プロローグ
『エミリア、お前は十六歳でジャック王子の妻となり、将来はこの国の王妃となる人間だ。ただの貴族の娘とは違うということはわかるな?』
『はい、お父様』
『ジャック王子の隣に立つためには、普通の令嬢としての教育では足りない。人の何十倍もの努力が必要だ。厳しいが、頑張れるな?』
一応尋ねられてはいるけれど、私に『はい』以外の答えは認められない。
できないなんて言った日には、どうしてそんな弱い考えになるのか。王妃になるのだから、強い心を持ちなさい……なんてお説教が始まってしまう。
なぜ、それを知っているのか。それはもちろん過去に弱音を吐いたことがあるからだ。
何度か弱音を吐いたけれど、もれなくすべてお説教で、励まして貰ったことは一度もなかった。
お説教を受ける時間が勿体ない。
そんな時間があるのなら勉強をしていた方が有意義だわ。
もしくは仮眠を取りたい。
少しでも眠ると頭が冴えるのよね。
夜更かしして勉強していると眠くてぼんやりしてきちゃうから。
励ましてくれるのなら気持ちが晴れるかもしれない。
でも、お説教なんて嫌な気持ちになるだけだもの。絶対に聞きたくないわ。
ということで、私の返事は……。
『はい、頑張れます』
期待通りの返事を聞いたお父様は、満足そうに笑みを浮かべる。
『頑張りなさい』
そうよ。頑張るしかないわ。
王妃への道から逃れられないのならやるしかない。
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