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みらいひめ  作者: 日野
終章/帝篇
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三十二.仰せ言を背かば(9)

「その選定は、美月のお母様がしたことなのです。身体拡張の責任者として、その一人を選んで、それを補佐する超能力者の配置をしたのもお母様です。お母様はみよりんや、その周辺の人物を熱心に調べて人選したのです。書物を読むだけじゃなくて、実際に話すことでね」


 それで、俺も選ばれたのか。レコーダー役で。なんで俺だったんだろう。でも悪い気はしないな。ミヨの人生に役に立つ人物だったということだろう。


「超能力の付与は上手くいったのか?」


「まあな。だけど、それ自体はグレーだよ。同意なしでいきなり超能力を与えて、しかも子供の頃から能力を持っていたというニセの記憶を植え付けたんだから。充分に倫理規定に抵触している。本来は、ここらで撤退すべきだった」


 だけど、どうしてもタイムマシンを安定して運用させるには超能力が必要だったんだな。


「ああ、最小限の人数に超能力を付与し、超能力そのものは世界中には秘匿する。一部の人間だけの知識で、一部の人の特権ということにすればいいと、実験本部は考えた。俺もそうだ」


 伊部は真剣味を帯びた声で言う。だが、その一部に選ばれた人は望んでいないかもしれないんだよな。超能力を付与されることを。それって不平等だし、一部の人にかかる負担が大きすぎる。結局、倫理的にアウトか。


「でも滞りなく進んでいたよ。実験は上手くいくはずだった。だけど、」


「美月のお母さんが、アリスに消されたってことか?」


「そうだ。その事件があって、雲行きが怪しくなった」


 アリスが反発したのはなぜだ? 確か超能力を付与したせいで、人生がメチャクチャになったからと言っていたよな。普通の人生を捨てさせられたと。さっき俺が考えたのと同じ思考だったということか。


 ――そのとき、ユリ〈良心〉が真っ直ぐ手を挙げた。発言権を求めている。


「ユリも話したいことあるのか。俺も喋り疲れたし、譲るけど」伊部がユリの方を見る。


「わたしの話したいことは、まさにアリスさんのことと繋がるの。いいかしら?」


 ちょうど三人の話が上手く繋がったな。なんだろう、ユリ〈良心〉の話って。ユリが神妙な面持ちで話し出す。


「あの、今さらですごく言い出しにくいことなのだけど、聞いてもらえるかしら」


 トイレだったら行って来ていいぞ。


「そうじゃなくてね。騒ぎが大きくなる前に、わたしが言い出せば良かったなって」


 まあ、とりあえず言ってみろよ。何のことだかわからないから。伊部とルリも不可思議なユリの態度に首を傾げている。


「じゃあ、言うよ」


 いいけど。


「オーマイガーってなると思うよ」


 わかったから、早く言ってくれよ。焦らさないで。ユリはもじもじする。




「わたし、〈良心〉と名乗っていたのは、――実は、美月の母のクララです」



「……くらら?」


 聞き覚えがある。


「クララさんって、ほんとに美月の……」ルリが絶句する。

「お母さんだってのか?」伊部が大声でシャウト。


 ユリの別人格が、美月のお母さんだと? オウ、マイ、ゴッド! 意味がわかんねえ。そのとき部屋の電話が鳴った。とりあえず、時間30分延長で!


 美月のお母さんがクララさんという素敵な名前だということは知らなかった! そして生きていたのか。かなりの朗報だ。それに懸念事項が一つ解決してしまった。


 だがそれよりも前に、ユリの中身が美月のお母さんってどういうこと? 順を追って説明してくれないとわからないよな。――あれ、みんな?


 伊部はソファーにもたれかかって放心状態。ルリは顎が外れて、口をパクパクしている。


 灯台下暗しだったとは思うけど、まずは話を聞かないことにはな。ユリじゃなくて、クララさんでしたっけ?


「はい、わたしはルーニーの生みの親のクララです。ユリちゃんの〈良心〉というのは真っ赤な嘘です。ご、ごぺんなさい!」


 噛んだ。陽だまりのように優しくて、ちょっとドジで抜けている金髪の美人という噂は聞いています。どこから説明を求めようか。


「今の状態はどうなんですか? ユリと同一人物ではないんですよね?」


「ええ、ユリちゃんの体内コンピューターに、わたしの人格情報が間借りしている、って表現が正しいかしら。短い間なら本体を操れるから、こうして出て来ているのです」



 ユリに乗り移った経緯も聞きたいのだが、時系列順に話してもらう方がいいのかな。たぶんその話もするつもりだろう。今のところ、超能力を付与した六月まで話は聞いているから順を追って話を聞こうか。


「わたしが、アリスさんに消されたのは八月のこと。街中で遭遇したアリスさんによって、突然消されてしまった」


 アリスは美月の母に憎悪を抱いていたんだよな。超能力を付与したのが、美月の母だと気付いていたから。


「ええ、実は坂元さんや石島くんの超能力が、過剰気味で暴走してしまったことがあったのです。その際に、解決を依頼した中にアリスさんもいて、印象が良くなかったみたいで」


 お母さんは特に姿を隠していたわけでも無いらしい。もっともアリスは自分で体内コンピューターを手に入れたり、それで坂元の超能力をコピーしたり暗躍していたようだが。


「アリスは、ミヨが自分の死ぬ未来を視た。それは、あなたが超能力を与えて世界の秩序を乱したからだと主張していましたけど」


「実代さんの見た未来は、事実かもしれない。アリスさんの死は避けられないものだったのかも」

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