じゃない。


 故意じゃないとはいえ、私は高町くんの未来を奪ってしまった。罵倒されても……ううん、殴られたっておかしくない。


「……やっぱり、北条だったんだ。顔を見た時に、ものすごく懐かしい感じがして……」


 高町くんも、私と同じことを感じてたんだ。


「さっき子供に、ご飯は元気の源って言ってただろ? 俺に弁当をわけてくれた時も同じことを言ってたから、もしかしてって思ったんだ。それにこのレストランで出す料理も日本食だったしさ。久しぶりだな。……その、会えて嬉しい」



 会えて嬉しい……? 命を落とす原因になってしまった私と?

気に入ってくださったら、評価ブックマークいただけると嬉しいです~!

更新の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ