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第三話 ②

「え?」



「……いや、すまない。大丈夫か?」


「はい、私の方こそ申し訳ございませんでした。支えてくださってありがとうございます。おかげで転ばずに済みました」


 いつもの癖でスカートの端を持って挨拶しそうになる。


 あ、ドレスじゃないのに、この挨拶は変ね。


 スカートの裾から手を離し、頭を下げた。


 ハンスお兄様と同じ年頃かしら。質素な服に年季の入ったジャケットを羽織っているけれど、立ち方や雰囲気から高貴なオーラを感じる。


 お忍びの貴族? それにしては、見たことがない顔だわ。他国の貴族かしら。


「レオンさ……レオン、大丈夫ですか?」


 黒髪の男性これまたイケメンが、赤い髪の男性を気遣う。


 今、レオン様って言いかけなかった? この方の従者かしら。やっぱり他国の貴族かもしれない。


「デニス、気にするのは俺じゃなくて、そちらの方だろう」


「あっ……失礼致しました。レディ、お怪我はございませんか?」


「ええ、おかげさまで。本当に申し訳ございませんでした。それでは、私は失礼致します」


 こんな田舎に、他国の方が何の用でいらっしゃったのかしら。




 お店の前には、行列ができていた。お昼時はとっくに過ぎているのに、大盛況!


 うわぁ! すごい!


「エミリアちゃん、おはよう! 来てすぐで申し訳ないけど、調理に回って貰える?」


「はい!」


 エプロン姿が似合うこのマダムは、おばあさまの屋敷のお知り合いで、この店のオーナー兼コックのアンヌさんだ。


 手をしっかり洗って、店に置いてあるエプロンを付けた。


「注文入りました。卵焼きと唐揚げお願いしまーす!」


 ホールから注文が入る。


 卵焼きと唐揚げ、もちろん私が考案したメニューだ。


「はーい!」


「エミリアちゃん、昨日作って貰った肉じゃがが、もうなくなりそうなの。また、鍋いっぱいに作っておいてくれる?」


「わかりました。今日は大盛況ですね」


「ええ、エミリアちゃんが来る日っていうのがバレちゃってね。同じメニューでも、エミリアちゃんが作った方が美味しいって」


「同じレシピなんだから、そんなことないのに。でも、嬉しいです」


 注文の料理を作りながら、同時に肉じゃがの仕込みもしていく。


「お嬢、ばあさんは家まで送って行ってあげましたよ」


 そのうち、ジョエルも用事を済ませてやってきた。


「忙しそうっすね。何か手伝いましょうか?」


「ありがとう! お皿洗ってくれる? 足りなくなりそうなの」


「了解っす」


 ジョエルにも手伝って貰ったおかげで、一時間ほど過ぎるとようやくお客さんが減ってきた。


「アンヌさん、ホールの様子見てきていいですか?」


「こっちは落ち着いてきたからいいわよ!」


「ありがとうございます!」


 エプロンを外して、ホールへ向かう。


「あ、エミリアちゃん、肉じゃが最高だよ~! おじさん、ハマっちゃってさ。毎日食べたくなっちゃうんだよ」


「エミリアちゃん、次の新作も楽しみにしてるよ!」


 こちらの世界では馴染みのないメニューがうけているみたい。


「ありがとうございます!」


 私の作ったご飯を美味しそうに食べてくれているのを見るのが好き。


 そういえば私、前世は調理専門学校に進学して、将来は調理師を目指そうと思ってたのよね。まさか今世で夢が叶っちゃうなんてね。



 あら?


 端の方に、さっきぶつかったレオンさんとデニスさんが座って、ご飯を食べながらこちらを見ている。


 さっきの人、ここのお客さんだったのね。……なんでこっちを見ているのかしら。あ、そうだわ! さっきのお詫びに、何かサービスしよう。


 アンヌさんに了承を得て、トマトの蜂蜜煮をサービスさせて貰うことにした。


「さっきはぶつかっちゃってすみませんでした。これ、よかったら召し上がってください」


 従者の方はオムレツを食べているけれど、レオンさんは飲み物だけ。


 お腹が空いていないのかしら? だとしたら、余計なことをしちゃったかも。


「気を遣わせてすまない。ありがとう。……ここの料理は、誰が考えたものなんだ?」


「オーナーのアンヌさんです。お手伝いでたまに私もレシピを考案してます。それでは、ごゆっくりなさってくださいね」


 さて、そろそろキッチンに戻ろうかな。


「リュカ、美味しいかい?」


「うん、おいしいっ!」


「よかった。よかった。おじいちゃんの分もお食べ」


 あ……。


 おじいちゃんとおばあちゃんと一緒に、小さい男の子が嬉しそうにご飯を食べている。


 その姿が、前世の自分と重ねって、懐かしさと寂しさと温かさで胸を締め付けられた。


 男の子が顔を上げて、私と目が合うとニコッと笑ってくれる。


「! 美味しい?」


「おいしいよ!」


「そう、いっぱい食べてね。ご飯は元気の源よ」


 次の瞬間、ガタッと勢いよく椅子を立ち上がる音が聞こえた。振り向くと、レオンさんが驚いた表情で私を見ていた。


 え、何?


「レオン様、どうなさいました?」


 デニスさんも驚いている様子だった。彼の質問には答えず、レオンさんはツカツカと私に向かって歩いてくる。


 な、なに!? なになになに!? 何事!?




「あ、あの?」


「二人きりで話せないか?」



「えっ!?」



「頼む。どうしても、二人きりで話したいことがあるんだ」


 二人きりで!? 何を!?


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