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みらいひめ  作者: 日野
序章/竹取・石作篇
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一.黄金ある竹を見つくる(13)

 学校に着いたのは事故の十分前。ギリギリになってしまった。そもそも冨田はどこにいるのだったか。校舎に入って下駄箱にローファーをしまい、上履きを履く。竹本はくたびれた様子で履き替えていた。何度も神社と学校を行き来しているが、疲労もリセットされているはずなんだけどな。精神的に疲れているんだろう。

「チャラ田さん、どこでしょう」

 さあ。いや、覚えてる。

「坂元って女子に呼ばれていたよな」

「……そんなこともありましたね」

 竹本を驚かすようなこと言っただろうか。俺は肩をすくめる。

「ふふ、一度聞いた名前をよく覚えてましたね。数時間前でしたから」

 現実では二時間でも『遡った』時間を含めると三、四時間は経っている。

「まあ、いいです。坂元さんって誰ですか?」

「ああ、坂元さんね。知らない」

 竹本は肩を落とした。他クラスの女子だぞ。俺なんかが知る由も無い。

「手当たり次第、二学年教室からしらみ潰しに行こう。でも福岡の事故を昇降口で聞いたって言うんだし、遠くではないと思う」

 竹本は早速階段の方へ。しかし二階まで登りきるまでもなかった。

「あれ? 竹本ちゃんだ」

 冨田の声が聞こえた。踊り場で冨田と会う。

「アイもいるし……なぜ?」

 その話は飽きた。

「まあ、竹本さんに学校案内してて。お前こそ何してる?」

「俺は坂元ちゃんと遊んでた」

 眼鏡を押さえてから笑った。俺は溜息。

「また違う女子を狙ってるのか」

「違う違う。坂元ちゃんとはそんなんじゃない。坂元ちゃんを通して紹介してもらおうとしてる女子はいるが、坂元ちゃんは良き友だよ。ああいうサバサバした子は俺のタイプでもないし、何しろ坂元ちゃんが俺に男としての興味を持ってない」

 そうですかい。発言の途中で狙ってる女子がいるって言っているけどな。誰だよ。

「坂元ちゃんって、一組でパソコン部なんだけど、一組って言ったらわからないか? あのアララギミヨいるクラスだ。坂元ちゃんはみよりんと友達でさ」

 竹本は口をポカンと開けて「どこの国の方ですか?」と訊く。

「ニックネームだよ。竹本ちゃんはともかくアイは知らない? 学校一の美人で変人」

 アララギミヨ? みよりん? 知らんな。顔くらいは見たことあるかもしれないが、名前だけじゃわからない。冨田はやれやれというジェスチャーをした。鼻につく。

「ところでお前は何してるところなんだ?」

「これからチャリで家に帰るんだよ。さっきまでパソコン室で坂元ちゃんと学内ゴシップで盛り上がっててさ。今から帰るとこ。あっ、放課後坂元ちゃんに呼ばれたのは、みよりんが俺の連絡先を受け取らないってことを伝えてくれたんだ」

 フラれてるじゃねーか。貶してやろうかと思ったが、竹本が俺の袖をくい、と引いた。

「そうだ、冨田。そのみよりんとは駄目かもしれないが、竹本さんと連絡先を交換しないか? 俺が交換しようとしたら──」

「黙ってするなよ」と食い気味でツッコまれる。

「……クラスのチャットグループに入れてあげたくて。でさ、俺のスマホが充電無くて、代わりにうちのクラスのヤツを探してたんだ」

 竹本は頭を下げる。そこまでしなくても大丈夫ですよ。

「もちろんいいよ。二人も帰るなら昇降口まで歩きながら交換しよう」

 スマホを見ながら歩く二人を背に、俺は夕方の廊下を進んだ。良い子は歩きながらスマホを操作してはいけないと一応言っておこう。くすんだ白い壁の廊下。蛍光灯の無機質な白い光。見慣れた光景にとりあえず胸を撫で下ろしていた。が、ある人物の出現で戦慄が走った。誰かはご想像通り──福岡だ。

「あれ、岡ちゃん」

「えっ。福岡さん?」

 福岡は走って学校を出て行こうとしていた。なぜだ。福岡の事故は回避できなかったのか。いや、事故は起きないけど、福岡は走っているのか? 俺は確認せずにはいられず、走って追いかけた。上履きを脱ぐ時間は無いかもな。俺は上靴のまま学校を出る。福岡は正門に向かってる。間に合わないか。

「福岡、待て!」

 普段大声を出さない俺が、今日は何回出してるんだよ。幸い福岡には聞こえて立ち止まってくれたが、正門前だと突っ込んで来られる。追い付く前に、車の進路がこっちに変わっているのに気付いた。──どうする。突き飛ばす? 庇う?

「悪い、福岡!」

 昨日の朝の片瀬のように、俺は福岡のブレザーの襟を掴んで後ろに思い切り引っ張った。何とか逃がせた。予想の倍は体重が軽かった。毎回痛い思いさせちゃ悪いからな。しかし、これには俺自身を守ることを勘定に入れてない。車は俺に真正面でぶつかりそうになっている。ま、一回くらいはしっかり怪我してやる──瞬き。

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