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第三話 ①

 おばあさまの屋敷からお店までは、馬車で十分、徒歩で二十分ほどだ。


 使用人たち(特にマリー)には危ない! と反対されたけれど、護衛の騎士を付けることを条件に、徒歩で通っている。


 だって、馬車なんて大げさだもの。それに歩くことは健康にいいしね。


 前世でもよくおじいちゃんとおばあちゃんと散歩をしたものだ。


「ジョエル、今日もよろしくね」


「お任せください」


「特に背中辺りにうっかり何かが刺さらないようにお願い!」


「お嬢、その冗談は笑えませんって……あっは!」


「笑ってるじゃない」


 彼はジョエル・ラヴィス、おばあさまの屋敷の護衛を務めている気さくな青年だ。健康的な小麦色の肌、茶色い髪は短く整えてある。


 街の人たちに威圧感を与えないように、騎士服じゃなくて、私服を着て貰っている。


「しっかし、歩いて通いたいなんて、お嬢は変わってますね。貴族のお嬢さんなら、普通は五分もしない道でも馬車に乗って移動するっていうのに」


「十人十色って言うでしょ?」


「じゅうにんといろ? 何ですかそれ?」


 あ、そっか、こっちではそんな言葉ないもんね。


 前世のことを思い出してから、たびたびこういうことがある。


「十人十色って言うのは……」


「なんか、いやらしい響きっすね!」


「なんでよ! ちっともそんな響きしてないわよ。十人十色って言うのは、人それぞれ考え方が違うってこと」


「へー……健全っすね」


 あからさまに興味がなさそうな顔をするので、思わず笑ってしまう。


 少し離れたところに、おばあさんが重そうな荷物をヨタヨタよろめきながら運んでいる姿が見えた。


「ジョエル、おばあさんが困ってる! 助けてあげて」


「俺はお嬢の護衛っすよ。お嬢から離れるわけにはいきませんって」


「もうお店はすぐそこだから大丈夫よ。背中も気を付けるしね! じゃあ、頼んだわよ!」


「あ、お嬢!」


 お店に向かって走り出す。


 ジョエルが付いてきていないかどうか振り向くと、ちゃんとおばあさんを手伝っているのが見えた。


 ジョエル、ありがとう!




 前を向いた瞬間、ドンッと何かにぶつかってバランスを崩した。



「……っ!?」



 転ぶ……!


 腕を引っ張られ、腰を掴んで貰ったことで転ばずに済んだ。顔を上げると、赤い髪の美丈夫と目が合う。


 夕焼けを溶かしたように赤い髪、神秘的な金色の瞳の男の人――こんなに綺麗な人、初めて見たわ。絵画から飛び出したみたい。


 あ、ら……?


 何かしら。この人、なんだか不思議な感じがする。


 初めて会ったのに、ずっと前から知っているような、懐かしい感覚だ。


 いやいや、ありえないわ。これだけのイケメン、会ったら絶対に覚えているはずだもの!



「キミは……」


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