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みらいひめ  作者: 日野
終章/帝篇
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三十二.仰せ言を背かば(8)

「もったいぶらずに教えてくれ」


「――ミヨ・アララギ」


「――は?」



「みよりんだよ。お前の大好きなみよりん。本人も知らないけどな」



 うそ、だろ?



 世界の中心となっていたのが、ミヨ? あのアホガール? 待て待て。俺は今までミヨをさして重要な人物だとは考えていなかった。そう、俺はあいつに出逢ったとき――



 出逢い方として「激突」はベター過ぎて、俺はアララギがさして重要人物とは思わなかった。



 ――なんて思ってしまっていた。けれど違うんだ。


 実際はどうだ。ミヨは超能力者を集め、世界を守る俺たちの中でもリーダー的存在になっていた。それに超能力者の分布だ!


 名前を挙げればわかる。坂元、石島、佐奈子は、ミヨのクラスメイト。SF研つながりでノエル、阿部、アリス。そして俺だ。


 超能力者はミヨを中心に集まっていたんだ……。


「でもさ、ミヨは『未来予知』という超能力を持っているじゃないか」


「あれは、身体機能の拡張という意味では超能力だけど、普通の超能力とはワケが違うわ」


 ユリが落ち着いた声音で言った。美月が言っていたな。現状の科学技術では、未来予知は不可能だと。不可能な科学技術を、肉体に付与できるわけがない。


「じゃあ、何なんだ」


 ――ユリの答え。


「世界を崩壊させないための、シミュレーターが体に積まれている。実代さんの未来を保証するために、時間軸の〈主軸〉を作り出す機能よ。実代さんは20XX年まで自分が生き延びるためのシミュレーションをしている。20XX年は未来でしょ? だから便宜上〈未来予知〉と呼んでいるわけ」


 未来予知じゃなかったんだ……。世界が滅びない最善の出来事をミヨは視ていたんだ。その未来が起きれば、時間軸――世界の崩壊は避けられる。回避できない未来=〈主軸〉とは、ミヨが、――ひいては世界が滅びない未来だったんだ。


「わたしたちは、実代さんが視た未来の通りに、世界を改変すれば良かった。超能力を使って」


 じゃあ時間が「遡って」もミヨの記憶が影響を受けないのは、俺のように記憶力が良いからじゃない。ミヨだけ特権を持っていたからだ。


 「遡って」やり直したとき、自分の意図通りに世界を「改変」できるように。前回の記憶データを引き継いで対処できるように。


「そう言えばミヨは、自分の夫を知っていると言っていた。結婚式の未来が見えると」

「そうらしいわね」


 それが最終的な〈主軸〉か。でも、その先の未来は見えていないとも言っていた。もしかして、10年後だか15年だか知らんが、ミヨが結婚するまで世界は存在を保証されていて、その先は保証なし。そういうことなんだな。


「わたしも、実代さんの未来を直接見たわけじゃないから何とも言えない。けど、身体拡張の専門家として言えるのは、実代さんの超能力はシミュレーターが算出した必要な未来を見せるということ」


 そういうことだったのか。美月の言っていた矛盾も解決するんだな。


「技術的なことで言うとさ、みよりんは未来が視えなかったシチュエーションが無かったか?」伊部が言う。


 思い出してみる。ハッキリ本人が言ったのでいうと、二回あった。クリスマス事件で別空間に飛ばされたとき。あとは、未来に移動したとき。


「共通点は?」


 そう訊かれても。返答に困ってルリを見る。


 いつの間にかバニラソフトクリームを食べているルリはニコッとした。


「ハイ、自分の時間軸を離れたときですね? みよりんは自分の時間軸においてのみ、存在証明をするわけですから、別の時間軸に『戻った』ときは未来予知できない」


 できない、というかする必要が無いのか。他の時間軸における未来の自分の生存は、証明できない。最終的には脱出してしまうはずだから。


 ――「戻った」場合というと、第一回アリス事件でも、未来予知していたら避けられそうだった事件に巻き込まれていたし、あのときも未来予知はできていなかったのかもしれないな。


「何だか、スッキリするな。全ての辻褄が合っていく」


 疑問が吹き飛んでいく。ここ数週間のモヤモヤもどこへやらだ。


「だけど六月になって、ミヨが急に世界の中心に選ばれたのは、理由があるのか。それまで普通の人間だったんだろ?」


 なぜミヨでなければならないかは大きな問題だ。世界には七十億の人間がいる。


「決まってんだろ。みよりんが、おばあちゃんになるまで生き残ったというデータがあって――。まあ、あんまりシュータに未来を教えちゃいけないのか……?」


 おい、語尾を突然濁しやがって。現代人の俺に、未来のミヨのことは話せないのか。


「それで未来が変わったら、みよりんの未来も変わるかもしれんからな」

「でもま、いいんじゃないですか? 大まかな言い方なら」


 ルリが遮って、俺を振り向かせた。


「みよりんが生存することは、世界が存続することと大きく関わるのですよ。これ以上は言えません」


「ミヨは、有名人になるのか。将来」


「有名人、ですか? うーん、まあ、そこまでは言えませんね」


 別に驚かない。あいつは良い意味でも、悪い意味でも有名になりそうなポテンシャルは秘めていそうだ。ルリはニコニコした。

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