三.白山にあへば光の失する(19) らいと
一週間後、俺は教室のいつもの席に座していた。石島のことだけど、元気に登校していて俺に挨拶をしてきた。俺としては、美月に甘い言葉を吐くアイツはライバルも同然だから、元気だと困るのだが……。片鼻がずっと詰まるみたいな病気にできないかな、伊部さん。
「アイ、俺は真理を発見してしまった!」
冨田が俺の席に来る。生憎、お前の真理とかいうバカ話に付き合えるほど暇じゃない。
「あんた、暇じゃない」と暇そうな片瀬に言われた。
「うるせえ。冨田も片瀬か福岡に聞かせろ。俺は聞きたくない」
俺がしっしっと手で合図すると「つれないなー」と言って福岡と片瀬に向けてしょうもない話を始めようとした。二人からも「ウザい」と言われている。
「おはようございます、シュータさん」
いつの間にか美月が来ている。俺の席の前に立った。今日も可愛い美月さんだ。
「おはよ、美月。ミヨは教室か」
ミヨがいつも付いて来るんだがな。静かな朝で良かった。
「ええ。みよりんさんは坂元さんと一緒に教室に行きました。作戦会議だそうです」
またミヨと坂元は良からぬことを企んでいるのだろうか。お泊り会と称して美月にイジワルするのはやめて欲しいな(お泊り会の日は時間が頻繁に「遡る」のだ)。
「おい、アイ! 竹本ちゃんを占有するなぞ言語道断。即刻離れたまえ」
おっと、冨田がまた何か言ってますね。ははは。
「あ、相田くん聞いてないから。ほら、邪魔しないの!」
福岡は俺に気遣いを見せる。冨田は不服そうだった。美月は楽しそうだ。
「今日はシュータさんに大事な話があるので、チャラ田さんは黙っていてくださいね。私の想いをお伝えしなくては」
『…………』
誰の点々かと言うと、皆の点々である。美月は真剣そのもの。片瀬や福岡は顔を赤くし、冨田は灰になった。俺は顎が外れた。
「ふふっ」
やがて美月が相好を崩す。そりゃそうだよな。
「冗談ですよ? みよりんさんがやれと言うので。皆さん、どうされたのですか?」
溜息だ。誰の溜息かと言えば、皆の溜息。慣れない冗談はやめてくれよ。最近になって真面目ちゃんの美月が、それを逆手に取ったジョークを時折かますので、俺たちはヒヤヒヤさせられる。
でも、クラスメイト相手に自由に発言できるようになったのは喜ばしいことだ。
「美月、学校には慣れたか?」
「ええ。毎日楽しいです。友達に囲まれて」
そう言って屈託なく笑う。この一カ月半は濃かったな。もちろん美月のおかげでさ。
「本当に楽しいんです。みんなに出逢えて嬉しい。中でもシュータさんが、私の一番の友達です」
次は、第2章「庫持篇」に続きます。次話が正式版の第1章になっています。
2章ではSF研とミヨの過去が明らかになります。さらに敵キャラも登場してより賑やかになりますが、一方でそれぞれが決断を下すのです。シュータと美月は未来に何を求めるか、1章が「起」なら2章は「承」。物語の方向性を決める回になっています。




