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みらいひめ  作者: 日野
終章/帝篇
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三十五.長き契のなかりければ(13)

「ええ、そんなんで上手くいくんすか?」


「今までだって何とかなってきただろ。案外こういう机上の論理が刺さるパターン」


 ノエルはうーんと難しい顔をして天井を見上げた。阿部は苦笑する。今、俺と深雪が考えた奇策を伝えたところだ。


「じゃあ、皆でお小遣いを出し合わないとですね……」

「そうよね。高いんじゃないかしら? そういうのって。伊部さんにお金貰えないわけ?」


 深雪が何の罪悪感もなさそうに訊いてくる。必要な材料になら経費にしてくれそうな気もするけど、


「いや、俺たちで資金を出そう。こういうのは気持ちだろ。別に無理に集金はしないけど」


「集まるんじゃないかな? 何なら、学校中に美月さんを呼び戻すのに必要だからって告知すれば集金できるかも」


 石島が元生徒会長らしい案を出す。そこまで大事にすると、失敗したとき俺が責められねえかな。


「失敗しないんだろ?」

「ま、全校の期待を背負うというのも、いい賭けかもな」


 では、美月の記憶喚起作戦に必要な資金は、頑張ればどうにでもなるとしよう。そこで当日の作戦について、詰めていこうか。適度に食べ進めながら。


「決行日は13日、木曜日。まず、誰が来られる?」


 深雪が、


「私とアイくんは絶対。ノエルくんも来るでしょ」


「はい。みよりん先輩は来られないんでしょうね」


 ミヨは……。このことは後で話さないといけないけど、この時間軸のキーパーソンなんだ。万が一にも身の危険が迫ってはいけない。だから待っていてもらう。


「キーパーソン? 師匠が?」阿部が首を傾げた。

「すまん、あとで」


「となると、三人で行くんですか。その、ちなみに、なぜか参加している石島先輩は?」


 石島は麺をすすっていたが、飲み込んでから喋る。


「僕は卒業式の予行練習に出ないといけない」


「仕事人間だ!」


 と、深雪が不服そうに脇腹をつついた。


「いや、僕は卒業生代表の答辞を読む係だし、予行は休めないよ」


 俺たちも卒業証書を受け取る係だけどな。元・生徒会長サマは、ズル休みするには存在感が強すぎるらしい。俺たちの係に関しては、美月のことを盾にすれば、冨田や福岡が代わってくれるはずだ。


「それにさ、実代さんが大事なら、実代さんの護衛役も配置した方が良くないか?」


 それは盲点だった。確かにお前がいてくれれば安心して離れられる。


「あのさ、サナちゃんとかって、どうなの?」


 深雪が耳打ちしてきた。忘れてたけど、佐奈子か。あの子も超能力者だよな。だけど、佐奈子が来たいと言うかどうかは不透明だ。人数が多いに越したことは無いと思う。あとで個チャで訊いておこう。


「あ、あの。私がいたら足手まといですか」


 阿部が勢いよく挙手した。阿部も透明人間という超能力がある。何かに使えるか?


「ぜひお願いしたい。俺はタコちゃんがいてくれれば、何も間違えないし、迷わない気がする」


 意外にもノエルが即答した。阿部は笑顔の花を咲かせる。


「ありがとっ。私も美月先輩の役に立ちたい」


 帯同人数が増えるのは隊の動きを鈍くして厄介にもなるが、人手の多さが逆に勝機を担いでくる可能性もある。去年のユリとの戦闘では、阿部が透明に変身して美月を守ってくれた。阿部の存在は大事かもしれない。


「わかった。まとめると、俺――周太郎、深雪、ノエル、阿部は13日の午前10時に、俺の家の前に集合。深雪は俺の家を知っているだろ? ノエルも。ノエルは瞬間移動で阿部を同伴して来ること」


 石島はもう食べ終えたみたいですぐに口を挟む。


「服装は、持ち物は、お金は、おやつは?」


「真面目に話しているんだぞ」


「大事だよ。服装は動きやすい服がいいけど、逃げ回るならジャージのように裾が長いものは掴まれたり、破れると踏んだりする可能性があって危険だ。可能ならハーフパンツやスカートに履き替えられるようにしておく。無駄な装飾はしない。隠れやすくするため、黒系の服を選ぶ。でも真っ黒じゃ駄目だ。自然界ではむしろ目立つから、迷彩色的なものがいい」


 そ、そうだな。でも最悪、服なんかは伊部が支給してくれる。着慣れたものがあれば用意しておくに越したことは無い。


「持ち物は要らない。俺も、用意したものは伊部の所に事前に送っておく」


「集合したら時間を『戻る』のね? 最初に行くのは伊部くんのアジトか」


 そうだ。第十三コロニーの伊部のアジトに移動する。そこには、伊部の他にルリがいるはずだ。伊部はオペレーターのため、アジトで待機。ルリを連れて、第五コロニーへ移動。ヴィンセント市――美月たちがいるラボに行って、タイムマシン実験の本部へ移る。

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