表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
みらいひめ  作者: 日野
終章/帝篇
663/738

三十二.仰せ言を背かば(3)

「まあまあ、女子の皆の気持ちもわかる。相田くんも悪いんだから素直になろうよ」


 元生徒会長の石島まで登場。何の劇をしているんだ? 石島は女子に理解のある調停役のモテ男子かな。


「よくわからんが、謝るから帰宅させてくれないか」俺はリュックを背負い直した。

 すると、坂元がけろっとした様子で立ち上がった。


「みよりんが元気ないのさ。そのことで、百パーセント相田氏が犯人だと思ってね。劇団・サカモトを呼んだのだよ。タコちゃんは、相変わらず完璧な久保〇リカボイスだったし、石島くんも夏油ボイスありがとう」


 暇人なんだな。あいにく俺は忙しいんだ。石島は腕を掴んで引き留める。


「実代さんに元気がないのは本当だよ。大人しいんだ」


 ミヨが大人しいだと⁉ 確かに由々しき事態だな。世界が崩壊する予兆なんじゃないか。よく地震の前には動物たちが避難するとか言うだろう。


「私は、師匠の問題なんだからあまり追及しなくても、と言ったんですけど」


 事情を知っている阿部が陰から口添えする。十中八九、美月がいなくなったことと、その後俺と喧嘩したことが原因だろう。


「あいつ、美月がいなくなって寂しいだけだろ。妹みたいに従えていたからな」


 美月に裏切られて傷心中の若草物語ということだ。坂元は目を細める。


「相田くんは本当に何も知らないんだね? 心配すらしないのは、事情を知っているからだと思ったけど」


 ミヨが元気ないのか……。やはり俺が後夜祭のときに何か言ったからだろうか。それとも、俺に避けられていると勘違いしているからなのか。ああ見えて、本当に心は乙女だから困るんだよな。


「俺は知らん。元気出せって伝えておいてくれ」

「みよりん、シュータくんの名前出したら涙目になってたよ?」


 ――は? あいつそんなに気にしてんの? 俺は三人に向かって言った。


「あとでミヨにメッセージ残しとくよ。それでいいだろ。美月のことで意見の相違があったんだよ」


 坂元は「ぜひそうしてあげてー」と言って、立ち去った。阿部は気まずそうに「センパイよろしくです」と言い残していった。部活に向かうらしい。


「美月さんがいなくなったこと。あれは想定されていたことなのかな」


 石島が腰に手を当てて訊いてきた。俺は「そんなわけあるかよ」と呟く。


「僕はよく知らないけど、美月さんは不本意に去ってしまったんだよな」


 まあ普通に考えればおかしな別れ方だ。そう勘繰られても仕方ない。俺は足元を見つめて答えた。


「……俺が何とかするから」

「じゃあ、任せようかな」


 そう言ってニヤニヤ笑う。俺は顔を挙げた。意外だな、お前は俺が美月と結ばれるのが嫌じゃないのか。


「まあ、悔しい気もするけど、二人はお似合いだからね。本人が幸せなら、OKです!」


 ウザ。ウザすぎて辛いわ。石島は笑い出した。何がしたいんだ、お前らはさ。


「坂元さんは、友達の実代さんが心配で、僕は友達の相田くんを心配しているのさ。誰だってお節介を焼きたくなるものだよ。友達のためなら」


 よく恥ずかしげもなく、往来でそんなこと言えるよな。


「大学行っても、たまには僕と遊んでくれよ」


 石島は寂しそうに言う。遊んでくれ? 俺は男と火遊びする趣味は無い。女子に言え。石島は手を振って廊下を歩き出した。


「僕と美月さんを会わせてくれって意味だよ。相田くんを介して――。じゃ期待するよ」


 あいつは後できっちり〆てやらねえといけないらしいな。身の程を弁えてもらわないと。俺はいつの間にか微笑している自分に気付いて恥ずかしくなった。


 まだ残暑という蒸した気候。それでも日暮れになると少しだけひんやりする風が吹く。天気も悪くて余計肌寒い。靴を履き替えて、校門を出るまでにミヨにメッセージを送る。『元気か?』とだけ送っておいた。


 これくらいでいいのだ。話したければ、たくさん返信が来るだろうし、そうじゃなければシカトされるだろう。実際、ノエルとは最近ほとんど連絡取ってないし。こうやって人とは別れていくものなのかもしれないと思う。


 すると、ルリからメッセージが来ていることに気が付いた。体内コンピューターに送ったものをスマホに反映できるように設定してもらったのだ。


>お姉ちゃんの〈良心〉が下りてこないので、少し時間を潰してから帰ってきてください

>ゴムも一箱買って来てね♡ 薄いやつ

>〈谷間の画像〉


 ブロックするかー。さて、時間を潰せってのが一番困るんだよな。深雪の誘いも断ってしまったし金も無い。歩いて本屋にでも行くか。元気ならバッセンにでも行くんだが。


 今日もあいにくの曇り空で気分が上がらない。あまり遠くに行きすぎても帰れなくなるといけないし、俺は駅前の複合デパートに向かうことにした。一人で学校から駅まで緩慢に歩き、建物に入るとエスカレーターで四階まで上がる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ